BOOWYにまつわる噂のエトセトラ Vol.19-② ~ 「1224」と幻の41秒② ~
(注)先にVol.19-①をご覧になってからお読みください。
【「1224」が辿った歴史】
では、「『1224』の41秒間の欠損は意図的に行われたという説」が生まれた背景についての私見を述べる前に、まず「1224」という作品が辿った歴史を振り返ってみたい。
【30周年アニバーサリー】
私にとって映像作品「1224」は不朽の名作である。
この映像を観る私たちは、この日、何が起きたかを既に知っている。知っていて「それ」を観ている。
鬼気迫る氷室氏――明らかに尋常ではないその姿と恐ろしいほどの緊張感に包まれているステージ。
全てがギリギリの状態。それ以上でもそれ以下でも破綻しかねない瀬戸際で成立している“カッコ良さ”。
少しでも気を抜いたらその瞬間に全てが崩壊してしまいそうな空気感に胸が締め付けられながらも、バンドが刻一刻と死んでいく様から目を逸らせない。
ライブ作品として、それ以上にドキュメンタリー作品として、この作品は素晴らしいと思う。
たとえ映像に41秒の欠損部分があっても、この作品の凄味は損なわれることがなかった。(個人的には後に発売された完全盤より、ドキュメンタリー色の強い欠損版の方が好み)
現在のようにネットでファンの反応がダイレクトに発信されるような時代性ではなかったことから、2001年の発売当時の状況はあくまでも想像でしかないが、欠損を残念に思っても、作品そのものに対して文句を言う人は少なかったのではないだろうか。フィルムの管理方法等々にはもの申す人はいても。
その風向きが変わったのは、2013年の「BOOWY 1224 FILM THE MOVIE 2013」の公開が決まった頃。もっと正確に言うなら、その前の「BOOWY BLU-RAY COMPLETE」が全てのケチのつき始めだと私は考えている。もっともそれは、それまでの所謂「BOOWY商法」に対する反発が下地にあってこそ。
- 『BOOWY BLU-RAY COMPLETE』 -
2012年12月24日にリリースされた「BOOWY BLU-RAY COMPLETE」は、それまで未発表だった「GIGS at BUDOKAN BEAT EMOTION ROCK'N ROLL CIRCUS TOUR(1986年12月10日武道館)」の完全版映像・音源を含む6枚組Blu-rayボックスである。
この前振りとして、2012年9月28日付上毛新聞(メンバー3人の故郷である群馬県の地方新聞)に全面広告が掲載されている。
「BOOWY 30th ANNIVERSARY 20121224」との文字だけ書かれたこの広告は、BOOWYファン界隈で色々な憶測が飛び交うちょっとした騒ぎになった。
その前年の2011年6月に、氷室氏は全曲BOOWY楽曲で構成した「東日本大震災復興支援チャリティライブ KYOSUKE HIMURO GIG at TOKYO DOME "We Are Down But Never Give Up!!"」を開催していた。そして同年9月、その収益金(コンサートグッズ販売利益含む)669,220,940円は被災地に全額寄付され(※14)、翌2012年3月にはそのライブのDVD販売収益金159,642,481 円も全額寄付された。(※15)
氷室氏によるこのチャリティライブ開催のニュースが流れた時、布袋氏が「「BOOWYの再結成を望む気持ちは皆さんと同じでした。」「大震災直後、被災地の皆さん、そして復興に向け力合わせる多くの皆さんに自分の持つ力を最大限に発揮し貢献できるとしたらそれはBOOWYの再結成しかない、と考えましたが残念ながらそれは叶いませんでした。」と、布袋氏が(自らは何も動かず自分の頭の中だけで)再結成を望んだものの叶わなかった気持ちを(氷室氏に直接伝えるのではなくブログで不特定多数の「皆さん」へ向けて)表明していた(※16)ということもあって、この全面広告が掲載された際も、荒唐無稽な夢想を語るBOOWYファンを何人もお見かけした。(注:東日本大震災の時に布袋氏が氷室氏へ再結成を働きかけたが氷室氏が断ったと言っている方がよくいらっしゃるが、布袋氏は2016年のインタビューで、これまで氷室氏へ再結成したいと直接言ったことはないと明らかにしている。実際、2014年の氷室氏の卒業宣言後に布袋氏が放った言葉も「(「隣でギターを弾きたい」という)僕の気持ちを汲んでください」「(氷室氏から)オファーが来れば断る理由がない」であり、常に氷室氏からの声掛け待ちの姿勢である。)
で、そんな風に一部BOOWY界隈がざわつく中、BOOWYの30周年記念BOX「BOOWY BLU-RAY COMPLETE」及びアルバム12作品が12月24日にリリースされるというニュースが流れた。
布袋氏の24回目のソロデビュー日の前日である2012年10月4日のことである。(ちなみに、翌日の布袋氏のソロデビュー日には、布袋氏がTwitterで「渡英前のLAST GIGS」と称してチケットを宣伝していた武道館公演の映像化「COMPLETE LIVE BOX『GUITAR × SYMPHONY』」とニューシングルが12月5日に発売されることが発表された。また発売日の12月5日には、「BOOWY 30th Anniversaryパネル・ギャラリー」が12月17日から開催されることが発表されている。このように2012年以降は、BOOWY関連のニュースと布袋氏関連のニュースが流れるタイミングがほぼ一緒であることが多い。)
2012年の時点でBOOWYはデビュー30周年。いくら解散後にファンになった人が多いとはいえ、ファンは大概年季が入っている人ばかり。
そんなBOOWYを偏愛するファンに向けて、あちらこちらで手を変え品を変え、豪華特典(笑)も付けて、ちょっとしたバージョン違いを売る(再発する)という所謂BOOWY商法が横行していた。
そんなわけで、この未発表映像を含むBD-BOX発売を喜んだファンは勿論多かったろうが、BOOWY商法に辟易していたファンからはネガティブな意見も聞かれた。
一例を挙げよう。
個人的には、レコードからCDへ、ビデオ・LDからDVDへ、DVDからBDへと記録媒体が変わっていったこと、それによって収録時間が長くなったり、画質・音質が向上したりということもあったので、再発自体を責めるべきではないと思っている。むしろ出してほしい。出してくれるだけ有り難い。(氷室氏なんかEMI時代の作品はDVD化だけでBD化してくれないんだぞー!!)
