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狸寝入りと景気予測

小さい頃、多湖輝の「頭の体操」が好きで、何冊も購入していた。いくつか、お気に入りの問題があった中で、一番のお気に入りはこれだ(手元に現物がないので、だいたいのニュアンスで)。

兄弟のAくんとBくん。いつも一緒にお昼寝をするが、弟のBくんは、ときどき狸寝入りをすることがある。外から見たら寝てるのか、起きているのかわからないはずなのに、兄のAくんは「今、狸寝入りをしてるだろ」と、100%見破ってくる。もちろん、Aくんに特殊な能力があるわけでもない。なぜ、AくんはBくんの狸寝入りを見破ることができるのか?

以前、取引先の社長の車で一緒に行動する機会が頻繁にあったが、高速を利用すると必ず話題になることがあった。それは、高速を利用するトラック等の多寡に関して。経験則として、トラフィックが多ければ景気がいい、もしくは良くなる傾向があり、少ないとその逆の傾向があるんだという。「トラックが多いな、景気も良くなりつつあるのかなぁ」といった具合である。

それから数日後、たとえば会議等で景気の話題になる。どうも、世の中景気が回復しつつある、みたいな話になった際に、その社長は「やっぱりそうか。あの時点で言ってたろ。景気が良くなりつつあるって…」という流れになる。すげー、確かに、言ってたわ、この人。

景気が良くなる話も、悪くなる話も、こんなことが数回起きると、彼への評価は高まっていく。マーケットにおけるアドバンテージを取るためには、景気のトレンドを正確に読む力は貴重だ。

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でも、あるときに気付いた。

そもそも、この彼の予想の検証って、誰かしてるのか?

確かに、良くも悪くも変化があったときには上記のような話になるのだが、よくよく考えたら、<「良くなってる」と言ってて変わっていないとき>、<「悪くなる」と言っていて変わっていないとき>もあるはずだ。でも、このような場合、会議では話題にならないわけで、結果的に、トラフィックの話も出てくることはない。だからその予想が外れたところで、いちいち覚えていないし、責められることもない。「あぁ言っていたけど、全然景気かわらないじゃん」と指摘されることもない。

ここにおいてスゴイことは、彼は上記のようなことを計算をして言い続けているわけではない、ということだ。ただ、言い続けているだけだ、高速を乗る度に。その言い続けていることを勝手に解釈をして、勝手に価値を作り出しているのは、周囲の私のような第三者なのだ。

ひたすら言い続ける、行い続けるという行動と、その行動を解釈し、価値を見出してくれる第三者。継続は力なり、っていうけど、それは本人の精神力を鍛えるとか、そういうストイックなことだけじゃなくて、継続すれば、誰かが違う価値を見出してくれる可能性がある、ってことも含まれているのかもしれない。

さて、冒頭のクイズの答はこれでわかりますよね。

言い続けることです。

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