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ミャンマーを知る

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ミャンマーの人たちのことをもっと学ばなければならないと考えています。私がベトナムとの仕事上での関わりを持つきっかけが2012年で、もう12年が経ちました。クライアントのデータ処理…
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記事一覧

本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置…2024年10月1日から、技能実習生の「特定活動」への在留資格変更に関して取扱いが厳格化されました

ミャンマーを知る⑲【1,983字】  ミャンマーの国内情勢が悪化したことにより、日本に在留しているミャンマー国籍者に対して、日本政府の人道的配慮から、特別な在留措置が取られています。  これが「本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置」と呼ばれるもので、具体的には以下のような内容が含まれます。 1. 緊急避難措置の背景  2021年2月1日のミャンマー軍事クーデター以降、同国では政治的混乱が続いており、多くの国民が深刻な状況に直面しています。  ミャンマー

仏教と国家の二重性ー軍事政権が仏教を利用する背景と矛盾

ミャンマーを知る⑱【3,199字】 仏教と国家の二重性ー軍事政権が仏教を利用する背景と矛盾  前回からの続きです。  ミャンマーにおける仏教は社会のあらゆる面に深く浸透しており、多くの国民にとって仏教は生活の基盤であり、精神的な支えです。  ミャンマーの歴史を振り返ると、仏教は国家統治や政治的権威とも強く結びついてきました。  しかし、この宗教的基盤を利用する形で、軍事政権は自らの権力を強化し、弾圧を正当化している現状が見られます。  この矛盾した関係性が、現代の

軍事政権による市民への暴力や弾圧、銃殺

ミャンマーを知る⑰【1,666字】    ミャンマーにおいて、軍事政権による市民への暴力や弾圧、銃殺が「当然のこと」ように行われているのは、複雑な歴史的、政治的、社会的紛争が絡み合っているからです。 ミャンマーの悲劇の連続です。      謀略や弾圧、銃殺がなぜ可能になっているのかについては、以下のような理由が考えられます。 1.軍の独自の歴史と認識  ミャンマーの軍事政権(タットマドー)は、長い歴史を持ち、国家の独立を維持する守護者としての役割を自認していま

ミンカラザとシンゼィーの物語

ミャンマーを知る⑯ 【2,101字】  ミャンマーの文化や歴史を知る旅を続けています。 「ミンカラザとシンゼィーの物語」は、信頼や時代を超えて語り継がれる、愛と運命に遭遇だ二人の心の強さを描いた感動的な物語です。  階級社会の王朝の時代に、違い過ぎる身分に生まれた二人が、本質や社会的な期待を超えて純粋な愛を貫こうとする姿を感動的に描いています。 ミンカラザ王子とシンゼーの出会い  物語の舞台は、壮麗な宮殿に囲まれたミャンマーの古都。ミンカラザ王子は、次期王位を約束さ

ラートゥ・クムの伝説

ミャンマーを知る⑮【2,088字】 「ラートゥ・クムの伝説」  ミャンマーの文化や歴史を知る旅を続けています。「ラートゥ・クムの伝説」はミャンマーカレン族の口承文学ですが、また、創作を織り交ぜてお届けします。 ✨カレン族の乾季✨  紀元前のミャンマー、カレン族の村は四季の変わり目を感じることなく、温暖な気候に支配されているはずでした。  乾燥した風が山の谷間を吹き抜け、昼夜の温度差が大きくなっていました。  季節は乾季に差しかかっており、昼間の暑さとは対照的に、夜

ザンベー・ザヤとアウン・ヤダナーの試練と愛【後編】

ミャンマーを知る⑭【1,975字】 ザンベー・ザヤとアウン・ヤダナーの試練と愛【後編】  アウン・ヤダナーがザンベー・ザヤへの純粋な愛を示し続ける中で、嫉妬に狂ったお金持ちの商人の息子、ウィン・ナインは陰謀を練り始めます。  ウィン・ナインは裕福な家柄に生まれ、村の有力者たちとも深い繋がりを持っていました。  彼にとって、ザンベー・ザヤを手に入れることは、自らの名誉と誇りを守るために必要不可欠なことでした。  しかし、彼女の心がすでにアウン・ヤダナーに奪われているこ

ザンベー・ザヤとアウン・ヤダナーの試練と愛【前編】

ミャンマーを知る⑬【1,476字】 ザンベー・ザヤとアウン・ヤダナーの試練と愛【前編】  ミャンマーの静かな村落、緑豊かな田園風景の中にひっそりと佇むザンベー・ザヤの家。  その村は、長い間、外界との接触を避けてきたため、豊かな自然と穏やかな生活が保たれていました。  ザンベー・ザヤは、その村で誰もが憧れる美しい女性でした。  彼女の黒髪は夜空のように艶やかで、瞳は深い湖を思わせる澄んだ輝きを放っていました。  彼女の笑顔を見るだけで、人々は心を和ませ、村の男たち

