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推しのVRアイドルのライブに行けなかった話

年度末というやつはテレビディレクターの僕にとっては天敵で

何かとバタバタしていた。

ちょっと一息入れようと、喫煙所でタバコを吸いながら、
スマホでXを開くと「2589日目の奇跡」という文字が目に入った。

この見慣れない数字と奇跡が合わさった言葉は、

僕が推しているVRアイドルえのぐが発表した単独ライブのタイトルだった。

僕の推しの詳細についてはもう何回も書いているので、
過去のNoteを是非みてほしい。


彼女たちは今年グループ結成。6周年。
この「2589日目の奇跡」の「2589」という数字は
彼女たちが活動を始めてからライブを行う日までの日付を指しているそうだ。

2本目のタバコを吸いながらえのぐの公式X・それぞれのメンバーのポストをリポストする。

タバコを吸いながらリポスト。

これは僕の日課でもあった。

いやいやそもそもの話をすると。

えのぐは毎年夏・冬と年に2回単独ライブを行っていて、
まさかこのタイミングで単独ライブを行うなんて思ってもいなかった。

でもこれはうれしい誤算。ファンにとってはうれしい悲鳴。

場所はゼップダイバーシティーね。

ガンダムがあるところね。

早めの告知ありがとう。

推しは福岡在住の僕に優しい。

地方民にとって江戸への遠征は冒険。

はじめてのおつかいのBGMがお似合いだ。

下準備が大事なのだ。

ネットバンキングのアプリを開く。

飛行機代、ホテル代、チケット代を計算する。

タバコを深々と吸う。

イケるぞ。

イケる。

彼女たちが独立してから初めての単独ライブだ。

イケるイケないの話ではないのだ「イク」のだ。

イク、スタンバイを既に整えた僕はもう

喫煙所で3本目のタバコに火をつけていた。

おっといけない。

その「奇跡」を見届ける日にちに
既に仕事が入っていないかチェックをしていなかった。

Googleカレンダーを開く。

3月

4月

5月とスライドをしていく。

5月3日は金曜日。右上だ。

右上を見る。


僕の5月3日カレンダー

ロケハン(取材の下見)

ロケハン

完パケ(VTRにテロップを入れる作業のこと)