買うか買わないかはファンの側が決めるし、自分がいらなくても欲しい人がいるかもしれない。出された商品が嫌ならファンが買わなければ良いだけ。但し、プロモーション手法や宣伝文句については、それはもう言いたいことがたくさんあるが。普通でいいいのよ。普通で。普通に出してくれ。
このBD-BOXについて、私自身は「BD化ならどうせ全部買ってしまうだろうし、BOXでもまぁいいか。単価が高いといってもそれぞればら売りされて買うよりは安い。でも箱のサイズが大きすぎて収納場所に困るなぁ」程度だった。
だが、熱心なBOOWYファン、BOOWYマニアな方々というのは、BOOWY人気絶頂期の時代性もあってか横行していたブートレグに至るまで収集する方もそれなりにいらっしゃるようで……。そういったコレクター的な方々は、「録られているのに発売されていないもの」の存在をよくご存じ。
そういった方々から「観たいのはこれじゃない」「他にももっとあるはずだろ」「全部蔵出ししろ」等々のご意見ご要望が出るのは、ある程度仕方がないことなのかもしれない。
とは言うものの、文句や不満を言いつつも最終的には何でも買ってしまう方が多いからこそ(ネタ不足で目新しいモノが発売されなくなって、流石に年々売上は落ちているが。)、所謂BOOWY商法が成り立ってしまっているわけで。この時も何やかんや言いつつ買った人はそこそこいたのではないか。
そうしてDISC4に収録されている「1224」を見て、エラーに気付いた。
内容は「1224」のはずなのに、メニュー画面が「LAST GIGS」と表示されるエラーを。
「1224」自体は未発表でも何でもなく、元々DVD・VHSで発売されていた映像のBD化だった。有り物にBOX仕様のメニューを付け替えただけのもの(実際には他にも色々作業はあるのだろうが)。
ミスとしては決して珍しいものではないが、ミスの内容とタイミングはあまりよろしくなかった。
ファンはBOOWYというバンドを愛してはいるが、公式については別に愛してはいないのだ。単に、BOOWYに対して愛情と誠意ある仕事をしてさえくれれば、信頼するし、敬意を払うだけで。公式を信頼するかどうかは、BOOWYというバンドへのリスペクトが制作陣の仕事ぶりにどれだけ反映されているかにかかっている。
BOOWY商法は、ファンのBOOWYへの愛(妄執と言うべきか)で成り立っている。だから「また同じようなものを……!!」と思ってはいても、足元を見られていると感じてはいても、最終的には買ってしまったりする。そんな自身を「養分」と自虐することもある。BOOWY商法にお付き合いすることを「お布施」と称したりもする。だけど、自身を「いいカモ」と自認し「養分」と自嘲しても、他人から、特にBOOWY商法の大本営である公式から「いいカモ」扱いされているように感じたら、やはり面白くはない。
元々この商法に辟易している中で、きちんとチェックさえしていれば恐らく防げたようなミスを、有り物のBD化作品でやられてしまうと、「ファンからお手軽に集金するためだけに出したやっつけ仕事ではないの?」との疑念が生じるようになる。少なくとも、いい気分ではない。
思わせぶりな広告で期待を高めておいていたからこそ、余計にアラが目立つ、というか作品に対するガッカリ感が倍増する。
このエラー報告を受けて、公式はエラーディスクを交換する対応を取った。
対応としては極めて普通。対応が格別悪かったというわけではない。(良くもなかったが)
メンバーの高橋氏もTwitterで謝罪していたが、残念ながらファンの不満解消にはあまり役に立っていなかったようだった。
とはいえ、BOOWYファンは気が短くてすぐ文句を言うが、諦めは悪い人も多いので、不平不満を漏らしつつ毎回律儀に買ってしまう方も少なくないのだけれども。(笑)
- 『BOOWY 1224 FILM THE MOVIE 2013』 -
このBD-BOX発売から約1か月後、ライブシネマ「BOOWY 1224 FILM THE MOVIE 2013」がBOOWYのデビュー日に合わせて全国で限定公開されるとのニュースが流れた。2013年1月25日のことである。
さらに初回限定で、2枚組サウンドトラック付きのオリジナルデザインチケット(定価4,200円)が発売されることも発表された。
定価4,200円というのは、映画チケットまたはCD単体として考えるなら高いが、CDとチケットの合計料金と考えると決して高くない。それでもグチグチ言っていた人はいたけれども。確かに家族で観に行くつもりなら、一家に何枚も同じCDはいらないので、気持ちはわからなくはない。
とはいえ、折角の30周年アニバーサリー・イヤー。
「既に2001年に映画として公開されているものを、いくらアニバーサリーとはいえ、何故このタイミングで再び上映するのだろう?」と不思議に思いつつも、私もいそいそと予約申込初日に初回限定チケットを申し込んだ。
- 真のCOMPLETE MOVIE疑惑 -
2013年2月3日。
ワーナー・マイカル・シネマズ・ユーカリが丘(当時)が、ライブシネマ『1224』について以下のような告知文をホームページ上に掲載したという。
私はこの情報を、これに怒ったBOOWYファンのツイートで知った。
残念ながら、私がこの映画館のサイトを閲覧しに行った時には、「一部記載を訂正致します」と既に当該文章は削除された後であった。
この告知文は、翌4日には早々に消されていたそうだ。
だが、複数のBOOWYファンが同内容を証言していたことから、この文章は実際に掲載されたものと考えて、以下進めていく。
通常であれば、欠損部分の映像が見つかって完全版が公開されることは非常に喜ばしいことだ。しかしながら、この時ファンは怒った。何故か。
たった1か月ちょっと前、2012年12月24日に発売されたBD-BOXに収録されていた「1224」は欠損版だったから。しかもそのBD-BOXは、既発映像と未発表映像の抱き合わせボックス。
いくら「今年発見」と言っても、たった1か月で倉庫から発見されて関係者が映像を確認し、完全版を映画として3月から上映開始することを決定……って絶対に不可能とは言わないが、限りなく難しい。抱き合わせボックス発売時には幻の41秒の映像が実在することがわかっていたのでは?わかっていたのにもかかわらず欠損版を収録して出したのでは?と疑いの目が向けられるのは必然。もしそうなら、ファンを馬鹿にしているにも程がある。ましてBD-BOXにはエラーもあって、公式の仕事ぶりへの信頼性が揺らいだばかりの頃の出来事だ。せめてもう少し間が空いていればね……。
映画館の告知文が果たして本当に誤情報だったのか。それを証明することは私にはできない。が、個人的には、この時点では欠損部分が復元されたフィルムは見つかっていたのではないかと考えている。
バイトテロ的なタチの悪い悪戯とか、映画館の中の人が熱狂的BOOWYファンで映画公開に興奮してつい自分の妄想を文章にしてそれをうっかりサイトに掲載してしまったとか、私が見た「証言していたBOOWYファン」が全員示し合わせて捏造を仕掛けたという可能性も全くないとはいえないかもしれない。だがそれよりは、情報解禁前に誤って1館だけフライング発表してしまったと考える方が、私には腑に落ちるわけで。掲載内容が間違っていたのではなく、掲載時期を間違えたのではないかと。
