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#case002

今回も事例の一つから、採用すべき人物像(ペルソナ)を考えた人をご紹介します。case002で登場するのは、ある地方都市からさらに離れた場所で事業を営んでいる方です。それではどうぞ!

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日本には56カ所の半島があるらしい。ここはその中の一つにある小さな町だ。半島の中には活気のあるところもあるらしいけど、ここにはあまり人がいない。澄み切った大きな空と海だけがここの自慢だ。


僕はこの町で整備士兼専務取締役を担当しているD介と申します。うちの会社はとても小さな自動車販売店&自動車工場です。お客さんもみんな地元の顔なじみばかりで、「新しいお客さんが来たな」と思ったら常連さんのお孫さんだったり。そんなのどかな町の雰囲気に恵まれた我が家、いや当社にも人材難の波が押し寄せてきました。自動車整備士が辞めてしまうのです。

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といっても、定年を迎えるからというとても円満退職で、うちの会社に居づらくなったから、とか、この待遇に耐えられない、とかではないんです。むしろ、うちの工場長を務めてくださった人ですから、引退してほしくないくらいです。

もちろん再雇用の意思はお伝えしてあるんですが、「いやー 孫に小遣いやれるくらい働ければいいよ~」とのこと。彼は、そこそこ働いてあとはゆっくりと遊ぶ悠々自適な暮らしを楽しむようです。そこで、ここ十年以上やったことのない、中途採用というものに挑戦することにしました。

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うちの会社は、数年前に兄貴が社長を引き継いだタイミングで僕も役員になるという、よくある同族企業です。兄貴はどちらかというと慎重派で、弟の僕はなんでも挑戦して失敗してを繰り返すタイプ。

まあ、本業が整備士ということもあるんでしょうか。成功するかどうかはやってみないとわからない現場も多く、経営のことを考える時もそういう自分のタイプを信じています。



兄貴は当然ハローワーク一本で考えていました。僕は、別の業界で会社をやっている友だちがいたので、彼に相談しました。そしたら、「今時、ハロワで待っていても時間がかかるよ。整備すべきクルマは待ってくれないだろう」とアドバイスを受けました。そこで、同じことを兄貴に伝えて、業者さんの話を聞いてみることにしたのです。


やっぱりそうか、と思うところあり

来てくれた業者さんの名前は、E倉さんとしておきましょう。彼に当社の現状をお話しすると、整備士は圧倒的に人が少ないことを教えてくれました。これはなんとなくですが、そんな気がしたので、話を聞いてみて「やっぱりそうですか」と同意しました。


そもそも、整備士学校に入学する人は非常に少なく、定員の7割にも満たないらしい(自動車整備白書~2019年度版より)です。最近のニュースでは外国人留学生の入学によってこの数を盛り返してきているようですが、彼らが卒業するまで待つわけにはいきません。留学生は、もしかしたら母国に帰っちゃうかもしれないですしね。そこで、有料の広告を使って募集することを検討し始めました。

大金を投資するので、失敗を恐れない僕もまずは「当社が欲しい人はどんな人か」と「どんな人までが許容できるか」を整理しました。
おっとその前に、当社を取り巻く業界の状況などの整理が最初です。


<当社(地方の小さな自動車工場と自動車販売店)を取り巻く状況について>


★わずか2万人強の町だが、近隣周辺から来てくれる馴染みのお客さんも多くいる
★世の中、省エネ、二酸化炭素削減、電気自動車化と騒がれているが、ガソリン車はすぐにはなくならない
★平均年齢は40~50代あたり! 若返り待ったなし!
★とはいえ、ガソリン車は淘汰される時代がやってくる
★エンジンを分解する技術を育てながら、電気自動車い必要な知識(電気工事士のような知識)も同時に勉強しなければならない

こんな感じで、状況を冷静に棚卸ししました。ガソリン車がすぐにピシャリとなくなることは想像できませんが、電気自動車というビッグウェーブが来ていることから目を背けてもいけないと考えています。

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じゃあ、これからうちに来てもらう人はベテランではないな…。即戦力となるベテランに来てもらえればどんなに助かることかと思うけど、長年エンジンと向き合ってきた人が、「じゃあ同時に電気も勉強しよっか」となるだろうか?


翌日、僕が考えたことを兄貴に言いました。そのうえで、「今はきついかもしれないけど、まったくの未経験者をゼロからうちで育てていくくらい気合を入れて、若い人を採用しよう」という結論に至ったのです。

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本当に若い人を採用できるかどうかはわかりませんが、当社にとっての最善のゴールを設定しました。
★10代後半から20代後半までの年代であること
★男性女性ともにウエルカムであること
★学歴は不問、もちろん自動車学校の経験も不問であること
★なんでも素直に吸収できるパーソナリティーであること
★この業界にも荒波が来るので、それに対抗する意欲(別のサービスを作ろう!など)を持っていること


多くは求めませんが、後半の項目は面接で見極めたいところです。最初のうちは技術を身に着けることで精いっぱいでも、慣れてきたら積極的にアイデアを出してもらって、トライアンドエラーで新しいサービスを作っていってもらいたい。ここまで、理想とする人物像を考えました。続いて、福利厚生制度の見直しです。

★整備士試験に関する費用は会社が持つこと
★合格したら資格手当を支給することはもちろん、仕事の面で何かできることが増えたら評価の対象にすること(今まで考えたこともなかった!)
★今までもチームワークは良かったが、新しい人を迎えてもなお、あたたかなチームワークが続くような仕掛けを経営者が考えること


さて、ここまで固まったので、ここから先はどうすればいいのかをE倉さんに聞いてみよう。


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採用が難しい職種の代表格として挙げられるのが、今回の自動車整備士です。文中にも出てきましたが、自動車学校に入学する人の割合は前年比で少し持ち直したようです。でも、彼らが活躍するのはまだ先のことですし、今回ご紹介したような会社さんは日本全国にたくさんあると思っています。
もし同じような悩みをお持ちでしたら、まずはD介さんのような考え方を参考にしてみてください。

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