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宇宙飛行士 with HRテック -NASAの人材マッチングに関する取り組み-


NASAの人材マッチング

NASAというとその中身はミステリアスで、なんだか非常に合理的かつ機械的なイメージを勝手に持っている。

そんな中、下記のようなNASAの人材マッチングに関する取り組みの英語記事を拝見したが、非常に興味深かったのでご紹介させてください。

アポロ計画で人類が月面着陸して40年経つが、現在米国政府の宇宙探査機関は、この10年以内に火星まで人間を有人飛行させる準備をしている。

そのミッションに対して、NASAは最初に「技術ランクを整理し、各スタッフが持っているスキルを評価する」取り組みに挑戦しなければいけなかった。

…というのも、過去やり切れたアポロ計画のときのように、人間を大気圏外に送り出し、天体の表面に着陸させて、再び家に持ち帰るノウハウを持っているスタッフがまだいるのか?…というようなこともよくわかってない状態だったそう。うーむ、日本の大企業に通ずる部分がある。

なので、まずは「そういったスキルを持つメンバーをNASA内外含めて再発見する」ところから実施しないといけなかったり、そもそもスキルを持った人たちが見つからなかった場合、そのスキルを持った人間を育成するために、専門性のある誰かを雇ったり訓練したりする必要に迫られた。

重要ポジションに座っていた人がいきなり大量離脱して、引き継ぎを受けず、後に残されたメンバー」が抱える苦悩に近いかもしれない。

そんなカオスな状態だった2019年、データサイエンティストDavid Meza氏は、ヒューストンの自宅からワシントンD.C.に引っ越し、NASAが従業員の中に隠れているスキルと才能をマッピングした。
…文章にするとちゃちゃっとやってしまったみたいで簡潔だが、きっとおそろしいくらいに膨大な作業量だったことには違いない。
このあたり記事にはなかったが、非常に興味深い部分なんだけどな。。

そして、各プロジェクトリーダーは、このマッピングDBを使用してチームにスタッフを配置したり、メンバー側も「誰がどのスキルを持っているか」確認するためデータベースにアクセス可能で、プロジェクトリーダーと従業員がお互いを見つけるために使用したりしているそうだ。
スキルや専門の多様性が半端なさそうで、タレマネシステムが活きそうな現場であることは間違いない。※NASA内ではこのシステムを「タレントマーケットプレイス」と呼んでいるとのこと。

このあたりも記事になくて経緯不明だが、MEZA氏は18,000人のNASA従業員全員を含む政府のデータベースを使用していたが、やがてボーイングやロッキードマーティンなど別企業で働く5万人余りの請負業者からもデータを取りこんでいきたいと考えたらしい。発想の原点が違う。アルゴリズムの精度向上のためだろうか。。

そして、MEZA氏、実際に他社のデータ取り込みを実現していきます。
なかなかの行動派ですが、このマッチングプロジェクトは、もはやNASAだけで完結しないHRプロジェクトになっていった。

NASAというとお固いイメージだが「使う人がワクワクする」目線の設計が面白い

今回特に取り上げたい点として、非常に興味深いこのマッチングプロジェクトの設計についてである。

私たちの主な課題の1つは、従業員の生涯の履歴を尋ねることによって、従業員に過度の負担をかけることなく、従業員に関するこの情報をどのように引き出すかを理解することでした。

MEZA氏いわく、プログラムでさまざまな類似性アルゴリズムを実行して、現在の「個人に関する入力情報」と「特定の仕事の役割」とを比較し、現在の役割が他の役割と「どの程度類似しているか」を調査して、レベル設定を開始し、良好な類似性に到達していることを確認しながら最終アルゴリズムを調整したとのことだが「従業員に過度の負担をかけることなく」日常業務で活用できるようにした点が特におもしろいと感じる。

インターフェイスの観点からは、誰かが質問するだけのテキスト読み上げ機能や、UIに組み込まれたRPA(ロボット処理自動化またはチャットボット)が音声に応答できるだけでなく、テキストから暗号への機能も検討しているとのこと。セキュリティの観点だと思われる。

ユーザーに要求された情報だけでなく、それに関連する可能性のある情報も取得する。

たとえば、開発者を探している場合、「開発者」という言葉にはさまざまなラベルが関連付けられている。ソフトウェア開発者、Web開発者、データベース開発者などだが「さて、あなたは開発者と言いましたが、ここにいくつかの異なるオプションがあります。本当にどちらを意味しますか?」といった、リクエストを微調整して、ユーザーが検索を絞り込めるようにすることができる仕様とのこと。

こういったように、なるべく検索が楽になる仕組みからまずはUXとして磨いていったそうだ。

まず、NASAのスタッフは、機会、必要なスキル、プロジェクトの期間、達成したいことに関する詳細を記入する。
その後、従業員はログオン、閲覧、さまざまな機会の申請を行うことができる。

次のステップとして、従業員が持っている知識とスキルを入力できる。

LinkedInタイプのプロファイルを作成し、雇用主はプロジェクトに必要な知識とスキルを持った人を探し始めることができ、一致する従業員がポップアップする。

第2に、従業員は自分のスキルに合った仕事の詳細や機会を探すことができ、バックエンドでは、グラフデータベースがそのマッチングを行う。

現在、このモデルは非常に一般的な職業と職務のデータに加えて、知識、スキル、能力、タスク、特性、および機能横断的なスキルを含む要素に基づいていて、これらから探索している従業員にマッチする人を推測する仕組みになっている。

…実際に見たわけではないので、ただの妄想になるが、ここまで各自のデータが分析して表示されてくると「おそらく検索してるだけでも楽しいUX」となっている気がしていて、この「入力の楽しさ」はこれからのHRテックにおいてめちゃ重要なポイントだと個人的に思っている。

まだこれからだというが、このプロジェクトでは「従業員が機会を探すときにプロファイルを作成して、組織内に何があるかを理解するのに役立てるため、ゲーミフィケーションやバッジなど、そのプロセスをスピードアップして、プロフィールに記入するのを面白くて楽しいものにする方法を検討しています。」とMEZA氏は話すが、先述の「検索の仕組み」然り、「使う人目線」でのHRプロジェクトの成果が、企業のHRテック活用にもより良い形で取り込まれる未来が訪れるだろう。

軍事・宇宙開発など最先端の現場での事例が、企業利用される流れは今後もあるかと思うが、プロジェクトで開発されたアルゴリズム基盤が一般化していくことで、「その人にあった仕事(あくまで感情を別にした『適正』の話だが)」を科学的に、定量的に何%マッチしているかなんて表すこともできるだろう。

未来の労働者たちは「信長の野望」のような五角形や特技で完全スコアリングされる未来がやってくるかもしれない。

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ここまでいくと、楽しさと管理の瀬戸際の境界線が非常に曖昧になってくるが、我々の仕事はそういった領域に突入しようとしていることを、NASAが先陣切って教えてくれたような気がしています。

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