03|デザインのプロセス
グラフィックデザインの仕事でイメージするのは、現在だとパソコンに向かってAdobe社のillustratorやphotoshopといったアプリケーション上で作業している感じでしょうか。写真を補正加工して、文字や図形をレイアウト。手描きの原稿をスキャンしデータ化したものを加工していくこともあります。
ちょっとびっくりされる方もいるかと思いますが、実はこの過程は、デザインのごく一部。全体のボリュームから言うと20%ぐらいでしょうか。いくつかの工程を経た上で、この実作業に入っていく感じです。
では、デザインどの様なプロセスを経るのでしょうか?
簡単な図にしてみました。
01の回で少し触れましたが、デザインは問題解決に適した分野となります。クライアントより依頼(お客様である時もあるし、自分がクライアントになる場合も多いです)があったら、まず、解決すべき問題を時間の許す限り観察・調査して理解します。打ち合わせでは、希望要望を聞くだけでなく、業界のことや隣接する事象、個人であればその人のことや、法人格であれば理念やビジョンなどヒアリングします。このヒアリングだけでなく関連する事象に関しては、インターネット書籍などで調べ上げます。詳しい知人に業界の事を聞くこともありますね。
この観察・理解のプロセスに、全体の50%ぐらいかけます。もちろん時間もお金もない場合もありますので、理想値ですが。このプロセスを経ることで、どんどんアイデアが湧いてきます。自分は、ノートにラフを描きながら、様々な情報をまとめていくようにしています。ただ、この時点では断片的で、なるべく変にまとめない様に気をつけています。自分の表現したいことと問題解決の方向性がずれるとよくないので、その点に重心をおきながら調査していきます。
次に、集めた情報からどのネタが問題解決の糸口になるのか考えていきます。先のプロセスは情報を集めていく、このプロセスは、どんどん削っていく形になります。
すべての情報を扱おうとすると、人間の特性上伝わりづらくなってしまうので、目的に合わせて情報を精査し狭めていきます。
このプロセスは全体の20%ぐらいのイメージです。
この「観察・調査」と「先鋭化」で全体の70%。このプロセスが、デザイン全体の質を左右するといっていいと思います。まだ実際の作業には入っていませんが(笑)。
持論ですが、適切に広く深く観察・調査し、先鋭化を行うことで、伝わる力・範囲・説得力・強度は格段に上がると思います。この先の実作業にも多大な影響が出ると思います。仕事では予算やかけられる時間が決まっていますので“可能な限り”手間をかけて望むことになります。
02でも少し触れましたが、この部分の精度を上げるために、日頃から読書や映画鑑賞、情報インプットをすることで見識を深めていくのがおすすめです。0から観察を始めるよりも10からの方が圧倒的に効率的です。ただ、この場合、偏見が邪魔をする場合があるので、“偏りのない”視点が求められます。
もう一つ、使えるTIPSがあります。
よくビジネス分野でも話にあがりますが、5W2Hというキーワードですね。解決する課題を絞り込むときに、とても有効です。
When(いつ)
Where(どこで)
Who(だれが)
Why(なんで)
What(なにを)
How(どのように)
これに加えてデザイン業務では
How much(予算)
を加えて5W2H。ターゲット(伝えたい相手)を絞り込む時や用途、目的などを明確にするときにも有効です。
問題が漠然としていると、やるべきことも曖昧になってしまい、結局何もしない、なんてことが日常生活でも多々ありますが、このキーワードを意識してみると(あまり意識してしまうと息苦しいので、ほどほどに)、やるべきことが整理されて、順序立てられるのでおすすめです。いくつものアイデアが出てきた場合は、優先順位をつけて順番に解決していくことも大切です。
是非、役立ててみてください。
さて、絞り込んで先鋭化した後、その過程で出てきたイメージを具体的に制作していくプロセスに入っていきます。私自身は、“作業”と言ってしまってますが、ここが一番簡単ではなく、専門知識や経験がものをいう世界です。アプリケーションの使い方、正確なデータの扱い方、印刷に適した処理の仕方など技術的な面や、グラフィックの基礎的な組み立て方、イメージをスムーズに形にしていくやり方、などなど膨大な知識そして正確な判断が必要です。ただ、デザイン全体からいうと20%ぐらいの割合。この部分にあまり時間をかけたくないので、日頃から意識してどうスムーズに制作できるかトレーニングしている感じです。日々鍛錬。
(デジタル化によって、やや簡単に参入できる職業となりましたが、グラフィックデザイナーの作業領域は格段に増えて時間も必要な知識量も増えちゃいました…。すべてをスムーズにこなすためには忍耐も必須です。)
この部分に関しては、別の機会にもう少し領域を狭めて書ければと思っています。
それから、実際にデザインしたものを世にリリースして終わり! ではないのがデザインの世界。そのデザインがどう機能したのか、どう受け止められたのか、反応があったのか、ダメなところがあったらどこなのか、調べていきます。クライアントに委ねてしまう場合もありますが、その後どうかはヒアリングしていくとよいでしょう。
イイところはさらに伸ばし、ダメなところは解決して、次の機会にはさらにブラッシュアップし、より世の中で機能していくものをリリースしていくことが大切。そう書いていて私もまだまだできていない面もあるので日々精進ですね。
で、初めに戻る。
と、いうわけです。
この全体を意識しながらデザインに関わっていくことが大切です。
はてしない物語です。
継続は力なり。
過去を糧にして 課題をより良い方法で解決していく という輪廻転生的な基本的機能がデザインの考え方には備わっています。
デザイン思考の書籍は様々な方が出せれていますし、インターネットでも掲載されているも多いので、もし興味がある方は手に取ってみてくださいね。
ちょっと講義的な内容が続いたので、次回からは日々のことも含めて書いていきたいと思います。
では!
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