がっつり仕事が入っていた。

テレビディレクターの詰め合わせパックみたいな1日じゃないか。

考えた。

スケジュールの調整はできないか・・・。

ロケハンはどうにか変更ができるかもしれない。


「お世話になっております。大塚です。5月3日のロケハンの件ですが、
推しのライブで東京にいくため日付を変更させてもらいたいのですが
可能でしょうか?」




なんて言えるわけがない。

嘘をついてスケジュールの調整なんてできない。

嘘をついた相手と良いVTRなんて作れるわけがない。

僕にもクリエイターとしてのプライドがあるのだ。

ここで既にもうタバコを4本吸っていた。

1本目吸っていた時にいた同士(喫煙者)はもういない。

ここが回転の早い定食屋だったら僕はもう迷惑客だ。




僕は推しのライブ

「奇跡」を見届けるのを諦めたのだ。

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それから約1カ月半・・・。

推しのライブの日5月3日(金)がやってきた。

この日は朝から地方へのロケハン→ロケハン→福岡市で完パケという
テレビディレクターの1日パック。

もちろん割引なんてない。定価だ。

東京ではえのぐ、そしてえのぐのファン「えのぐみ」のみなさんにとっては
勝負の1日だ。

僕も遠く離れた地から勝負に参加したいと。

この日はえのぐのライブTシャツを着ることに決めていた。

僕が一番好きなライブTシャツだ

後、もうひとつ。

スマホの待ち受けはいつもは子どもたちの写真にしているのだが、

この日だけは「ごめん・・・!」と言い、

推しの中でも特に大好きな画像に変更した。


ちょっとでもえのぐのライブが成功しますように・・・という

ライブにイケないオタクの悪あがき。

いやっ。推しあがきだ。

博多駅から、ある街に向かうため僕は電車に乗っていた。

新しい待ち受けにしたスマホで#2589日目の奇跡のポストを検索しまくる。

会場に早めに到着しすぎた人

これからライブ会場に向かう人

夜行バスに乗って東京に来た人

コインロッカーを探す人

グッズの情報が気になる人

ライブ後の打ち上げが気になる人

セトリを予想する人

いろいろな思いで最高の1日を待ち望んでいるファンたちの
言葉が綴られていた。

僕はその熱いエネルギーが放出されている場所とは
全く真逆の方向に向かいながら、
ライブへの思いをポストした。

ポストを見れば分かる通り、僕は配信のライブのチケットを購入している。

ロケハン・ロケハン・完パケを終えた僕へのご褒美が「配信」だ。

有線のイヤホンで推しの曲を聴きながら、1軒目のロケハン先に到着した。

収録場所のチェック

当日の段取り

出演者が食べる料理の確認など

仕事をこなしていく。

「大塚さん。ご飯食べてく!?」と

取材先の元ヤンキーの大将がご厚意で店の賄いを出してくれることになった。

賄いを食べていると、大将が僕に声をかけた。

「大塚さんそのTシャツはアニメか何か?」

「ああっ。これはバーチャルのアイドルなんですけど、
そのアイドルのライブTシャツです。」

「大塚さん。そういうのが好きなんや?意外やね」

「バーチャルのアイドルめっちゃいいですよ!
 大将もどうです?」

「俺はアイドルってより、ロックの方が好きかな!」

(”バーチャル”の存在を否定しない人だった・・・良かった)

「大将は確かにロックっぽいですよね」

「きょう彼女たちのライブが東京であってるんですけど、
仕事でイケなかったのでライブTシャツを着てるんですよ。」

「えっ?もしかしてこの打ち合わせがあったから行けなかったん?」

「いやっ!別の仕事もあったんでお気になさらずに!」

と、まさかロケハン先で推しのVRアイドルについて話をするとは思わなかった。

次の店のロケハンもこなし、

完パケ作業を行う編集所へ。

僕が福岡で担当しているエンタテ!区という番組のVTRを作っている編集所だ。

えのぐを知ったのもエンタテ!区のVTuber企画で紹介したからだ。

↓番組で5年間VTuberを紹介しています。お時間がある方は良ければ。

編集所いるスタッフは僕がえのぐの大ファンだということは知っている。

「大塚さん何でえのぐのライブTなんですか?」と聞かれる前に、
ことの説明を全部すると、いつもよりも30分早くVTRが完成した。

3階にある編集所から1階の自転車置き場まで駆け足で階段を降りた。

自転車もいつもより早くペダルを漕いだ気がした。

家に早く帰って推しのライブの配信を観たいからだ。

自転車を漕ぎながら僕はえのぐの3人のカラー

「青」「赤」「緑」のものをひたすら探すゲームを始めた。

目に留まる。

信号の「青」は「青だけど緑だな」なんて独自ルールを決めながら。

僕の推し「白藤環さん」のカラーは赤だ。


福岡市には夜になると真っ赤にライトアップされるタワーがある。

海辺にある「博多ポートタワー」だ

これはネットから拝借※写真は消してました・・・。

全然帰り道でもないのに。


僕は博多ポートタワーの近くまでいって
真っ赤に染まるタワーを撮影した。

家に返ってすぐにでも推しのライブを観なければいけないのに。

「赤」を撮影したら「青」も「緑」も撮影したくなる。

推しのカラーがライトアップされているスポットを撮影したくなったのだ。

「青」は福岡タワーがあったんだけど・・・。

(福岡タワーもだいぶ帰り道から外れている)


福岡タワーは推し色にライトアップできちゃうから興味ある方はぜひ。

「緑」はどうしてもなかった。

さすがにファミリーマートはないな・・・と緑は諦めた。

3色揃ったらXに載せようと思ったのに。

1色足りない。

いつも詰めが甘いオタクだ。

予定よりだいぶタイムロスした僕は、汗をかきながら自転車を漕いでいた。

汗が目に入る。

目を擦る。

信号機がちょっとかすれて見える。

何だ。ゆらゆらと。

これはペンライト・・・?