その情報に怒るファンの反応を見てBD-BOXと同様の欠損版で公開し、ほとぼりが冷めた頃に完全盤をリリースしたのではないかと疑っている。
とは言っても、所詮は私の憶測。ただの妄想だと言われればそれまで。
仮にこの時点で「幻の41秒」の映像が存在していたとしても、関係者は決して認めることはないだろう。誰かさんの言葉ではないが、文字通り「墓場まで持っていく」案件。逆に本当に存在していなかったとしても、ないと証明するのは非常に困難なこと。所謂悪魔の証明。
どちらも確たる証拠があるわけではない。故に、この件についてはずっと疑惑のままだろう。
- 25年ぶりのオフィシャルグッズ -
ライブシネマ「BOOWY 1224 FILM THE MOVIE 2013」に関しては、BOOWYファンが公式に苦言を呈していたことがまだある。
一つは、グッズについて。
2013年の映画上映に際して、映画館では「25年ぶりのオフィシャルグッズ」が販売され、後には通信販売もされた。
そのニュースは、こう結ばれていた。
もう一度言おう。
BOOWYのファンは大概年季が入っている。
2001年に上映された映画「1224 Film」をわざわざ会場へ足を運んで観に行ったファンも決して少なくはない。さらに、BOOWYモノならとりあえず何でも手を出すコレクターもいれば、惰性で今まで買い続けてきてしまったファンもいる。
そういったファンが口を揃えて言っていたこと。
「嘘つけ。2001年の映画『1224 Film』の上映の時もグッズ販売していたじゃないか」
これで余計に「これだからBOOWY商法は……!!」みたいな怒りの声やら呆れの声がBOOWYファンから上がっていたのだが、これに限って言えば、恐らく公式は嘘をついてはいない。
2001年の映画『1224 Film』のフライヤーの裏面をご覧いただきたい。
こちらには『1224 Film』のグッズ一覧が掲載されており、一見オフィシャルグッズかのようだが、表記は「BOOWY 1224 FILM Limited Edition Original Goods」。
こちらに記載されているURLのドメイン名は“halebopp.co.jp”。
この会社名をちょっと検索してみたところ、BOOWY関連でヒットしたのは布袋氏のグッズの数々。検索結果に示されたグッズの写真を拡大して目に映ったのは「(C)IRc2 CORPORATION LICENSEE:HALE BOPP」の文字。
膨大な数であったため、ほんの数件しか確認していないが、少なくとも1999年~2003年頃の布袋氏のツアーグッズにはいずれも上記の会社名のライセンシー表記がある。つまり、この会社は、映画公開時に布袋氏の事務所から許諾を受けて布袋氏のオフィシャルグッズを製作販売していた会社。
ここでこの映画『1224 Film』のスタッフクレジットを思い出して頂きたい。
「Produced by 」が糟谷氏
「Co-Produced by」 が布袋氏と松井氏の所属事務所(糟谷氏が代表取締役)
「Presented by 」が高橋氏の所属事務所(土屋氏が代表取締役)とBOOWYが所属していた事務所
原盤権表示(P) がBOOWYが所属していた事務所
で、映画『1224 Film』の限定オリジナルグッズ販売が布袋氏のオフィシャルグッズを制作販売していた会社だ、と。(松井氏のグッズ製作会社かどうかまでは存じ上げません。)
あーそういう……。
URLのディレクトリがグッズではなくて、マーチャンダイジングなところも色々考えさせられる。
ちなみに、2001年にリリースされた「1224」DVDに掲載されていた「BOOWY結成20周年プロジェクト『21st Century 20th Anniversary BOOWY PROJECT UNIT』」におけるスタッフクレジットはこちら
どうして映画『1224 Film』のスタッフだけああなったのか事情も何も存じ上げない。ただ、2013年に公開された映画「ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD1987」(1987年に熊本で行われたイベントの模様を映画化したもの)においても、エンドロールでクレジットされていた同映画のプロデューサー名は、
糟谷銑司
春名源基
福田信
村田積治
2013年の「ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD1987」では、プロデューサー4人のうち1人が糟谷氏だとされていた。
一方で、2007年に発売された「"GIGS" BOX」のDISK4(同イベントでのBOOWY出演部分の映像化)のエンドロールにクレジットされていたプロデューサーは、
GENKI HARUNA
MAKOTO FUKUDA
SEKIJI MURATA
YUTAKA GOTO
「"GIGS" BOX」内の「BEAT CHILD」の映像については、糟谷氏ではなくユイの後藤氏がプロデューサーとされていたので、BOOWY版権の映画化のプロデュースに際して、ユイと糟谷氏の間で何かしらの取り決めがあるのかな?と想像してみる。そうだったとしても「Co-Produced by」までもが糟谷氏が作った布袋氏と松井氏の所属事務所になった理由はちょっとわからないが。
だって糟谷氏は、解散直後に「1224」が映像化されなかった理由で、独立して新事務所を立ち上げたので、BOOWYのプロデューサーであったものの、自分と布袋氏には何の決定権もなかったようなことを言っているから。
とはいえ、映画の制作陣が「ああ」であったから、映画『1224 Film』のグッズは、「メンバー4人の了承のもと、BOOWYの版権管理者であるユイミュージックが制作販売したグッズ」ではなかった。そのために、2013年の「BOOWY 1224 FILM THE MOVIE 2013」のグッズについて、あのような注意書きとなったのだろう。
例えユイミュージックの制作販売ではないとしても、BOOWYの商標権を保持しているのはユイであり、この映画が元BOOWYプロデューサーかつ布袋氏・松井氏の事務所社長と、当該事務所によるプロデュースであることを考えると、公認はしているのではないか。缶バッジセットやストラップに商標を使用しているし、Tシャツは当時の復刻版とのことなので、流石に勝手に作れまい。下世話な話をすれば 「1224Film」や「Limited Edition Original Goods」の利益配分はどうなっているのか気になる(笑)。
4人の了承は……この映画の制作陣的に布袋氏と松井氏は承知していないという主張は通るまいし(もし知らないのであれば所属事務所内部の問題でしかない)、「Presented by 」が高橋氏の所属事務所であるGYMであることから、高橋氏の了承もあったと拡大解釈してもいいかもしれない。だが、映画『1224 Film』のパンフレットにあるスタッフクレジットには、BEATNIX(氷室氏の所属事務所)の記載がない。
……え。まさか氷室氏は蚊帳の外?!
