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S,M,L,XL+ 現代都市をめぐるエッセイ

読みかけて放置されていましたが、再び手に取り読了。

現代都市のゴーストライター。都市観察者としてのレム・コールハース。前著の「錯乱のニューヨーク」もそうです。私が学生時に見てたのは、建築家としてコールハース。そのキャリアを通して出版された 「S,M,L,LX」から、近代都市に対するエッセイの抜粋+αを翻訳したのが本書です。すぐに翻訳の企画がスタートしたそうですが、2015年の本書出版まで20年近くかかってます。。。

ミュージアムショップの本棚に発見し、学生時に読めなかったことを思い出し、たまには建築の本でも読もうかと手に取りましたが、なんだか私の頭にはちっとも入ってきません。理解に努めるより、割り切ってリズム良く読み進めるといい感じ。そうこれは実用的な本でも学術的な本でもなく短編小説。それでも本当によくわからない短編もあります。(それは問題作らしい)

小説の様に読みながらも、ここテスト(仮想の)に出そうだなと思うところにはドッグイヤを折りました。出来るだけ同じ大きさ(小型犬)になる様に配慮し、ドッグイヤを何匹分つくったでしょうか。それは現代都市や建築への新たな視点が掘り起こされた跡です。俄かには理解できない描写や考察は示唆に富んでいます。その辺を読み返して少し記します。

ジェネリック・シティ
ジェネリック・シティが鏡だらけであることと、鏡というものが何世紀にもわたって未開人には最も気に入られる効果的な「贈り物」だとされてきたことに、何か関係があるのだろうか?

スマートな景観
われわれがいま直面しているのは、人間の集団を明確に捉えるという建築の伝統的能力と、個人との一体化が可能と言えそうなデジタルの能力との、根本的な対立関係だ。

実地調査
事実、狭義の建築的解釈で言えば、壁は実体ではなく抹消されたもの、できたての不在だった。僕からすれば、壁は空洞の力を初めて示したのだと思う。そこにどんなものをつくるよりもっと効率よく、巧妙に、柔軟に「機能」する力を。それは不在は実在との勝負には必ず勝つ、という教訓だ。(ベルリン)

無を思い描く
これらすべてが明らかにしているのは、大都市圏における空無の状態は空虚ではないということ、空洞はどれも、いまある組織に強引にはめ込もうとすれば活動・組織ともに損なうことになるようなプログラムに使える、ということである。

ピクセル東京
その特色のなさは芸術的なほどで、ステルス戦闘機と同じくらい目に映らない。都市という都市が執拗にアイコンを求め、どれもこれも魅力のないモノマネに堕していくなか、東京に出現した新しい量塊の不活性ぶりこそは、新たなる風格の誕生を告げているのかもしれない。

シンガポール・ソングライン
「世界主義に立った融和を目指すとき、機内的な順序で除去し、破壊し、置き換えるといった露骨な更新ほど、非都会的で非生産的なものはない」と槇文彦は1964年の集合体の研究で書いている。

ジャンクスペース
この問題作にドックイヤを残せなかったのは自分に対して残念。訳者はあとがきにてこの短編をヒップホップ調に歌ったと記している。

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