【書評】【心理的安全性のつくりかた】+α

今回は心理的安全性に関する書籍の紹介にあたって、まず先に定義や背景、よくある誤解についての説明をしたいと思います。
どうも心理的安全性についての誤解が一部で広まっているようなので。


○心理的安全性とその背景

まず心理的安全性が近年注目された背景です。

これはGoogleの研究プロジェクト「Project Aristotle」の中で、パフォーマンスの高いチームに共通する「最も影響の大きな要因」として挙げられた事に端を発しています。
※Googleの分析では心理的安全性の他に相互信頼性等も挙げています。興味のある方はこちらのGoogleの記事もどうぞ。

そして心理的安全性とは何なのかというと
Googleのレポートでは「対人関係においてリスクある行動を取った時の結果に対する個人の認知の仕方」と定義されています。

かみ砕いて言うなら「リスクのある言動をしても、『このチームなら大丈夫だと信じられる』度合い」ですかね。

「心理的安全性が高い=このチームなら大丈夫であると信じられる」という事が、チームメンバーが「チームの成果のためや、チームへの貢献を意図して行動をしても罰されないと信じて行動する」事に繋がるというわけです。

もう少し具体的に心理的安全性の高低がチームの行動にどう影響するかと言いますと

「心理的安全性が高い=このチームなら大丈夫であると信じられる」なら、余計な気を使わずにコミュニケーションや試行錯誤が出来る事になります。

「心理的安全性が低い=このチームなら大丈夫であると信じられない」なら、あれこれ気を使ったり調整をする必要がありますし、何なら最初から何もしない(リスクを取らない)可能性も高くなります。

こうして具体的に比べて見ると「パフォーマンス」とか「生産性」とか意識高そうな言葉を使わなくても、どっちがより結果を出しやすいチームになるかは一目瞭然でしょう。

また、補足として心理的安全性で前提となる「チーム」が何かというのも地味に重要です。
ここで言う「チーム」とは、簡単に言えば「共通の目標に向かって対話・協働する集団」です。
目標がバラバラでは意味が無いし、対話・協働の必要が無い相手であればわざわざリスクを取ってコミュニケーションする必要も無いですからね。

当然の事ですが「チーム」は全員が当事者であってお客様ではありません。
誰かに全て用意し整えてもらうのではありません。あなた自身が主体性を持って参画・遂行するものです。

○心理的安全性についてよくある誤解

まず最初に言っておくと、心理的安全性が高いチームというのは、厳しい事(耳が痛くなるような事)を言われない「ヌルい」チームではありません
また、外交的であるとか、アットホームとか、結束が固いチームとかでもありません。

心理的安全性が高いチームと言うのは
自分が知らない事をメンバーに質問したりミスをしても、チームから外されるとか後で不利な扱いを受ける事が無く
厳しい事を言ったり否定的な意見を述べる事で後から邪魔者扱いされたり罰を受けるような事も無いチーム
です。

昨今吹き荒れるキャンセルカルチャーのように他罰・他責を求めるものとは真逆の考え方です。

そりゃあチームメンバー間で基本的な認識のズレがあるなら恐れずに解消できる状態にした方が良いのは勿論ですし
重要な意思決定の局面であれば雰囲気に流されずに手厳しい意見も聞いておく必要があるのは当然ですよね。

このように書くと一見当たり前のように感じる方もいるかもしれません。
しかしこれらの行動はいずれも対人関係においてリスク(無能扱いや邪魔者扱いを招く可能性)のある行動になります。

だからこそ、そのようなリスクを安心して取れる体制を作り信頼関係を構築する事が重要となるわけです。

「チームメンバーの大勢の意見と異なる事を言っても罰されない」と信じる事が出来なければ、耳の痛い進言するのは相当な覚悟が必要になりますよね。

○書籍の紹介

と、ここまで前置きが長くなってしまいました。
今回の心理的安全性に関する書籍として本書を選んだ理由は、心理的安全性の単純な説明に留まらず、それを導入するにあたっての知見や関連情報が幅広く書かれているからです。

全5章の内、心理的安全性の説明自体は最初の1章で済ませてしまって、第2章以降ではリーダーシップ(ポジションではなく他者への影響の与え方)を使い分ける事と絡めた実践的な話や、心理的安全性を高めるための導入アイディア集等に割かれています。

個人的に好きなのは5章の「感謝」をやりやすくするための方法論ですね。

これはいわゆる精神論的に「皆に感謝をしましょう」と呼び掛ける話ではありません。
「理由を付けて感謝をする」という形で行為に対する理由付けをスムーズにする事で、「感謝する」という行為の実行ハードルを下げる話なんです。
精神論以外で「感謝」という話を見る機会は中々無いので、読んでおいて損はないかと思います。

後はメンバーの立場から、上司に心理的安全性を高めるように誘導するための例ですかね。
どのような形で声をかけると望ましい行動を引き出すことができるのかという話は、これも頭を悩ませる人が多いトピックでしょう。

「心理的安全性が高い方が良いっていうのは分かったけど、具体的にどうしたらええのん?」という方は、是非一度読んでみて頂ければと思います。


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