というのは冗談として。(笑)
映画「1224 Film」のパンフレットには氷室氏の事務所関連の記載は一切ないが、DVD「1224」のクレジットには、「ARTIST PRODUCTION」の欄に、他の3人のメンバーの所属事務所と並んで氷室氏の所属事務所の記載がある。(と言っても氷室氏の事務所の名があるのはそこだけ)
スタッフクレジットには、BOOWYのマネージャーから氷室氏のマネージャーになった土屋氏やユイで氷室氏を担当していたスタッフの名前も見受けられる。
この時ではないが、2007年のBOOWYモノのリリースラッシュの時に、「前の事務所(ユイ)から『確認してくれ』とBOOWYの素材を渡された」という発言もあるので、そういったことも考え合わせると、いくらユイから独立したとはいえ、氷室氏の了承を得ずに「1224」を勝手にリリースしたという訳ではないだろう。
少なくとも本人にDVDを出す話は通っていると思われる。
ただ、BOOWYのローディーからスタッフになった2人のうち、布袋氏のマネージャーとなったワンワン氏(MITSUNOBU SEKIGUCHI(IRc2 CORPORATION))はBOOWYプロジェクトのプロデューサーに名を連ねているが、氷室氏のマネージャーとなったゾンビ氏は、そちらには名前はない。(DR.FEELMAN'S PSYCOPATHIC HEARTS CLUB BAND TOUR FINALのツアースタッフの方に名前が書かれているのみ)
なので、氷室氏サイドは以前御本人が仰っていたように「BOOWYが解散した後に出たものはノータッチ。そんな過去のことにいちいち口を出すのも面倒くさい」ということで、こういったプロジェクトからは基本的に距離を置いているのではないか?と考えている。でも一切関わらないというわけではなく、旧事務所やマネージャーであった土屋氏からお伺いがあれば許可は出したりチェックしたりはするだろう。
あくまでもスタッフクレジットと氷室氏の過去の発言からの推測となるが。正確なところは契約内容を見ないことにはわからない。
但し「1224」が倉庫から発見された日から発売日までの日数を考えると、完成した映像を発売前にご本人がチェックしてからリリースの許可を出しているかどうかは微妙な気もする。これはメンバー4人とも。
実際、松井氏や布袋氏の自伝には、DVDは事前に手元に届いていたが、一人で映像を観るのが怖くて発売日当日に布袋氏宅で行われたクリスマス・パーティーで一緒に観たという描写がある。(※17)(※18)この時が2人の「1224」初視聴というのであれば、発売日前にはメンバーにDVDは送られていたものの、映像をチェックしてからリリースの許可を出しているわけではないことになろう。
メンバー本人の関与は全員そんな程度で、あとは所属事務所がプロジェクトにどれだけ深く関わるかという感じなのかも。
でも、高橋氏に関してはノリノリで関わっていそうな気も……(笑)。(アニバーサリーイベントにおける出演頻度その他からの推測です。)
映画のグッズの方は……個人的な見解が許されるのであれば、グッズ製作の了承までは氷室氏にもらっていないと考えている。
そもそも氷室氏が権利を持っている話ではないし、布袋氏側がそこまでの配慮をきちんとできたり、筋を通せるような人々であったら、ここまで氷室氏と布袋氏が没交渉にならないと思うので。
もっとも、あくまでも私はそう思うというだけであるし、商標権を保持するユイの許可があればできるのだから、氷室氏の了承を得ようと得まいと法的には何ら問題はないので、誤解なきように。
以前、BOOWYがパチスロになる話でも少し触れたが、コレジャナイ感のBOOWYモノが出る度に、ファンからは「メンバーは許可したのか!」という声が必ず上がる。そういった声を抑えるためにわざわざ「ここで言うオフィシャルグッズとは、メンバー4人の了承のもと、BOOWYの版権管理者であるユイミュージックが制作販売したグッズのことを指します」と断り書きを入れたのだろうが……なまじこの言葉を入れてしまったがために、2001年の映画の時のグッズを覚えているファンからは「公式が嘘を付いた」と益々失望される結果となった。
2001年の映画グッズは、「4人の了承のもとにユイが制作販売したグッズ」ではないので2013年の公式の注意書きは決して嘘ではないのだが、あまり知られていないようだ。もしその辺の経緯やら事情やらを公式が懇切丁寧に説明しようものなら、今度は「2001年の映画グッズはオフィシャルグッズではなくて、プロデュースしていた布袋氏側がメンバーの了承も得ずに作ったグッズなのか!」と批判の矛先が糟谷氏や布袋氏らに向かうことになりかねないので、下手に言い訳もできない。
正に踏んだり蹴ったり。
- 限定サウンドトラック -
2013年3月21日
ライブシネマ「BOOWY 1224 FILM THE MOVIE 2013」の先行上映が始まった。
この日、BOOWY公式サイト(BOOWY 30th ANNIVERSARY OFFICIAL SHOP)にて、映画のサウンドトラックが3,000枚限定のフィルム缶パッケージ(Blu-spec CD2 2枚組・ステッカー付き)で発売することが発表された。
前述の通り、「BOOWY 1224 FILM THE MOVIE 2013」は既にサウンドトラック付きの前売り券が発売されていた。当然、サウンドトラックが欲しいファンはこちらの前売り券を手配済みだった。
が、映画の先行上映開始日、つまりその前売り券が販売終了した直後に、「限定盤」発売のニュースが飛び込んできた。
映画は見に行けないがサウンドトラックが欲しいために前売り券を購入したファンは、怒りを露わにした。
単純に前売り券に付いてくるサウンドトラックを楽しみにしていたファンも、後出しで「限定盤」が発売されると、自分の購入したのは「通常盤」なのかと何となく損した気分になってしまう。
BOOWYアイテムコレクターも、「また同じようなものばかり出して……!!」となる。最終的には限定盤を購入するにしても気分の良いものではない。
エラーディスク、欠損部分が復元された真のCOMPLETE MOVIE疑惑、実は25年振りだったオフィシャルグッズ、限定盤を後出しでリリース……こんなことが続くと、「どんなものを出しても買うと公式はファンを甘く見ているのだろうな」と感じるようになってくる。
「巫山戯るな!」「もうこれ以上付き合いきれない」と言っていたファンは当時何人もいた。
せめて前売り券のみとサウンドトラック付き前売り券と限定盤サウンドトラックが同時発売されたのであれば、選択の余地があっただけまだ良かったのに。(それでも多少の不平不満は出ただろうが)
なお、このサウンドトラックはいずれも、映像と同様に「ONLY YOU」の中盤41秒が欠損された状態であるとのこと。そのため、映像とは別録りで音声マスターがあるだろうから、音声だけなら欠損のない完全版として商品化できるのではないか?という声も一部から出ていた。
2013年当時では、2001年時の説明――1224のフィルムは録ったまま現像もされずに倉庫の片隅で14年間眠り続けていたというもの――が生きていたことから、そのような不満が噴出するのは不思議なことではない。
「どうせ後で完全盤をリリースして稼ぐつもりだろう」という疑惑を口にしていたファンを私がお見かけしたのは、丁度この頃である。
こうして、ファンの心にしこりを残したまま、2013年の「1224」リリースラッシュは終わった。
翌2014年には、ライブシネマ「BOOWY 1224 FILM THE MOVIE 2013」の配給興行会社MMWが韓国の女性アイドルグループT-ARAの日本ツアーのチケット販売でトラブルを起こしたという報道(もしこの報道が事実なら相当由々しきことで、どうしてこんな会社に関わらせたのか甚だ疑問)もあるなど、30周年は最初から最後まで色々と残念なアニバーサリーであった。
【35周年アニバーサリー】
2017年12月24日
幻の41秒が入った完全盤の「1224」(「1224 -THE ORIGINAL-」)がリリースされた。
こちらはBOOWY35周年アニバーサリー・リリースの一環として発売されたものである。
前回の30周年アニバーサリーの広告に対する反響に味を占めたのか、この時のリリースラッシュもまずは意味深な広告から始まった。
