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槇原敬之の季節表現

以前にマッキーの歌詞のすごいところをまとめて紹介してたのですが、唐突に気が向いたので第二回。

「桃」のよさを語っていた割に相変わらず「君」を抱き上げることもできない自分に落胆しているうちに時間ばかりが過ぎていきますが、今回のテーマは「季節」。

マッキーの数多ある楽曲はジャンルもテーマもテイストも多彩ゆえに、「春うた夏うた」「秋うた冬うた」という季節分類のベストアルバムが出てしまうほど。

ですが今回は季節ごとの代表作の紹介ではなく、マッキーの歌詞の中に登場する特徴的な「季節の表現」を紹介したいと思います。

まずはこの曲。


冬がはじまるよ

ふーゆーがーはーじまるよー♪でおなじみ、冬の名曲。
ところがこの曲。意外な出だしで始まります。

8月の君の誕生日
半袖と長袖のシャツをプレゼントしたのは
今年の冬もそれからもずっと 僕らが
一緒に過ごせるためのおまじない

「冬がはじまるよ」なのにいきなり8月の誕生日の話。
半袖と長袖のシャツをプレゼントすることで、次の冬もその次の夏も一緒にいよう、という気持ちを込めているわけですが、たったこれだけのワードで二人のこれまでとこれからという一年余の時間軸を描き出すのがすごい。

冒頭こそすごい切り口だけど、基本的には冬のうた。


では次は四季全てを使ったパターンをご紹介。


ANSWER

槇原敬之のセカンドシングル。
なかなか会えない遠距離恋愛の二人の切なさを歌った曲ですが、これも出だしがスゴい。

あの日地下鉄の改札で
急に咳が出て
涙にじんで
止まらなくなった
君と過ごしてた さっきまで
嘘みたいだね もう帰る時間だよ

咳と涙、二人の間に流れる言葉にならない空気、切なさ、感情がカタチになって現れてる気がします。

そんな歌の後半、Cメロで季節を通して日々を歌う歌詞が登場します。

春の強い風も 夏の暑さも
秋のさみしさも 冬の寒さも
二人でなら 歩いていけるさ

春夏秋冬のそれぞれの厳しさを、一緒なら乗り越えていけるよねという二人の愛を確認するようなこのフレーズ。注目は秋。
風、暑さ、寒さに対して、秋だけは「さみしさ」。
夏が終わって徐々に肌寒くなり、木々も葉を散らし始めるあの季節特有のえも言われぬ物悲しさ。それをバシッとワンフレーズで切り取って、自然現象と並べて揃える手腕が素晴らしい!
何の違和感もなく、季節の移り変わりの情景が浮かびます。

出だしと最後のフレーズの対比も注目!

最初期の楽曲は失恋や悲恋のテーマも多く、人を愛したいけれど難しいのだという悩みや葛藤が描かれることが多かったのですが、これが最近の曲になるとかなり雰囲気が変わってきます。

というわけで、四季を並べた曲をもう一つ。


二つのハート

二人でいる時間も随分長くなり、それが当たり前だと感じてしまう自分に思わず反省したりする僕。
「君がいるから僕の人生は予定よりも楽しくなった」と言いながら、四つの季節を通して二人の幸せを振り返ります。

ホースの水を追いかける
犬を見て笑った夏
部屋の窓を全部開けて
風を入れる穏やかな秋
競うようにお互いの
プレゼント探した冬
花びらがパーカーのフードから
こぼれ落ちてきて笑った春

二人でいるからこそ
何気ない場面もこんな風に
輝いて見えるんだね

この日常感の切り取りこそマッキーの真骨頂。
特にまた秋ですが、何気ないにもほどがある!
ただ部屋の窓を開けていた、というだけのシーンなのに、爽やかで気持ちのいい秋の風が二人の間を吹き抜けていく穏やかな様子が目に浮かびます。
このミニマムさで空間と時間を味わいとともにぎゅぎゅっと収めてしまう作詞能力は本当にすごい。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm20473289
※Youtubeになかったのでニコニコにリンク。

先のANSWERと比較すると、愛というものに対する意気込みの違いというか、受け止める姿勢が全然違っている感じがします。
初期楽曲は若さゆえの骨張った、ある種青臭いとも言えそうな気負いのようなものが感じられる一方、最近の楽曲は「まあまあ焦らずお互い頑張ろうや」ぐらいの余裕というかゆとりのようなものが感じられるというか。
春のシーンの、些細なんだけれど二人だからこそ笑いがこぼれる、そんなささやかな幸せからもそれが垣間見えますね。

この辺りのマッキー自身の成熟度合いや、愛というものに対するスタンスの変化も、最新アルバムに溢れる円熟味の理由の一つなのかなと思います。


…というわけで、「ANSWER」と「二つのハート」における季節表現の変化度合いを紹介したかった今回の投稿でした。

もちろん、四季をひっくるめてではなく、それぞれの季節をテーマにした名曲もたくさんございます!
せっかくなので各季節からオススメを選抜してみました。

◆春
・LOVE LETTER
卒業後、遠くへと行ってしまう君に想いを伝えられず、ラブレターを手渡せない僕の切なさよ!

http://dai.ly/x319577
※DailyMotion(歌詞付き)

◆夏
・雷が鳴る前に
どしゃ降りの公衆電話で君に想いを伝える僕。次の雷が鳴るのと、勇気を振り絞るのとどちらが先か…。

http://dai.ly/x30lam1
※DailyMotion(歌詞付き)

◆秋
・Which Hazel
夏か秋か怪しいところですが、夏終わってるはずなので秋の歌で。
夏と一緒に終わるとわかっていた恋を切なく思い返す僕。
夏と秋という季節の挟間の落ち着かなさ感、妙な肌寒さ感がスゴい。

http://dai.ly/x31s2wj
※DailyMotion(歌詞付き)

◆冬
・今年の冬
「今年の冬も僕には君がゆっくり積もる」「自慢できることといえばポケットを君にぴったりの手袋に変えれることくらい」という名歌詞!


このあたりもやり出したらキリがないので、関連曲から諸々チェックしてみてくださいませ!

とか言ってる間に夏も終わりそう。
後から思い返してこんな風に情景を並べられるように、日々を過ごさないといけませんね。

前回リストアップした分はまだまだ全然消化できてないので追々更新していきたいと思います。

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