分けてやろうと思った

家の網戸を見る。てっぺんの所に黒いガムテープが貼られていて、穴の空いた網を留めている。こんなもの変えればいいのに、と言うと、懐かしいから残してる、と言う。
蚊がやってくる季節になりました。寝床について、久しぶりに眠れると思うと、羽音を立てて、耳を逆撫でされます。

親や兄弟は蚊を見つけると、殺せ!と言う。

手を思いっきり叩いて、手のひらで潰れた蚊を見せると、よくやった!と言う。

僕は刺されても良いと。そう思うようになった。刺されたところで、キンカンを塗れば済む話。血の一滴くらい、
蚊の一族に分けてやってもいいと思っている。

その血で、どうか冬を越して欲しい。

自分の持っているものが、なにかの為になる。今はそれを欲している。

見返りを求めない、生の在り方を欲している。

だから分けてやろうと思った。
どうか、彼らに見つからないでくれ。
彼らの手のひらを、僕の血と貴方の血で濡らさないで欲しい。


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