私は私のままで(ショートストーリー)

いい年なんだから、とか言われるけれど私はいくつになっても可愛いものが好きだし可愛いものを身に纏いたいし、それに見合った可愛い髪型やメイクでいたい。

私の身なりを見て、眉を潜める人、クスクス笑う人、珍獣を見るかの様な視線を送る人。色々な人がいる。
しかし、そんな人々の反応は、気にもならない。
だって、私は私がその時いちばん可愛いと思うものを身につけ、髪を結い、化粧するのだから。
いちばん可愛いものと一緒の私は、無敵だから。

可愛いと思っているのに、不相応だからと言ってそれを纏うことを我慢して生きる方が余程不幸だ。

たまたま周りが思う可愛い❤️と私が思う可愛い🖤が合致しなかった。
ただ、それだけのこと。
他者の価値観を嗤う者は、自分が嗤われることには妙に敏感なことがあるがそれが不思議でならない。

今日も新作のストライクゾーンど真ん中のアイシャドウを予約するため、貴重な有休を使った。
職場の人はコスメのために有休?と苦笑いをしていたが、では、あなたたちは何のために有休を使うの?
誕生日?旅行?デート?リフレッシュ?
新作のあの絶妙な色、粉質、パール感のアイシャドウはそれらに値しないとでも?

百貨店の前には、アイシャドウの予約のため既に長い列ができている。
皆、思い思いの目当ての品があるのだろう。
彼女たちと私の身なりはだいぶ違うが、彼女たちの中に私を嗤う者はいない。
皆それぞれ、平日の開店前から列をなす者たちは同志であり戦友であるという意識があるのだろう。
話こそしないものの、我々は妙な連帯感をもってこの列を成しているのだ。

こういう列に並ぶ度、私は私のままでいい。という強い思いを再確認する。
私は私であるために、今ここで列の一部となりこれから始まる戦闘に挑むのだ。

いい年?上等だ。
私にとっては常に今が最高の年齢だ。

百貨店の開店の音楽が流れる。
列をなす戦友たちの表情が引き締まる。

私が私のままでいるために、私はこの戦いに挑むのだ。

ファッションやコスメを自分のために楽しむ人は素敵よね、というお話。

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