アナウラッタ王とカンバーラ王のキセキ

ミャンマーを知る⑫【1,808字】     アナウラッタ王は、ビルマの乾いた大地にそびえ立つパガン王国の誇り高き王でした。  彼の眼差しは鋭く、戦場での輝かしい勝利を求めるのではなく、より大きな使命――仏教の教えをこの広大な地に広めることを追い求めていました。  彼の王座の背後には、壮麗な仏塔がそびえ、夕陽に照らされて金色に輝いています。  アナウラッタはその仏塔を見つめながら、心の中で静かに誓いを立てていました。 「この地に仏教を広め、全ての者に平和をもたらす」

日本語能力に影響を与える要因

ミャンマーを知る⑪【2,535字】 ミャンマーからの技能実習生たちが、8月30日に成田空港から乗り継ぎ、新千歳空港に到着。  私たちのアイアジア国際研修センターでは、初めてとなるミャンマー人の技能実習生を送迎、出迎えしました。  昨日、9月2日から1ヶ月間の日本入国後講習会が始まりました。  他の国、特にベトナム人やインドネシア人と比較して、日本語の能力が高いという評価があります。  そんなことが本当にあるのでしょうか? この点では私は疑い深いです。  いくつか

階級や社会のしがらみを超えた愛の力

ミャンマーを知る⑩口承文学❷シャン族の「ノン・モンとティン・アウンの愛の物語」【1,772字】  ミャンマー(旧ビルマ)の文化と歴史の旅を続けましょう。  ミャンマーの口承文学は、その豊かな文化遺産の一部として、古くから続く伝統的な表現形式です。口承文学とは、文字に記録されることなく、口伝えで伝えられる文学のことを指します。 階級や社会のしがらみを超えた愛の力  シャン族の「ノン・モンとティン・アウンの愛の物語」は、ミャンマー北部のシャン州に住む人々の心に深く根付いた

ピュー王国

 ミャンマーを知る⑨【1970字】  ミャンマーの文化と歴史の旅を続けたいと思います。  ピュー王国は、紀元前2世紀から9世紀にかけて、現在のミャンマー中央部に存在した古代文明であり、東南アジアの歴史上重要な役割を果たしました。  この王国は、特にその文化的、宗教的影響力と、周辺地域との取引しやすさによって栄えたことが知られています。 1. ピュー王国の起源と発展 ピュー王国は、ミャンマー部に位置するイラワジ川流域を中心に栄えました。  この地域には、紀元前1世紀から

ビルマ詩歌 Pyo ピョー

ミャンマーを知る⑧   ミャンマー(旧ビルマ)の歴史と文化の中で、詩歌(Pyo)は非常に重要な位置を占めています。「ピョー(Pyo)」は、ビルマ語文学の中でも特に古く、宗教的・歴史的な題材を詩的に表現する詩形です。【1,950字】  ピョーの概要、歴史的背景、文化的意義、そして代表的な作品について文化の旅を続けましょう。 1. ピョーの概要 ピョーは、ミャンマー文学における古典的な詩形で、通常は仏教に関連する宗教的なテーマや、歴史的事件を題材としています。  この詩形

ビルマ変身の女王の伝説

 ミャンマー、旧ビルマの民話や伝説には、神話的な存在や魔法的な要素が多く含まれています。【1,350字】  その中でも「変身の女王の伝説」【※私の独自の翻訳によります】は特に有名であり、魅力的な物語の一つです。この物語は、教訓的な内容とともに、読者に深い感動を与えるものです。 1.物語の概要①変身の女王が現れる  山深くの密林の中には、美しい女性に変身する能力を持つ変身の女王が住んでいました。  彼女はその美しさを利用して旅人や村人を誘惑し、彼らを突然襲う。  村人

ミャンマーを知る⑥ミャンマーの民話「ザウ・ジーとケィ・ミンガラ」❷

 この物語は、ビルマ民族の間で語り継がれており、知識と誠実さ、友愛の価値を伝える重要な教訓を含んでいます。 ミャンマーを知る⑤ミャンマーの民話「ザウ・ジーとケィ・ミンガラ」❶  この文化の旅の中で、錬金術師(れんきんじゅつし)という歴史的な科学と医学、宗教、哲学などの領域のことの研究者について調べてみたいと思いました。 【ザウ・ジー(Zawgyee)の存在】 ザウ・ジーはミャンマーの伝説的な賢者で、錬金術師でかなりの極めた力を持っています。  彼は長い修行の末に、多く