2017年6月2日、高崎駅前に掲示された「BOOWY20170807」と書かれた5枚のポスターである。
- 『BOOWY20170807』 -
「BOOWY20170807」
この言葉は公開されたばかりの35周年記念サイトのトップ画面にも掲げられていた。35周年記念サイトの立ち上げ時のメッセージに「2017年。また新たな何かが生まれる年になるかも知れない」と記されていたことなどもあり、BOOWYファンが一時騒然となった。「復活もあるのでは」という情報も出回り、LAST GIGSが行われた東京ドームのプロ野球試合日程を調べ、2017年8月7日が空いていたことから、「再結成ライブが行われるのでは」という深読みをするファンも現われた。氷室氏のファンは軒並み「氷室氏が活動休止中なのに、BOOWYが復活するわけがない。そもそも再結成はあり得ない」と冷めた反応であったが、偏執的にBOOWYに執着するBOOWY狂信者の中には「ヒムロックが活動休止したのはBOOWYを再結成するためだった」という妄想を繰り広げる人まで現われた。その妄想に否定的な意見が寄せられると、「ならお前は再結成ライブがあっても観に行かないんだな!絶対に行くなよ!」と噛みつく始末……。(だからそういう問題じゃない。)
この時は、あらゆる妄想・憶測が飛び交い、さらに情報が拡散された。
新聞やWebニュースにも「<BOOWY>高崎駅に謎ポスター 復活?と話題に」(※19)、「BOOWY復活か?謎の広告出現にファン騒然」(※20)といったように大きく取り上げられたほか、SNSでも話題となり、6月3日にはTwitterで日本のトレンドワード1位を獲得したという。
メンバーの高橋氏のもとにも問い合わせが殺到したそうだ。高橋氏は、「2017年8月7日にBOOWYが復活するんですか!」と多くの知り合いに訊かれ、「ない、ない。だったら俺が知らないわけないだろ。俺が知らないんだからありません!」と否定してまわったと後に述懐している。
このポスター掲示から丁度1週間後の6月9日、BOOWY35周年記念サイトにおいて、「謎の文字列「20170807」の全貌が明らかに!CASE OF BOØWY すべての真実。」と題して、多くの憶測を呼んだ文字列の真相が明かされた。
「“GIGS” CASE OF BOOWY」とは、“BOOWYのレパートリー全てを演奏する”というコンセプトのもと、2夜限定で行われたライブ。
件のポスターは、ライブから丁度30年後の2017年8月7日に発売される「“GIGS” CASE OF BOOWY」完全盤(3形態)のティザー広告であったとのこと。
また新たな何かが生まれる年、ねぇ……。確かに「かもしれない」だったが、期待を持たせすぎでしょうよ。
世間の話題をさらったことを誇るのではなく、中味で勝負していただきたいもの。
この種明かし以降、BOOWYの動向に対する世間の関心は、潮が引くように急速にしぼんでいった。
2017年8月7日
BOOWYデビュー35周年アニバーサリー・リリース第二弾として、「“GIGS” CASE OF BOOWY at Kobe」(CD2枚組)、「“GIGS” CASE OF BOOWY at Yokohama」(CD2枚組)、完全限定盤「“GIGS” CASE OF BOOWY -THE ORIGINAL-」(CD4枚組にTシャツとステッカーが封入された特製BOX)が発売された。
この発売の翌日、8月8日には、布袋氏がニューアルバム「Paradox」を10月25日に発売すること、また同アルバムを受けたツアーを開催することを発表。ツアータイトルは「HOTEI Live In Japan 2017 〜PARADOX TOUR〜」。但し、12月25日に行われるツアーファイナルだけは何故か「HOTEI Paradox Tour 2017 The FINAL ROCK'N ROLL CIRCUS」――1986年から1987年にかけて行われたBOOWYのツアー「ROCK'N ROLL CIRCUS TOUR」を想起させるものが名付けられていた。
そうして2017年9月28日に、“幻の41秒“が復元された完全盤「1224」(「1224 -THE ORIGINAL-」)が、「その日」から30年後の2017年12月24日にリリースされることが発表された。
BOOWYのツアー名を一部含む布袋氏のライブが幕を閉じたのは、「1224 -THE ORIGINAL-」発売日翌日。
このライブで布袋氏は、コブクロの小渕氏をゲストに招き、BOOWY楽曲である「わがままジュリエット」「LIAR GIRL」「OH!MY JULLY Part1」を小渕氏に歌わせたという。このうち「わがままジュリエット」は、BOOWY時代の布袋氏が「久美ちゃんのアルバムで忙しいから」という理由でデモ作りを拒絶し、氷室氏が機材を買い揃えて自分でデモを制作したいわく付きの曲でもあった。
なお、この5年後の2022年12月24日に41秒の消失部分が補完された完全版の音源が「Memories of 1224」として初CD化されているが、この発売日同日及び大晦日に開催された布袋氏の40周年アニバーサリーライブのタイトルは「HOTEI the LIVE 2022 Rock'n Roll Circus "40th Anniversary Final Party!"」。やはりここでも「ROCK'N ROLL CIRCUS」。
このタイトルといい、2017年の布袋氏のツアーファイナルのタイトル「HOTEI Paradox Tour 2017 The FINAL ROCK'N ROLL CIRCUS」といい、2013年の「1224」映画化に先立ちリリースされたBD-BOXの目玉が未発表の「GIGS at BUDOKAN BEAT EMOTION ROCK'N ROLL CIRCUS TOUR(1986年12月10日武道館)」の完全版映像だったことといい、ユニバーサル・ミュージックと布袋氏サイドは「ROCK'N ROLL CIRCUS」と「1224」をセット売りしたい事情がなにかおありなのだろうか。
BOOWYと布袋氏は同じレコード会社なので、両者のリリースや情報解禁のタイミングを合わせるのは販売戦略的に分かるのだが、一度ならず二度までも、いずれも「1224」リリースと同じくして「ROCK'N ROLL CIRCUS」を使用するのが謎。「1224」なら「ROCK'N ROLL REVIEW DR.FEELMAN'S PSYCOPATHIC HEARTS CLUB BAND TOUR」から引用すれば良いのに。
- 『1224 -THE ORIGINAL-』 -
2017年12月24日
解散から丁度30年後に「1224 -THE ORIGINAL-」は発売された。
前述の通り「1224 -THE ORIGINAL-」は、2001年にリリースされた「1224」で欠損のあった“幻の41秒”が復元された”完全盤“である。
2013年の「”幻の41秒”の映像が入った、真のCOMPLETE MOVIE」疑惑を経ての「1224完全盤」リリース。
「なんだよ、やっぱりあったじゃないか!」という声があがるのは必然だが、完全盤発売を報ずるネットニュースでは、発売の経緯をこのように説明していた。
完全盤発売のニュースが報じられてからそう間をおかず、BOOWY35周年記念サイトにおいても、「一部誤解を招いていることもある」として、あらためて説明がなされていた。
過去の「1224」商品化の際に見つかっていたのは、実は「音も映像も欠損ありの不完全編集済みビデオマスター」のみで、デビュー35周年企画考案中に倉庫を整理していたら、偶然にも欠損もない完全なフィルムが発見されました、と。
さて。
ここで2001年の「1224」DVD&ビデオ発売時の関係者の皆様の「説明」を思い出してみよう。
皆様口を揃えて、「1224のフィルムを現像したのは2001年だ」と仰っていた。レコード会社の担当副部長様に至っては、はっきり「現像していないフィルムが倉庫から見つかった」と明言されていらっしゃる。しかしながら2017年に公式が発表した説明では、「2001年の時点では、4:3の画格の編集済みビデオマスターしか存在しておりませんでした。(そしてそこには一部欠損がございました)」。
すみません。私はフィルム撮影やら現像やらには完全に門外漢なのだが。
フィルムを現像もせずに映像を編集できるものなの……?
