人とブランドを想う ロゴデザイナー・関沙也香のデザインアイテム
ロゴデザイナーは、センスが物をいう職業だと考える人も多いのではないでしょうか。
今回紹介するロゴデザイナーの関沙也香さんは、未経験でロゴ制作を始めて3年。今では「関さんだからお願いしたい」と、お客様から選ばれるロゴデザイナーとして活躍しています。
関さんにとってロゴデザインの楽しさは何なのか。愛用品とともにお話を伺いました。そこには、関さんのこれまでの人生と価値観、ロゴ制作がライフワークになっている喜びが表れていました。
お客様の喜ぶ姿を見ることがやりがいだと気づいた
ーーロゴデザイナーの前は、どんな仕事をしていたんですか?
キッチンメーカーの商品開発の仕事をしていました。具体的には、キッチン設備のデザインや、シンクの水切りカゴのようなオプション品の設計などを担当していました。商品を設計していく仕事は楽しかったです。
でも、一切お客様の顔が見えない状態で開発しなくてはいけない環境で……。実際お客様がどんな風に使ってくださってるのか、喜んでくださってるのか、聞くことができませんでした。そこが私にとっては辛かったです。やりがいを感じにくい状態でした。
ーーそもそもデザインを学ばれたきっかけはなんですか?
家庭と仕事を両立するために在宅で仕事がしたいと思ったのがきっかけです。在宅でやるなら、Web関係かなと。もともと物作りが大好きで。大学生のころは建築を勉強して、デザインに興味があったのでやってみたいなという気持ちで始めました。
Webデザインでフリーランスだったら、前職で叶えられなかったお客様の喜ぶ姿を見ることができるかなと漠然と思っていたところもあります。はじめはWebサイトの制作も行う予定でしたが、産後で作業時間をとるのが難しく……。育児をしながらも、コンセプトやデザインを考えることができるロゴ制作をメインで行うことになりました。デザインスクールで先生に褒められたこともあって、少し自信もあったんです。
ーーたしかに先生に褒められるのは、自信につながりますね。
デザインスクールの卒業制作でWebサイトを制作したのですが、一緒にロゴも作成したんです。見てくださった先生が「ロゴも作ったんですか?かわいいですね!」と褒めてくださいました。
趣味の建築と華道が生んだ感覚
ーーコンセプトを立てることが得意な理由は何かありますか?
建築と華道の経験が大きいかなと思います。建築ってポエムみたいなんです。窓やガラスのような建築物の要素に、設計者ならではの想いと意味がこめられています。
例えば、窓には建築の透明性がある、その透明性が社会と繋がることを表すーー。建築物の要素に設計者の価値観や、社会に対する見方が込められています。設計者の価値観と解釈が表現されていて、それぞれの建物から設計者の哲学を感じることがすごくおもしろいです。
ーー華道はどういった楽しみ方をされているんですか?
華道のほうが少し芸術よりなんですが、建築と似ていると思います。色彩や花の形に意味を持たせていくような形です。黄色の花で瑞々しさを表現したり、つぼみに可能性を表現したり。
ただの黄色い花、ただのつぼみではなくて、そこに作者ならではの意図があるのがおもしろいです。建築も華道も、ロゴのコンセプト立てや造形をつくっていく考え方と似ていると感じます。
ーー建築も華道も、そこに訪れたり、花を見たりする「人」のために制作するという部分があるのではないかと思います。そういった経験で生まれた関さんならではの価値観は何だと思いますか?
大学で卒業制作をしているときに「たくさんの人の幸せよりも、目の前の1人を幸せにしたい」という価値観が芽生え始めたのかなと思います。卒業生制作では、街の小さな区画に対してどのような更新計画をたてるかということを題材にしました。区画の更新計画を考える時、大きな商業施設を作るなど経済的な側面が優先されることが多いのですが、昔からその場所に住んできた人たちのために、その土地らしさと経済を両立した区画更新計画を考えたんです。
大勢の得を生むよりも、その土地に住む人と向き合ってどんな提案ができるのかを考えたい。目の前の誰かのために物作りがしたいという想いが、大学生の頃からずっと心の中にあったように思います。
お客様のブランドを想い、一緒に作り上げる
ーーこれまでのお話しをきいていると、ロゴ制作は関さんの価値観にとても合うお仕事のように感じます。
そうですね。ロゴ制作でやりがいを感じるきっかけになったお客様がいたんです。その方は夢があって叶えたいけど、くじけそうになってしまうとおっしゃっていて。とりあえずロゴを作ったら、頑張ろうと思えるんじゃないかと依頼してくださいました。
ロゴを納品したらとても感動してくださって、「くじけそうになったとき、関さんのロゴを見て自分を奮い立たせます」とおっしゃってくださったんです。目の前の人のために制作ができて、わたしが作ったロゴのおかげで喜んでもらえたんだと実感できました。
ーーなにかロゴ制作を行うときに意識されていることはありますか?
