タイカレー
スープレシピの本を見ていたとき、ふとタイカレーに目が止まった。こんなん作れたらオシャレじゃん、そういう軽い気持ちで、作ってみようと思い立った。
しかし、材料からしてちょっと特殊だ。まず「ナンプラー」が粉末なのか液体なのかも分からず検索したし、「ココナッツミルク」なんてどこに売ってるの、「カレー粉」と「カレールー」は何が違うの・・・。まるで、タイに嫁いでいきなりタイカレー作りを命じられた外国人妻状態である。
輸入食品の店も回り、ようやく調味料が揃った。具材のほうは、パプリカが半個余ってるし、シシトウは商店街で一袋76円で買えた。鶏肉も買った。
さて、調理開始である。気分を上げようと、最近はまっている無印良品BGM(プエルトリコ編)を流して始めた。プエルトリコの民族音楽を聞きながら、タイカレーを作るというカオス。しかし、鶏肉にカレー粉をまぶして炒め始めると全く聞こえなかったので、すぐに止めた。
調理は至って簡単だった。材料を揃える方がよっぽど難しかった。ぐつぐつ煮込んでいる間、鼻歌を歌いながら調理器具を洗う余裕さえあった。
数分後、さてできたかな、と鍋を覗き込んだ瞬間、鼻腔が「なんじゃあこりゃあ!?」と反応した。匂いが異国すぎてまず鼻が戸惑う。脳まで伝達できない。
とりあえず蓋をして、一旦落ち着こうと台所を出た。一時間のインターバルである。
ところが、よほど鼻がパニックを起こしたのか、謎の吐き気を催してしまった。なんだか軽く目眩すらする。気のせい気のせい、と思い、動画を見たりして気を紛らわせた。
いよいよ一時間が経過し、魔の夕食時間となった。どきどきしながらカレーを温めなおし、深皿に盛る。無意識に息を止めていた。
とはいえ、味はどうだか分からない。匂いと味への印象は、必ずしも一致しない。納豆の匂いは無理だけど味は好き、というのと同じである。
恐る恐る一口すすってみた。そこから、まこと不思議な時間が始まったのだ。
「あ、美味しいじゃん」と思う瞬間もあれば、テレビに集中するふりをして味覚への意識を遠ざける瞬間もあり、かと思えば「これ意外に癖になるかもな」という瞬間を経て、最終的には「うん、やっぱり無理だ。」という結論に至った。
一緒に煮込んだ具材は美味しかったので、それだけ食べてあとは流しに捨ててしまった。
あと2杯分は鍋に残っている。今日捨てるのは忍びない・・・。明日考えよう。
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