或いは、編集済みビデオマスターを作成してからまたさらに現像するものなの……?
私はてっきり、撮影したオリジナルフィルムを現像して、映像が確認できる状態のフィルムにしてから編集し、ビデオマスターを作成するものだと思っていたので、この説明を読んで頭の中が大混乱。
いやでも、2001年のスタッフクレジットには「Edited by AKIRA MAEJIMA (2001)」とある。編集済みビデオマスターしか存在していなかったのなら、前嶋氏は2001年に何を編集したのだろう?編集済みビデオマスターにちょこっと手を入れた程度ということ?でも「ビデオマスターしかない」のであれば、その映像をカットして短くすることしかできないのでは。ならば永石氏が撮影した素材を1987年に前嶋氏が編集していて、それが2001年に倉庫から発見されたということ?
そもそも2001年時点の関係者の皆々様のご説明では、5台の16ミリフィルム・カメラで撮影されたオリジナルフィルムそのものが見つかったように読み取れる。
それに2001年に発売された「1224」DVDの裏ジャケットに写っているフィルム缶。缶に貼られた「CAMERA REPORT」は所々破れたり汚れたりして全ての情報は読み取れないが、カメラ番号やフィルムのロール番号が記載されている。見つかっていたのが編集済みビデオマスタ-であるなら、これらの表記は不自然。
ジャケット写真はイメージ映像で、流石に倉庫から見つかった本物の写真を使ってはいないとしても、明らかに保存状態の良くないフィルム缶(「1224」の撮影情報が書かれているもの)の写真を載せることで、まるで「撮影されたきり封印され、長きにわたって倉庫の片隅で眠り続けてきたフィルム」が見つかったような印象を購入者に与えようとしていないだろうか。
え。これで「2001年の時点でオリジナルフィルムが存在していた」とファンが解釈してしまうのを「一部誤解を招いていること」って言っちゃう?!
むしろ積極的に誤解を与えようとしていましたよね?
でも「2001年の時点で存在していたのは編集済みビデオマスターのみ。オリジナルフィルムは発見されていなかった」と公式が断言している。
本当にもう、わけがわからない。
そんな風に混乱している折に、興味深いインタビュー記事を見つけた。
「『1224-THE ORIGINAL-』を編集した前嶋氏に聞く」というインタビューである。
あのー。
こちらでは、「2001年に糟谷氏らから『撮影したフィルムがあるから編集してくれ』と依頼されて編集を始めた」と仰っているのですが。しかも2017年の「1224-THE ORIGINAL-」発売時のインタビューで。
さらに、「14年前に現像されたままのフィルム」を2001年にビデオに落として編集したとの仰せ。つまり、現像だけはライブ後すぐになされていたと。
「2001年時点で存在していたのは編集済みビデオマスターのみ。オリジナルフィルムは発見されていなかった」公式の釈明は一体……?
確かに解散間もない頃に「1224」の映像を見たことがあると仰るファンもいたので、もしかしたら編集したビデオマスターも存在していたのかもしれないけれども。そしたら「現像していないフィルムが倉庫から見つかって2001年に現像した」という設定はどこいった……?
それに、2001年に糟谷氏も同じように仰っていたが、「5台のカメラのうち、ある時は5台回っているし、ある時は3台回っている。そして、なんと1台しか回っていない時もある」というのは、5台分のフィルムを見たからこその言葉では?「編集済み」のビデオマスターしか見つかっておらず、さらに撮影設計すらされていないのであれば、いつ何台回っているかなんてわからないのではないだろうか。
えぇー……。
何が真実かはわからないが、これ、例えばだけれども、2001年時点で見つかっていたのは、撮影したオリジナルフィルムを現像しただけの未編集ラッシュフィルムでした。ただカメラごとのフィルム・チェンジ時間がきちんと計算されておらず、いつ何台回っていたかが不明のため、欠損のあった箇所は1台しか回っていないと思われていました(カメラ番号とフィルムのロール番号で欠落の有無はわかるだろ!という突っ込みが入るなら、「当時の驚異的な忙しさにより保存管理がしっかりしてなかったため、一部散逸したフィルムがあったと思われていました」でも可)。それらの素材を使用して編集したため、2001年の「1224」は一部欠損ありの作品となってしまいました。その後、倉庫をくまなく探したところ、ないと思われていたフィルムが見つかり、そちらは欠落のない完全な状態のものでしたので、それを使用し、現在における最高の技術で“幻の41秒”を復元した作品を制作しました、といったような説明の方がなんぼかマシだったのではないだろうか。
それでも2001年時点での「現像していないフィルムが倉庫から見つかりました」の説明にはなっていないが。また、2013年の「“幻の41秒”が復元された真のCOMPLETE MOVIE疑惑」にもこたえていないけれども。
故に、私は2017年の「2001年の時点では、4:3の画格の編集済みビデオマスターしか存在しておりませんでした」という公式の声明を信じていない。わざと欠損させて発売したとまでは思っていないけれど、これまで関係者が行ってきた「経緯の説明」を読んでしまうと、公式の言葉どおりには受け取れない。
2013年の欠損ありのサウンドトラックへの批判――「仮に映像が欠損していても別録りの音声を使えばいいのに、サウンドトラックまで欠損させる意味がわからない」という批判を躱すために、2001年の時点では「映像も音声も一部欠けた編集済みビデオマスター」しか見つからなかったという設定にせざるを得なかったのだろうか。
もう一つ、2017年の「1224 -THE ORIGINAL-について」の公式説明で気になったのは、完全な状態のオリジナルフィルムが発見されたのは「近年」としていること。
フィルムを編集した前嶋氏は「フィルムが今年になって見つかったりして」と言っているし、完全盤発売を報じるスポーツ紙の記事では「2001、12年に同ライブを商品化した際には編集ビデオしか見つからず」と書かれているものの、公式では「今年」ではなく「近年」という言葉を使用した意味とは……?