ロゴは私が作るのですが、感覚的にはお客様と一緒に作っています。私1人で作ると私の感覚だけで出来上がったロゴになってしまいます。私とお客様が呼応して、お互いが存在するからこそ作成できるロゴを作ることを意識しています。そうすることで、私だけでは辿り着けなかったロゴが出来上がると思っています。
ーー制作フローのなかで、特に工夫されている部分はありますか?
やはりヒアリングを大切にしています。お客様が目指す本当の価値はどこなのかを常に意識して、ヒアリングを行うようにしています。お客様が自分のクライアントにどうなってほしいのか、自分のサービスを使ってどんな状態になったらうれしいのか。その部分にお客様の志があると思っています。「やったー!」と喜んでほしいのか、希望や嬉しさに満ち溢れるように喜んでほしいのか。そういうちょっとしたニュアンスも含めてヒアリングするようにしています。
そう思ったきっかけは、自分のサービスをブランディングしたときに、サポートいただいたブランドストラテジストの方からのアドバイスでした。「サービスを通じてお客様のクライアントがどのように変化するのか、そこに提供価値がある。その価値を提供したいという想いが志になる」とアドバイスいただいて。その志をコンセプトにロゴを制作することで、ロゴにお客様らしさが宿ると考えるようになりました。
ーーお客様に言われて印象的だったご感想はありますか?
「一緒に作り上げる過程が楽しかった。関さんの考え方に共感を持ちました」という言葉が嬉しかったです。一緒に作り上げることを大切にしたい、楽しんでほしいという想いがあるので、想いが伝わっていると感じられて嬉しかったです。
ーーお客様とサービスを想ってロゴ制作をしていることがとても伝わりました。
お客様が素敵だから、素敵なロゴが生まれると考えています。これからもたくさんの素敵なお客様に出会い、お客様のブランドやサービスに想いを馳せて、ロゴ制作をしていきたいです。
ロゴデザイナー・関沙也香のロゴデザイン愛用品
logicool ワイヤレス キーボード KX800M MX KEYS for Mac US配列
私は、とにかく真っ黒が好きです。黒が一番シルエットを感じることができて、その物質の形として浮かび上がってくる感覚を感じられます。形の良さを大事にしたいので、ロゴも必ず白黒で検証しています。
機能的な部分でいうと、ワンタッチでデバイスを切り替えられますし、タイピング時のタッチ感や押し心地も好きです。あとは、US配列を選んでいることもこだわりの一つですね。
ーーUS配列を選んでいる理由は?
JIS配列だと、あいうえおが書いてあると思うんですけど、あいうえおって使わないんですよね。使わないのにあるのが、デザイン的に許せなくて......。
ステッドラー シャープペン 0.5mm 製図用シャープペン オールブラック 925 35-05B
ロゴのラフを描くときのシャーペン。建築で使う製図シャーペンを使用しています。本体はもちろん黒ですが、印字まで黒になっているものを選んでいます。あとは素材が樹脂製ではなく、金属製なのもお気に入りポイントです。
ーーあえて金属製を選んでいる理由はありますか?
金属製だと高級感が出るのが、好きですね。会社員時代は商品の素材選定もしていたので、素材も気にしてしまいます。金属のなかでも、鉄なのか、アルミなのかとかも気になるポイントです。
ANTOU ボールペンC
台湾の金属メーカーが作っているボールペンです。替え芯を自由に入れ替えることができたり、スリットからインク残量が見えたり、機能性とデザイン性が高い。形態も美しく、金属製で高級感があってめちゃくちゃかっこいいんです。とてもお気に入りのボールペンです。
ーーラフはシャーペンとボールペンで両方で描かれるんですか?
細かく描きたいときはシャーペン、ざっくり描くときはボールペンのことが多いです。太すぎても、細すぎても描きにくいので、ボールペンは0.5mmのものを使っています。
logicool MX ANYWHERE 3S
マウスも黒です。手のサイズに合わせて小さめのマウスを使っています。横スクロールもできて、真ん中と横に2つの計3つのボタンがついています。ロゴ制作で使用するデザインソフトのショートカットを設定して使っています。押し心地も好きです。
ーー使用感や押し心地もやはり気になりますか?
そうですね。キーボードもマウスも元々はMac純正のものを使っていましたが、押し心地が弱くて買い替えました。打鍵感やクリック感は気になるポイントです。
珪化木プレート
植物の化石のプレートを、コースターとして使用しています。重厚感があり、自然だから出来上がった計算されていない造形が綺麗で面白いです。
ーー華道につながりそうな要素ですね。今までご紹介いただいたものが、形態や機能面にこだわりがあるものばかりだったので、最後に自然のものがでてくるのが面白いです。
人間が造形面に介在すると、どうしても機能面の追求になると思いますが、機能の追求だけではない面白さもあると思っています。お花もそうですけど、そのものの姿が美しいものって自然界にはあるので。そういう発想を感じられるものとして、ロゴ制作時に目に入ると、一つの癒しになります。植物なのに石みたいに重みがあって、経年劣化にロマンを感じます。
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