メモを活かす14の手法!仕事にも生活にも役立つ『すごいメモ。』の記し方
営業員時代から、「メモ帳」は必携ツール。
業務上のスケジュールや上司からの指示を書き留めるのはもちろんのこと、商品管理に営業文句、さらには顧客とのやり取りや各々の性格や話題の傾向まで、ありとあらゆることを記録していた。
とはいえ、その多くは自分が忘れるのを防ぐための「走り書き」のようなもの。長期的に見て役立つ、「アイデア」となるようなメモではなかった。そもそも仕事が忙しく、日々の予定や注文をメモしては捨てることの繰り返しであり、見返す暇もあまりなかったように思う。細かな顧客情報を記録したメモが役立ったのは、退職前の引き継ぎの時くらいだったかな……。
ところ変わって現在。退職後の無職期間を経て独立し今に至るまで、なんだかんだで変わらずメモ帳のお世話になっている。いつでもどこでも常に紙とペンを持ち歩いているし、1日の終わりにはその日の出来事を記録している。……さすがに、毎日というわけにはいかないけれど。
この2、3年あまり、スケジュール帳に書き綴ってきた日記も含めれば、それなりの量の「メモ」を積み重ねてきた。でもやっぱり、過去に書いたメモが役立つ機会は少ないし、読み返すなかで「これは何の話だったっけ……」などとピンとこないこともある。
「メモ」という行為それ自体は好きでも、なかなかその記録を活かせていない現在。何かしら良い方法はないかしら――と考えていたところ目に留まったのが、本書『すごいメモ。』です。
「メモ術」というよりは「アイデア本」であり、情報の「整理術」を学ぶことができる内容。さらには、ブログの記事執筆にも活かせそうなハウツー本でございました。これはいいぞ。
メモの役割は「考えるきっかけ」をつくること
そもそもの話として、「メモ」の役割ってなんだろう?
学生時代の講義ノートもある種の「メモ」であったことを考えれば、それは見聞きした情報を記録するものであり、自分が忘れないようにするための手段。そう言い換えられる。それこそ、営業員時代の自分が、必死にスケジュールをメモっていたように。
その一方で、「メモ」はしばしばアイデアの源泉として利用されることもある。ブレインストーミングで思い浮かんだことをひたすら書き出したり、企画のネタ出しをしたり、文章の構成を考えたり。それらのメモはその場ですぐに役立つこともあれば、あとで見返したときに「これ、使えるじゃん!」と再活用されるような場合もある。……冒頭の自分のように、何にも使えず腐らせてしまうケースもあるけれど。
そう、メモは放っておくと、“腐る”のだ。本書の冒頭でも、まさに自分のようにメモを腐らせてしまう人や、使いどころを見失ってしまったメモを指して、「メモ迷子」と呼んでいる。人の記憶は曖昧だから、あとで読んでも理解可能かつ役立つメモを書く必要があるのだ。
考えるきっかけをつくること。それこそが「メモ」の持つ本当のメリットであり、本書が目指す「すごいメモ」の理想型でもある。
さらに、メモは普段の仕事をはじめとする諸活動で役に立ってくれるものでもあり、特に仕事上では次の5つの役割を担ってくれるとも筆者は説いている。
整理(仕事の条件や要点を整理する)
設定(課題を見つける。目的を決める)
考察(何が有効な解決策か考える)
発見(新しいアイデアへたどり着く)
指示(部下やチームに役割を伝える)
単なる「自分用のメモ」にとどまらず、「物事を忘れないための走り書き」でも終わらない。「すごいメモ」とは、他者とのやり取りにおいても効果を発揮し、未来の自分に考えるきっかけをもたらしてくれるアイデアの厳選なのだ。
仕事に生活に、メモを役立たせる14のメソッド
本書では、1~3章にかけて「すごいメモ」の方法論と考え方を紐解きつつ、最後の4章では作家・伊坂幸太郎さんとの対談を掲載している。あくまでオマケっぽい4章だけれど、「作家さんのネタ出し方法」としておもしろい内容でした。話の組み立て方とか。
