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指導者はまず選手との信頼関係性を作るべきなんだな

選手と指導者の関係をいかにうまく作るか、これが選手が競技パフォーマンスを高めていくための要素であり、指導者が指導者として豊かにやっていくためのコツだと思ってます。

指導者が選手に対して練習やその内容を一方的に押し付けてはいけない。
もちろん、ある競技を志した人が、競技に初めて触れる時、どうやっていけばいいのか、やり方は何もわからないでしょう。
だからそこで指導者が教える必要があります。しかし、指導者が指導者の思うやり方でやっていても、選手はついていけない場合があります。

それは選手一人一人がもっているバックグラウンドが違うからです。スポーツをそれまでやってきたのかどうか、どういった環境で育ってきたのか、どういう気持ちでスポーツに取り組もうと思ったのか、スポーツを通してどうなりたいのかなど、競技と出会う前の境遇はそれぞれなわけで、それを無視して、画一的に同じやり方を押し付けてはいけないのです。
ましてや、「自分は昔これくらいやっていたから、お前もこれくらいやれ」というのは全くもって理にかなっていません。それを過去に自分ができたのは、自分のバックグラウンドがあってこそのものだからです。

しかし、経験のある指導者ほど、「どれくらいの量と質の練習をこなせばどれくらい勝てるか」や、「どのような食事・睡眠などの生活をすれば身体が作れるか」といった感覚があり、その分、そこに向かわせようと必死になってしまったりします。相手のことを思っているつもりで、いつの間にか指導者のエゴを押し付けているパターンです。

たしかに選手が指導者の言いなりでやっていけば強くなるかもしれないものの、より効率的に強くなるためには、選手の「納得感」が大事です。
「納得感」というのは、「今なぜこの練習をやるのか」といった「今日の活動理由」です。
これが得られると、いちいち細かく指導をしなくても、自分で考えられるようにもなり、自分なりの工夫をするようになり、ますます同じ練習時間でのパフォーマンスがあがっていきます。
そして、日々の練習の意味が理解できて納得感が得られていくと、選手が自分のことを自分で考え、自分で練習について考え、自分で成果を出し、自分で反省をするようになり、自律をしている状態になります。指導者はそれに対してアドバイスをしていくという形が作れるでしょう。

ただし、最初に「納得感」を得る前提には、選手が指導者のことを信頼できるかどうかが肝要です。
「この指導者の言っていることについていくと自分は強くなれる、前に進める」といった信頼です。
これを醸成するためには、一緒に小さい成功体験を作っていくことが大事なプロセスです。

最初は指導者の思うようにはなかなかいかないでしょう。「もっと練習した方がいいのに」とか「なんでこれだけ言ってもわからないのか」、「意識低いなあ」といったフラストレーションもあるかもしれません。
その時に、それは指導者自身が選手から信頼を得られていない状況ではないかという内省をできるかどうかが大事だと思います。

この信頼関係を築くために、入部してきたら、まずは小さな目標を立ててみる。
自チーム内での記録会でも、小さな大会でもなんでもいい。そこでどれくらいを目指すかを一緒に決めて、そこに向かって相手のペースに合わせながら、まずは小さな成功体験を作る。
これができると、段々と指導者に対する信頼が生まれてきます。「じゃあ、次はこんな目標をやってみよう」と、いう会話を繰り返しているうちに、高い意識で高いレベルの練習や生活ができるようになっていくもの。

ここをいかに忍耐強く我慢できるかが指導者としての才能が問われるところです。決して、「つべこべ言わずにやれ!」なんて言ってはいけません。
選手だって、よりよくなりたいと思っているわけだから。

経験があると、ついついあれやれこれやれと言いたくもなりますが、自分は相手から見たらただの他人だということを自覚し、一人一人としっかり向き合動く必要があるもの。

学生たちと年齢が離れるほどに、私は特に気をつけるようにしています。

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