【詩】恋、している
僕はもうずいぶんと君に恋をしているけれど
こんな私を愛してよ、という君の
本心を僕はよく知らない
「こんな」に含まれている配合物から
純真無垢な無添加物を取り出すために
まず君を底の深い器の中に丁寧に寝かせて
粉砕用の撹拌機をつっこんで
僕は君が残ればなんだって良いのだけれど――
スイッチを入れる
がりごりとけずられていく「こんな」は
言葉
「言葉」だ根も葉もない「流言」流言がこびりついて
できあがってしまっているのもだから
「こんな私」の君が息苦しそうな顔をして細くなっていく
けれど懐かしい君が見えてくる
だから僕はもう一度恋をした
僕にもおそらく一緒に育ってきた
幼馴染のような「こんな」があるけれど
疎遠だ
SNSどころか
LINEの連絡先さえなにも知らない(住所では正しい場所が把握できない
だけどまぁ、僕と肩を並べて生きてこられるような「こんな」だから
きっと今もうまくやっているだろう
もういい歳だから子どもがいるかも知れない
そうなると少し会ってみたいとも思うが
もう顔は覚えていない
ドラマのような幼馴染でいられたら
僕の人生に「羨望」が付与されていたかもしれない 寂しさ
未だ、撹拌機は動き続けている
器の中で目が冷めた君が何かを言っている
がりごりと
がりごりと
「こんな私」を愛するために僕は黙々と
君を木っ端微塵にしている
足りないものがあって泣いちゃった君から出てきた液体と
どこかからこびりつけてきてしまった流言と
粉砕できたから
丁寧に新しいさらし布で濾す予定だ
そうなると
しかしそうなってくると
「こんな私」の完全たる無添加物はどこに残るのだろう
君の寝言はこんなにもかわいらしいというのに
こんな私を愛してよ、という君の
本心を僕はよく知らないままだ
布の上の流言が僕に手を伸ばしている
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