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性格も身体もすべて、相性が良過ぎてしまった。本当は違う人に惹かれていたのに

以前から話していた、18歳年上の彼。

先日、例の3回目のデートに行ってきた。最近二人の間で話題に上がっていた「ちょっと遠出したいね」をその日実行することになり、車で2時間ほどドライブした場所にある繁華街に出向いた。

いつも通り、彼が私のマンションの近くの待ち合わせ場所まで迎えにきてくれて、目的地へ向かった。

いつも通り、最近あったことや世間話、車でかかっている音楽の話などをした。

いつも通り、食い倒れのように色々な食べ物を堪能して、買い物をして、帰路についた。

好きなものや趣味が似ている私たちには共通の話題が多く、会話が途切れることがない。普段から口数が多い方ではない私にとってはめずらしく、彼となら長い時間を共にしても全く疲れない。いい意味で一緒にいて楽で、居心地が良い。

内心では、「今日は会うのが3回目。もしかしたら何かあるかも」という期待と不安が入り混じった感情でその日を過ごしていた。期待って、なんだ。私には他に本命として考えていた人がいるのに。

本命の人とのLINEは彼と会う前、朝に1通返しただけで、それ以降未読スルーで放置していた。今日は彼との時間を楽しむ日と無意識に思っていたのか、返す気にならなかった。

その日の帰り道、もうすぐ送り届けてもらうマンションの近くというところで、私が飼っているペットの話になった。彼は、「見てみたいな」と口にした。

あ、と思った。私の態度を伺って、二人の距離を縮めようとしているのがわかった。と同時に、そうすることで私から拒絶されてもう会えなくなってしまうのを恐れていることも、何となく感じ取れた。

夜ご飯を一緒に食べている時も、今度は〇〇に連れて行きたいな、と言ってくれていたし、彼はきっとこれから先も会いたいと思ってくれている。

一方、私も、相変わらず本命は別にいるという心構えで会ってはいるものの、彼の人の良さに惹かれていたし、二人で過ごす時間の充実感は他の人とでは中々得られない気がして、彼を失いたくないと思い始めていた。

「じゃあ、ちょっと寄っていく?」

どうなるか分からないけど、咄嗟に私はこう答えていた。言ったそばから、これは寄っていく感じではなくてきっと泊まっていくことになるだろうな、そう思った。彼はバツイチで子供もいて歳もかけ離れている、そんな付加情報はもうどうでもよかった。ただ単に、彼自身がどういう人なのか、もう少し踏み込んで知りたかった。

「いいの?じゃあそうしようかな」

彼がうちに来て、私の部屋の椅子に座って雑誌を読んでいる。どうして自らこの展開に持ち込ませてしまったんだろう。そんなことを思いながらも、今日は楽しかったね、そんな会話をしつつ、過ぎてゆく時間が重かった。時計の針はもう22時を回っていた。

彼の家は、私の住んでいる街からさらに1時間弱ほど離れた街にある。外はもう真っ暗で、気温も低い。すでに長時間運転させていたし、街灯もあまりない帰り道を行かせるのは、それはそれで私も心配だった。

「これから帰るのダルいな」

「そうだね。」私がそう返すと、「…泊まっていってもいい?」とうとう彼が言った。「いいよ」そう返して、やっぱりそうなるよなと思いながら、何てことない顔で「じゃあそろそろ寝る準備しようか、シャワーは先入る?」と続けた。

シャワーを浴びて、ドライヤーをかけた。もうやることのなくなってしまった私たちは、二人でひとつのシングルベッドに横になった。これからどうなるんだろうと考えようとしている頭とは裏腹に、心臓の鼓動は早く、ドクドクと脈打っているのがわかった。

何も言わずに、彼が手を回してきて腕枕される体勢になった。昼間はあんなに会話が弾んでいたのに、今はお互い何も言葉を発さない。

私は仰向けになったまま彼が回してきたその腕をぎゅっと握りしめて、今後の展開を思った。そして、彼に横からハグされる形で、ぎゅっと抱きしめられた。こういうときのフィット感って、大事だ。たまにこの時点で「ああ、合わないかも」と感じてしまう人がいる。ところが、彼からのハグはとても心地よくて、温かかった。言い過ぎかもしれないけど、ずっと埋まっていなかったピースがやっと埋まりそうな、そんな感覚がした。

私も彼の方に向き直り腕を伸ばして、お互いに抱き合った。彼の顔を見上げると、そっとキスをされた。もう、私は彼を好きになっていたのかもしれない。拒む理由が、全く思いつかなかった。それどころか、彼が、私が失恋してからずっと求めていた”その人”であるという可能性を信じたいという気持ちでいっぱいだった。

心だけでなく身体も、彼に惹かれていた。「相性が良い」と絶対的に断言できる人はこれまでにいなかった。けれど、付き合っていく中で相性が良くなっていく人はいた。彼とは、最初から相性が良いとわかった。これまでの人との行為と違い、彼とのそれは、お互いの気持ちを感じとれ、さらに行為そのものを補完し合って高めていけるようなものだった。

「キスだけで相性がわかるって言うよね」

彼がそう言った。そうだね、と返して、彼は私とのキスをどう感じているんだろうと思った。今まで彼に気に入られるために発言したり行動したりすることはなかったのに、そのときはもう、どうしたらもっと好きになってもらえるだろう?と考えてしまっている自分がいた。

知らぬ間に寝ていて、朝方、すっと目が覚めた。後ろから彼にハグされる体勢のまま、眠っていたようだった。寝返りを打った際に彼がすり寄ってきたのは覚えている。私が起きると彼も目が覚めていたようで、彼の方を向き返り、またキスをした。「朝からするっていいね」彼が言った。

その日は彼が用事があるというので早めにアラームをかけて起きようとしていたのに、何度もスヌーズにして体を重ねた。彼が帰るのが名残惜しかった。同時に、本命のあの人との年末に会う予定を思って、複雑な心境になった。

今このときだけは、彼の温もりの中で安心感に包まれたい。そう思う私は、やっぱり中途半端な人間なのでしょうか。

▼彼のことを綴った前回のnoteはこちら


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