見出し画像

プロダクトタグラインは現在価値を表現するべき

タグラインとは

私はプロダクトマネジメントを行うにおいて、主に0→1の新規サービスを担うことが多いです。
0→1ですから、文字通り無かったものを生み出す仕事です。よって、サービスを生み出すというだけでなく、それを象徴するロゴを生み出したり、説明する資料を生み出したりなど、全てにおいて0→1です。
その中のひとつの重要な要素に「タグライン」というものがありあす。タグラインはサービスの独自の価値を社内外へ端的に伝える言葉です。「タグ=レッテル」のようなもので、「ライン=1行」、つまり「1行レッテル」と考えればわかりやすいでしょう。製品のロゴに添えて表現されることが多いです。

有名なプロダクトタグラインの例

いくつか例をあげるとこのような感じです。

  • カロリーメイト(ドリンク):「飲む、バランス栄養食」

  • インゼリー:「10秒チャージ」

  • クロレッツ:「息スッキリ30分長続き」

ここに挙げたのはサービスや商品のタグライン、いわゆるプロダクトのタグラインです。
季節やキャンペーンなどによっても変動するキャッチコピーとは違い、少なくともざっくり年単位では普遍的なものです。

タグラインは顧客への約束

なぜタグラインが必要なのでしょうか?
そもそも、タグラインはどんな役割があるのか、記事冒頭で「サービスの独自の価値を社内外へ端的に伝える言葉」と書きましたが、あらためて整理しましょう。端的に言ってしまうと以下です。

  • ブランドの価値を明確にする(価値・メリット)

  • 競合他社との違いを明確にする(差別性)

つまり、「サービスそのものが何なんだ」、「どんなメリットがあるんだ」、「何が新しいんだ」を表現するものです。

これは顧客に対する約束です。
例えば10秒チャージだったら「素早くチャージできる」ことが約束です。こう言っておいて、飲み始めるまでにキャップが複雑な構造をしていて時間がかかってしまったり、中身がどろどろしたり、炭酸のようにシュワシュワして瞬時に飲みにくかったり、エネルギー補給ができなかったりしていてはいけません。なんせ「10秒チャージ」ですから。
「息スッキリ30分長持ち」も息がすっきりしない味わいだったり、すぐに終わってしまうようでは約束を果たしていません。約束が果たされないと顧客はがっかりしてしまいます。逆に約束が期待通りに果たされると顧客は満足します。
これだけ具体でスパッと言えるフレーズは美しいですね。プロダクトそのもののコンセプトがしっかりしていて、しかもそれを端的にわかりやすく具体で表現するフレーズを充てられるというのは簡単ではありません。

タグラインをどうやって考えるか

特に私のようなベンチャーやスタートアップにおり、革新的なものを0→1で生み出すといった場合には、先に書いた「サービスそのものが何なんだ」、「何が新しいんだ」が表現できることはとても重要です。

これには一定の公式があり、「革新性」 x 「カテゴリ」で考えると近道です。
先の例にあげた、「飲む、バランス栄養食」はこれですね。「飲む(革新性)」 x 「バランス栄養食(カテゴリ)」です。
この時、「カテゴリ」部分は一般的な言葉や、誰でもイメージできるものでなくてはいけません。
LUUPの「電動キックボード」もそうですね。「電動」と「キックボード」です。

約束だから未来すぎることを語ってはいけない

例えば、「10秒チャージ」の先に、エネルギーを補給する以上に、1日の栄養素が取れる機能を備える未来があるとして、「10秒栄養チャージ」と言ってはいけないです。なぜなら、今できていないからです。そういう未来に向かっているというのは内部の話であって、まだ顧客に約束できる話ではありません。なので、顧客はこれをみて商品を手に取って試してみたとしても、その時点では「期待はずれ」になってしまいます。その時点で言えること、約束できることを表現するのが大切です。

タグラインを変更すべきとき

freee会計という会計ソフトは、当初から「クラウド会計ソフト」というタグラインを表示してきました。
今でこそ会計ソフトをクラウドで、、というのは多くの企業が導入していますが、「クラウド」+「会計ソフト」というのが新しかったのです。会計ソフトというのは、経理のパソコンにインストールをして使うもので、経理の人しか触らない、そして更新もされないものでした。それを「クラウド」を活用することで、1台のパソコンでなくても複数台からアクセスができて、そして随時機能が更新されて使いやすくなっていく革新性がありました。導入も手軽で、専任の経理が置けないような中小企業にはまさに良いものだったわけです。
しかしながら、その「クラウド会計ソフト」も参入が多く、もはや「クラウド会計ソフト」というものがカテゴリ化しています。
そこで昨今では、「経営を見える化するクラウド会計ソフト」や「IPO監査対応を効率化するクラウド会計ソフト」と表現しているところもありますね。

先に述べた通り、タグラインは「サービスの独自の価値を社内外へ端的に伝える言葉」なので、「価値・メリット」と「差別性」が表現できなければいけないわけなのです。「価値・メリット」が自社だけのものではなくなってきてしまった時や、プロダクトが成長し、顧客に対する「約束」が「進化・深化」してきた時は、見直すタイミングです。

ちなみに「進化・深化」が大事であって、「変化」はよくないです。既存のお客様がいるので、「あれ、今までのサービスからだいぶ変わっちゃったな」となると、期待と違って顧客が離反していきます。変化は変化でも、あくまで「進化・深化」である必要があります。

最後に

どれだけ革新的なサービスが生まれても、それが伝わらなければ手に取ってもらえません。特に0→1サービスの場合、良いタグラインが考え抜けるかどうかが、サービスの生死を左右する要素のひとつといっても過言ではありません。

ちなみに、何がタグラインで、何がキャッチコピーで、何がスローガンで、、といったことを解説している記事をよく見かけます。
今日の記事を読んでいただければ、重要なのはそこではないことはご理解いただけたのではないかと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?