えのぐのライブが観た過ぎて、

信号機がペンライトに見えてきた。

キマってる。

ライブが見た過ぎて僕は

信号がペンライトに見えたのだ。

ドラッグジャンキーではない。

僕は推しジャンキー。

帰り道にスーパーに寄る。

普段お酒を飲まない僕は、
この日はお酒を飲むことを決めていた。

奮発して少し高めのビールを入れ、

500mlのレモンサワーとその他にも数本購入。

後は惣菜だ。

大好きなヒレカツとかしわ飯を購入。

ビール

レモンサワー

ヒレカツ

かしわ飯

推しのライブ

これはもう最後の晩餐じゃないか。

家につくと、爆速でお風呂に入り、

推しのライブTシャツに着替え、

首に推しのタオルを巻く。

ヒレカツにたっぷりとソースとマヨネーズをかけて。

みんなより数時間遅い、

僕の「2589日目の奇跡」が始まった。

お酒が入ってライブを見る。

という経験はない僕。

推し+酒+大好物=「奇跡」だ。

もうライブの感想を遅れたリアルタイムで共有したくて、

Xを更新するスマホの指が止まらない。


書いてるぞ。


※この辺りではだいぶいい感じになっている。


左手でスマホを打ち、右手でチューハイを飲み、箸で惣菜を食べる。

5月3日(金)の深夜。

僕は福岡市で1番幸せな人間だった。

はずだ。

推しのVRアイドルはすごい。

1人の人間をパフォーマンスで魅了させ、

2.5Lものお酒を飲まさせてしまうのだ。

最高のつまみはかしわ飯でもヒレカツでもない。

推しだ。

推しは最高のアテだ。

えのぐは最高のアテ。

とてつもないライブとお酒を飲んだ高揚感で

珍しく爆睡して朝を迎えた。

推しのえのぐは僕にとって日々の生活の活力にになる栄養素だ。

30を過ぎでそんな栄養素に出逢えるなんて思ってもいなかった。

えのぐの夢は世界一のVRアイドルになること。

僕はそんな彼女たちが頂きに立つ姿を見るまでは死ねない。

1:ONE PIECEの最終回を見届ける

2:奥さんに好きなことをさせる

3:子どもたちに好きなことをさせる

4:子どもたちの結婚式に参列する

5:えのぐの世界一のVRアイドルになる姿を見届ける

これが僕の死ぬまでに実現させたい5つのこと。

どれも実現させなければならないのだ。

ただえのぐの主戦場は東京。

福岡在住の僕は東京在住のファンに比べると
ライブには頻繁に参加できないし、

仕事柄、頻繁に推し活もできない。

また5月3日のような1日を過ごすかもしれない。

でも彼女たちにもらった栄養素の分だけ。

応援をしていきたいと思う。

ファンを推しが一生懸命応援する。

僕はえのぐとこの関係値をずっと続けていけたらいいな。

と思っている。

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そして、6月12日。

まさにきょう、えのぐがアイドルの祭典TIF2024に出場する
スケジュールが発表された。

5月3日(金)の1日を書くのならこの日と決めていた。

僕は同じミスを繰り返さない男だ。

8月2日(金)彼女たちがTIFで出場する日だ。

8月2日(金)は5月3日(金)と同じグーグルカレンダーで右上。

何度も言う僕はミスを繰り返さない男だ。





8月2日(金)TIFに出場するチケットを購入した。

ははっ。

もちろん仕事なんて入れていない。

何度も言うが僕はミスを繰り返さない男だ。

リアルのアイドルと同じ戦場にバーチャルのアイドルが立つ。

彼女たちの勇姿を間近に観られるのが今からワクワクだ。




あっ。















奥さんにまだ言ってない。

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