さて、メインとなる1~3章では、まず「メモ」の考え方を3つに分類。それぞれの章で計14個の手法を説明していく構成となっています。全253ページというボリューム感ですが、イラストに図表、さらには複数の実例も参照されているため、思いのほかサクサク読み進められました。
第1章「まとメモ」では、メモの基本となる「整理術」を説明。おそらく「メモ術」と聞いて多くの人が想像するような方法がまとめられているため、人によっては物足りなさを感じるかもしれない。
ただ、なんとなく書いていた「記号」について具体的な基準を設定していたり、筆者の独自ルールなども提案したりしているため、参考になる部分は多いはず。たとえば、基礎中の基礎、忘れないように付ける「◯」印にしても、「一度のメモで3つまで」「どこかに書いてあることには付けない」「疑問に思ったことにも付ける」といったルールを提案しています。
続く第2章「つくメモ」は、一口に言えば「アイデア術」としてのメモの方法。目的ときっかけを明確にする「ハードルメモ」、情報量を増やすことで共感度を高める「マンガメモ」、あえて結果→原因の順序で発想する「あまのじゃくメモ」といったメソッドを取り上げています。
なかでも、商品企画でそのまま使える「三角メモ」は、アイデアを生み出す方法として、今すぐにでも役立てられそうな印象を受けた。消費者の不満と商品情報とを掛け合わせることで隠れニーズを可視化する「ブラック三角メモ」と、解決したい課題とターゲットの好みとを掛け合わせることで複数のアイデアを一気に生み出す「ホワイト三角メモ」。商品に限らず、ありとあらゆる「企画」の場面で使える方法であるように思う。
「つたメモ」と題した第3章では、メモを使って人を動かす3つのメソッドを紹介。未来の自分に向けたメモはもちろん、チーム内での情報共有に、ひいては消費者や聴衆に伝えたいことが「伝わる」ようにする考え方。プレゼンにスピーチと、実践的な内容となっています。
本書のテーマ上、「メモ」という言葉で説明されてはいるものの、ここで取り上げられている方法は、その他さまざまな「文章」にも当てはまるように思う。相手に興味を持って読んでもらうための「『見出し』メモ」なんて、そのままブログ記事にも使えるでしょうし。あと個人的には、他者の興味を喚起する「スピーチメモ」が為になった。プレゼンの資料づくりに原稿執筆と、活かせる場面がいろいろと浮かんでくる。
――というわけで、ざっくりとではありますが、『すごいメモ。』の要約&紹介でした。
繰り返しになりますが、本書の肝は「メモ術」というよりも「アイデア術」に寄っている印象があり、「すばやく効率的にメモを取る方法」といった視点での考え方はほとんど書かれておりません。
1冊を通して書かれているのは、「考えるきっかけ」をつくるためのメモの書き方であり、メモによって仕事の生産性を高める考え方であり、走り書きを腐らせず使うためのメモの活かし方。これまで意識的にメモを取っていた人は「何を今更……」と感じられる内容かもしれない一方で、なんとなく必要に迫られてメモをしていた人が読めば、「そうすれば良かったのか!」と多くの気づきを得られるはず。自分は後者でした。
なにより、本書そのものがこの“すごい”メソッドによって書かれていることがわかるため、読後のスッキリ感は最高です。「よっしゃ、今日から実践したるで!」とすぐに取りかかれるわかりやすさ、お手軽感も相まって、「読んで満足しておしまい」にはなりにくいのも嬉しいポイント。早速、今日の日記から参考にしてみようと思います。
ちなみに、本書の筆者である小西さんの本を読むのはこれが2冊目ですが、第3章の“伝わる”メモの書き方についてより詳細かつ広範に取り扱っているのが、前著『伝わっているか?』となっている模様。気になる方は、そちらもあわせてどうぞ(感想記事リンク)。
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