フィルムが発見された時期はスタッフであれば特定できているはず。前嶋氏の話どおりに「今年」発見されたのであれば、公式も「今年」と書くのではないか。何故、ある程度幅のある「近年」という言葉を使用したのだろう?と、この説明を読んだ時に疑問に思ったのだ。
実際に2001年の初映像化時では「今年の5月に発見」と説明されていた。「1224-THE ORIGINAL-」の情報解禁日は9月28日なので、2013年の真のCOMPLETE MOVIE疑惑の時のように「今年発見」とするのが不自然な時期でもない。経年劣化したフィルムのレストア作業やデジタライズ等々の作業を終えるのは半年では無理という話なら、「昨年」でもおかしくない。だけど、「今年」でも「昨年」なく「近年」という言葉を選んだ。
で、その「近年見つかったフィルム」を「35周年を期に、オリジナルフィルムから起こしなおした作品を発表しようということになった」と。
この説明だと、もっと前に見つかっていたフィルムを35周年を機にアニバーサリー企画として発表しようとしていたみたいに見えてしまう。
そして、「2001年の時点では、4:3の画格の編集済みビデオマスター(欠損あり)しか存在してない」と、あくまでも初映像化時点にはなかったとの公式説明。
先に私は「2013年の時点では欠損部分が復元されたフィルムが見つかっていたのではないかと考えている」と書いたが、このような公式説明文の「表現」も私がそう考える理由の一つ。
下衆の勘繰りと言われればそれまでだけれども。
【噂が生まれた背景について思うところ】
LAST GIGSで氷室氏は「俺たちは伝説になんかなんねーぞ!」と言った。その言葉に反して、BOOWYは「伝説」になってしまった。後に氷室氏がその状況について「伝説にしたい人がいるのでしょうね」と語っていたこともあったが、BOOWYを「伝説」とするために、色々とドラマチックな展開となるよう脚色されてきた。恐らくこの「1224」発見の経緯もその一環で、盛ったストーリーが作られ、それ込みで売られてきたのだと思う。
録られたまま何も手を付けられずに眠っていたフィルムが21世紀の最初の年に倉庫の片隅から見つかり、封印が解かれたというドラマ性。
音楽ビジネス的には解散直後に出すべきものを、メンバーのソロ活動躍進のための配慮やBOOWYに対する4人の決意への尊重から商品化の企画がなくなったとして、BOOWYは金に動かされないバンドであることと、BOOWYを支えるスタッフのアーティストファーストな姿勢を強調した。
……その後のあれこれで盛りに盛った設定が色々と台無しになっていると思うのは、多分気のせいじゃない。
で、そうやって、再発などを繰り返す度に二転三転する公式の説明により、ファンは「本当のことを言っているのか」と不信感を抱くようになり、「真のCOMPLETE MOVIE」疑惑などをはじめとした2013年のあれこれで、「本当は幻の41秒が復元された完全版があるのにわざと欠損版を出したのではないか」と疑心暗鬼にかられるようになった。そうして2017年に本当に「完全盤」がリリースされたことから、「やっぱりあったじゃないか」となって、それが転じて「欠損は意図的に行われたという説」を生んだのではないかと考えている。
その真偽はともかくとして、ある意味、出るべくして出た『噂』。
私もいい加減いい大人だし、それなりにズルイ大人なので、嘘や誤魔化しや演出を一切許さないなんて言うつもりなどない。BOOWYの伝説自体が相当盛られていて、嘘もかなり含まれているのは十分承知の上で、その嘘が誰かを傷つけたり貶めたりするものでもない限り、一々目くじら立てて批判するつもりはないし、何ならそれに喜んで乗っかって盛り上がったりすることだってあるのだ。全ての真実を晒すことが誠意ではない。嘘を付くことが優しさだったりすることもある。
ただすぐにバレる嘘や演出というのは……。そこまでファンを見くびっているのか、それとも「文句言っていてもアイツらどうせ買うだろう」と高をくくっているのか。
もしもファンがそう感じたことがただの「誤解」と言われるのであれば、誤解を生まないようなやり方をやっていただけないものか。
2011年に氷室氏がワーナーへ移籍し、2012年にBOOWYのマネージャーだった土屋氏がお亡くなりになったと聞き及んでいるが、その辺り以降からのBOOWY商法は、有り体に言えば「雑」になった印象を受ける。(偉そうに言って申し訳ない。)
もっとも、生前の土屋氏はBOOWY解散20周年のアニバーサリーに際して、「レコード会社には申し訳ないけど、BOOWY関連のリリースはこれが最後」と仰っていたので、本当にもうネタがなくて苦肉の策なのかもしれない。或いは、音楽業界にそこまでするほどの余力も余裕も残っていないだけなのか。
だが、ファンの立場からもの申させていただくならば、嘘を付くなら「うまく世界を騙す嘘」を付いて欲しいと願ってしまうわけで。関係者の口裏を合わせるとか前回の設定を踏まえてうまく誤魔化すとか、色々やり方はあると思うのに、その手間や時間を惜しんでどんどんどんどん墓穴を掘っているように見えてしまう。
それに加えて、単なる再発や完全盤発売なのに、何かと「復活」という言葉が踊る昨今のBOOWY関連のニュースには、正直うんざりしている。「ファンが勝手に妄想しているだけ」「マスメディアが勝手に書いているだけ」と仰るのだろうが、こういうことをやればそんな反応が返ってくることを予想していて煽るようなプロモーションを展開している側面は絶対にあると思うので。
BOOWYは格好良かった。でも「人気絶頂で解散した伝説のバンド」「どんなに望まれても再結成しなかった過去を振り返らないバンド」「ファンの口コミで大きくなっていったバンド」と散散っぱら喧伝する一方で、「また何かが生まれる……」と思わせぶりなことを言ってファンを色めき立たせたり、マスメディアが「復活か」と書き立てて注意を引きつけようとする昨今の手法は、あまり格好良くは思えず、私は好きではない。
BOOWYが解散する時、解散に向けてあちこちに解散を匂わすヒントを散りばめていたことは、例えそれが氷室氏をさらに精神的に追い詰めて苦しめていたとしても、必要なこととして理解はできた。だけど、復活も、目新しい何かがリリースされることもないのがわかっているのに、そういった羊頭狗肉的宣伝文句を使われるとげんなりしてしまう。
