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【音楽編Vol.1】 “Liquid Tension Experiments” について

Liquid Tension Experiments(以下LTE)というユニットは、自分が感じる音楽の不思議・奥深さを体現するバンドである。なので、noteに音楽の話を書く時はまず最初に語ろうとずっと思っていた。

前置き

このユニットとの出会いは、音楽編Vol.0で語った通り投稿動画がキッカケだった。
LTEを語る上では、メンバー4人のうち3人も共通しているDream Theater(以下DT)についての言及は避けられない。ある意味DTの裏バンドのようなものだから。LTEを聴き始めた当初、既にDTは知ってたし、一般的に1番の名作とされていたImage and wordsも時折聴いていた。良い聞き物だなとは思っていたが、それ以上深掘りする気にはならなかった。色々要素はあるが、プログレとしては余りにも綺麗に出来過ぎている事や、ジョン・ペトルーシのギターにほぼ魅力を感じていなかったというのが一番大きな部分だった。

正直に言えば、今でもジョン・ペトルーシ、ジョーダン・ルーデスに対して、プレイヤーとしての魅力をあまり感じていない。いわば、好きじゃ無いミュージシャンである。
そんなミュージシャンがメンバーの半分を占めるこのユニットに、出会ってからこのかた魅力を見出し続けている。音楽の不思議というか奇跡というか、そういうものを常々感じるし、考えさせてくれるユニットなのである。
以下、そう思う理由を大きく2つに分けて話そうと思う。

魅力① 作曲・演奏の“粗”と“芯”

自分が(広義の)プログレに属する音楽の魅力は、違和感の中に魅力や狂気を感じる事だと思っている。必然性の無い曲展開が、その曲で本当に語るべき部分を時にはぼかし、時には際立たせる。そういうからくり的な要素を求めて聴く音楽だと思っている。

これは勝手な考察だが、DTというユニットはボーカリストが居るバンドとしての最適解を出し続けていると思う。それ故に必然性の無い展開が極めて少なく、「かくあるべきで作られた長くて複雑な曲」に感じる。この辺がDTが素晴らしいユニットとされている所以だと思うし、自分が退屈に感じる部分でもあった。
ところがLTEにはDTのような「かくあるべき」が無い。DTと違い、ボーカルというある種作曲上の凄まじい制約が消えているし、セールス込みでの傑作を作ろうという色気も消えている。ただただ集まった4人のミュージシャンが、持ち合わせの作曲スキルと演奏スキルを用いてやりたい事をやっている。そういった構図だからこそ生まれるフレーズや展開の粗・乱暴さがたまらなくスリリングなのである。
しかしそれでいて曲の頭から尻まで何処か1本芯が通った感じは崩れない・・・。そのバランス感覚は曲作りの面だけではなく、演奏にも現れている。ソロやユニゾンは曲の為によくデザインされている反面、DTで見せるそれよりは遥かにラフである。勿論良い意味で。曲も演奏も見事にツボを押さえている。
こうなると、やれこのプレイヤーの演奏が好きじゃないとかいうのは瑣末な問題である。寧ろ、色気のあるプレイヤーが全ての世界観を持って行くような事が無い。この4人でないとこうはならないという見事な例だと思う。

そんな感じで、自分がこの手の音楽に感じている魅力を極めて的確に表現しているバンドであるというのが、まず1つLTEの素晴らしさだと思っている。

魅力② トニー・レヴィン

先に断っておくと、正直な所、自分はトニー・レヴィンというベーシストをあまり知らない。自分がほぼ認知していない時期のクリムゾンでベースを弾き、一方でジャズやフォーク界隈でも手広く活動している、という、調べれば出てくる経歴ぐらいしか知らない。だが、このユニットは間違いなくトニー・レヴィンというベーシストで成立している。そう思わせるだけの音を出している。
トニー・レヴィンの凄さは、ベースとして音楽の屋台骨作り・プレイヤーとしての個の表現の両方を楽曲の世界観作りに落とし込む能力の高さだと思っている。やや飛躍するが、それは言い換えると「非可換である事」だと思う。LTEでのプレイ内容・音作りはまさに非可換な内容で、アレだけ変な事ばかりやっておいて、音楽の土台を崩す事は決して無い。音数の多さにも少なさにも対応する。ラフで自由に叩きまくるマイク・ポートノイの個性を邪魔せずにベースもかなりラフに動き、でも要所が抑えられているので不思議と浮ついた感じにならない。サウンドメイキングでも、よくよく聴くと曲の雰囲気に応じて音の大小やハイ&ローをかなり細かく変えている。が、「あのベーシスト」が弾いてる事はビシビシ伝わる。

ベーシスト1人でここまで音楽は変わる、という見事な例であり、LTEの素晴らしさを語る上で欠かせない要素の1つだと思っている。

結び

LTEに感じる魅力は上記の通り。勿論、各プレイヤーの技量、特にマイク・ポートノイの天才ぶりなどもあるが、「LTEの素晴らしさ」として挙げるなら先の2要素かなと思う。
(余談だがポートノイの天才ぶりを感じるにはTransatlanticを聴くのがオススメ。ドラムだけで楽曲の世界観をここまで表現出来るプレイヤーは滅多にお目にかかれない。)

音楽というのは不思議なもので、完璧なメンバーで完璧な楽曲をやれば必ず面白いかというとそういう事は無い。このメンバーでこういう音楽をやるから魅力的、という組み合わせ的要素が必ずある。しかも聴く側の相性まで付いてくる。
LTEのようなバンドの存在は、自分の中でそのような音楽の不思議を強烈に感じさせてくれるし、そういった偶然性の存在が音楽が面白い理由であると思う。
自分が飽きずに楽器や音楽やってる理由でもあるかもしれない。



・・・まぁ・・・・・年明けにLTEのコピーバンドやる事になったし、ちょっと語りたくなったんだよ。うん。
LTEやりたいと思い始めてから何年越しだろう。8年ぐらい経ったか・・・。楽しみだなぁ。

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