こういったプロモーションは、1224初映像化の際に糟谷氏が語っていた「1224が解散直後に発売されなかった理由」――ソロ活動を始めた直後にBOOWY名義の作品が出た場合の、BOOWYとに対する4人の決意が時間軸がズレたまま世に出てしまうことへの懸念とは真逆ではないか、と。
それを言ったら2001年のDVD「1224」に、「BEATに飢えてる皆さんへ」と称したフライヤーを入れ、松井氏も参加する布袋氏のニューアルバムとツアーを宣伝していた時点で、BOOWY商品のリリースで「BOOWYのBEATに飢えている皆様」の関心を引きつけておいて、メンバーのソロ活動に繋げるという戦略が見え隠れしているので、今更なのかもしれないけれども。
メンバーのソロ活動への配慮のため、解散直後の「1224」の商品化が断念されたのであれば、解散後に「1224」が商品化されたのもまた他のメンバーのソロ活動への配慮だったのだろうか。
メンバーのソロ活動とBOOWY商品リリースの相互依存プロモーションが悪いわけではないし、むしろあって当然だと思っているが、わりとあからさまなのに表面上は取り繕って綺麗事を言ったり、自分を良く見せようとするあまりに生じた不都合を他人のせいにしたりするのは、見ているこちらが何とも微妙な気分にさせられるので、ほどほどにお願いしたい。(笑)
いずれにせよ、「1224」をはじめとするBOOWYの作品は名作揃いだと思っているので、作品の出来映え以外の部分で評価を損なうような売り方はご勘弁願えれば。制作側の苦労も何もわかっちゃいないファンの我儘ですけれどね。
【40周年アニバーサリー】
で、完全盤の映像化から丸5年の2022年。
解散宣言の1224から丁度35年後でもある12月24日に、消失部分を復旧した完全版の音源「Memories of 1224」が初CD化された。
2022年はBOOWYのデビュー40周年記念の集大成として、BOOWYがパチスロ化されている。そのパチスロは「LAST GIGSの映像搭載」と謳われていたにもかかわらず、そのテレビCMでは「1224」の映像が使用されていた。実際にパチスロに搭載された映像も「LAST GIGS」における映像だけではなく、一部「1224」での映像も、そしてあの「解散宣言」の場面も使われていた模様である。
パチスロ関連で敢えて「1224」の映像が使用されたのも、その後リリースされる完全盤音源CDの前振りかつプロモーションだったのかも、と今は思う。
ただ、パチスロ化のニュースが流れる直前に、「1224」を編集した前嶋氏が起こしたとされる事件が全国ニュースになるなど、あまり良い流れの中での話ではなかった。
思い返してみると、30周年アニバーサリーでライブシネマ「BOOWY 1224 FILM THE MOVIE 2013」が公開された2013年にはMMWの事件(発覚は翌年だったけど)、35周年のアニバーサリーで完全盤「1224 -THE ORIGINAL-」がリリースされた2017年には、ビーイング時代にBOOWYを担当されていた月光氏の事件、40周年のアニバーサリーで「Memories of 1224」がリリースされた2022年には前嶋氏の事件と、ここ最近のアニバーサリーは不祥事続き……。いずれの事件もBOOWY絡みで起きたものではないとわかってはいるものの、こういった報道を目にするとやっぱり残念な気持ちが拭えない。こんなところも2013年以降の「1224」に対して、何となくケチが付いたような気分になる要因の一つだったり。
そんなこんなで今ひとつアニバーサリー気分が盛り上がらない中、リリースされたライブCD「Memories of 1224」は、2022年12月期オリコン月間ランキング35位、推定売上枚数7,213枚(週間アルバムランキングTOP300登場回数3回、最高順位13位)だそうで。(初動をメモし忘れていたけど、確か週間5,500枚くらいだったと思う。今度きちんと調べて追記しておく。)
定価が5,500円だから……と思わず売上を計算してしまうのは、多分私の心が汚れているせい。(笑)
2019年にリリースされたライブCD「LAST GIGS -ORIGINAL-」は初動でオリコン週間ランキング3位、1.5万枚(累計で1.8万枚)だったため、もう少しいくかと思っていたけれど、思いのほか伸び悩んだ印象。
もっとも欠損版映像&音源&映画化2回+完全盤映像&BS放送数回を経ての完全盤音源発売ということを考え合わせると、こんなものなのか。
2017年にリリースされた「“GIGS” CASE OF BOOWY-ORIGINAL-」は初動(週間)1.2万枚(累計で2.4万枚)で、2013年リリースのファン投票選曲ベスト盤「BOOWY THE BEST "STORY"」は初動(週間)3.8万枚(累計で12.9万枚)と、年々売上を落としているし、発売日の曜日の関係もあるとはいえ、初動と累計の差が回を重ねるごとに狭まっている。というか、2013年から2017年の凋落っぷりがすごい。
思わせぶりな広告に対する反響から察するに、潜在的な関心はそれなりにあると思われるが、反響に見合う売上とは言い難い。そういう意味では、広告に踊る層と実際に購入する層が必ずしも一致しないということを証明している。
年を経るごとにライト層がどんどんふるい落とされ、BOOWYと名が付くなら何でも買う濃ゆい層しか買わなくなっているのかも。豪華特典(笑)が付いて単なるCD以上のお値段になっているから、益々ハードルが上がっている。
目新しいモノが何も「発見」されていないので、仕方がないのか。
かといって、バズ狙いの宣伝とオマケ商法にばかり傾注されてもなぁ……。
メンバーの中では定期的にCDをリリースしていると言える布袋氏も、芸能ニュースには(音楽関係以外でも)よく取り上げられるし、プロモーションにも熱心だけど、ここ最近は初動が1万枚前後なので(但し、4分の3BOOWYを実現した「GUITARHYTHM VI」だけは倍の2.1万枚。いつもの布袋氏作品の初動にBOOWY商品の初動を足したくらいの売上となっており、BOOWYとギタリズムのブランド効果が半端ないことを証明した。一方で、この2つの必殺の切り札を使っても今やそれだけしか売れないという見方もある)、本当にCDが売れない時代になったのだなと思う。そもそもCDを再生できる機械を持っていない人が増えているし。
今後のBOOWY商法の行方が気になるところ。
【出典・参考資料】
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