BOOWYがパチスロになるという話

【2022年6月28日朝のこと】

「デビュー40年を迎えた、伝説のロックバンドBOOWYのパチスロが、今秋から運用されることになった。」そんなニュースが起き抜けに飛び込んできた。(※1)

……え、今更?

というのは、今まで何度も噂としては耳にしていたから。
何年か前に何度目かの「パチンコになるらしいとの噂」を聞いた時、BOOWYの権利は誰が所有しているのだろう?思って、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で「BOØWY」の商標権について調べてみたことがある。

それによると、「BOØWY」という商標の権利者は、「株式会社ユイミュージック」
検索結果に表示された「商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務」の中には、しっかりと「パチンコ式スロットマシン並びにその部品及び附属品」が登録されている。

出願日は「平成26(2014)年 6月 23日」。
登録日は、「平成27(2015)年 6月 26日」。
登録だけは結構前からされているようだ。

商標登録されている対象商品は、実際には商品化されていない(と思う)ものが多数存在するので、商品化される可能性のある商品は予め登録されているのだろう。或いは勝手にロゴやネーミングを使用されないよう、自己防衛の手段として登録しているか。

今回に関しては、実際にパチスロになるということなので、前々から商品化の機会をうかがっていたのだと思う。
それにしても何故今このタイミングで?と疑問に思っていたら、答えがニュースに書いてあった。

販売関係者は「デビュー40周年記念の集大成として実現できたのは感慨深い。BOOWYファンは世代的にもパチスロファンと一致してますし、その下の世代の方も知っている曲も多い。SNSでかなり反響になってます」とホクホク顔だ。(※2)

40周年の集大成がこれ!?

いや、私は、きちんとした作品で、且つメンバーに相応の見返りがあるのであれば、BOOWY関連の商品化は歓迎!というのが基本的な立場。その上で買うか買わないかはファンが決めるので。
でも、BOOWY商法にありがちな微妙にマイナーチェンジを繰り返して類似品を売るやり方や、何でもかんでも「再結成に期待!!」と結論づけるプロモーションは嫌い。今回も「来年には伝説の活動休止ライブから35周年を迎え、ファンの間で高まる再結成への期待も”フィーバー”しそうだ。」(※3)などと書いてあるのを見ると、「正気か?このライター?!」と思わないでもないが、各紙とも「再結成待望論」で記事を締めるあたり、BOOWY公式のプレスリリースにそんな感じのことが書いてあるのだろうか。
「一部関係者からは再結成の話が聞こえてくるが、もしかしたら『パチスロBOOWY』がその観測気球になっているのかもしれない」と書くネットニュース(※5)もあったりするので、再結成を実現させたい人々がいるのでしょうね……。

今回は恒例のCD、DVD(BD)の焼き直し商法やオマケ商法でないだけまだマシなのかもしれないけれども、コレが40周年の集大成だと言われると、ちょっと微妙……。
他にネタはないのか?と愚痴の一つも言いたくなる。

しかしながら、これまでのBOOWY商法を振り返ってみると、

  • 2008年の「『LAST GIGS』 COMPLETE」発売に際しては、「BOOWYアーカイブ作品の発表はこれで最後」

  • 2017年の「1224 -THE ORIGINAL-」発売に際しては、「くまなく倉庫を探したのでもう何も見つかりません。本当にこれが最後」

  • 2019年の「LAST GIGS -THE ORIGINAL-」発売に際しては、「公式で発表できるものは、これが最後になります。本当に、本当に、最後のリリース作品」とアナウンスしたにもかかわらず、

  • 昨年は「BOOWY Blu-ray COMPLETE」を発売。この時には、もう「これが最後」とは言わず、

  • 今年の「40周年の集大成」がパチスロ化なので、もう本当に公式もネタが尽きてしまったのかもしれない。公式が行う「これで最後商法」もこれで最後だったと。

このパチスロ化のニュースに対しては、ファンの受け止め方も様々のようで、「絶対やる」との喜びの声と「パチンコだけはやめてほしかった」との哀しみの声の双方が渦巻いている。
反対の声を挙げる方々が次に言う言葉が「メンバーは許可したのか!」

前述の通り、「BOOWY」の商標は株式会社ユイミュージックが抑えているし、JASRACの作品データベース検索サービス(J-WID)によると、BOOWYの各楽曲の原出版社はユイソングス。
JASRACの「管理状況(利用分野)」を見ると、「ゲーム/録音(クレーンゲーム、パチンコ、パチスロなど映像と連動していない業務用ゲームのための録音)」と「ゲーム/ビデオ(ストーリー連動型パチスロなど映像と連動している業務用ゲームや家庭用ゲームのための録音)」の2つの分野にも「○」がついている。つまり、JASRACが著作権を管理している分野。(予め著作権者からその分野も含めて包括的に管理を委託されている。)

著作権には明るくないので確たることは言えないが、この場合、著作権者にあらためて直接許諾を得なくてもJASRACへ使用許諾申請をすればパチスロにも楽曲使用できるということではないか。(詳しく調べたわけではないので、間違っていたらごめんなさい。詳しい方がいらっしゃったら教えて下さい。)

また、今回のニュースに使用されているBOOWYの写真(今回に限らずBOOWY関連商品発売の際に大抵使用される、手前から氷室氏、高橋氏、松井氏、布袋氏の4人の写真)がテレビで使用されるときに表示されるコピーライト表記は、©ユニバーサルミュージック。
ということは、少なくともBOOWYの所属事務所とレコード会社の許諾はを得ているのだろう。でなければ、ロゴや写真が使えるはずもない。
(今、パチスロBOOWYの公式サイトを見に行ったら、下に小さく
「© 1982 by Be-Kikakushitsu, Inc. © 1985,1986,1987 by YUI SONGS, INC
® YUI MUSIC, INC Licensed by USM JAPAN, A UNIVERSAL MUSIC COMPANY」とあった。
著作権者はビー企画室とユイソングス、商標権者はユイミュージックとユニバーサルミュージックなんですかね。)

さて、問題はメンバーの許諾である。
もし仮にJASRACへ使用許諾申請をすれば、楽曲使用については著作権法的には問題なかったとしても、ではライブ映像使用はどうなのか?とか、メンバーの肖像権はどうなるのか?とか、それでも二次使用なのだから他にも何か必要な手続きがあるのではないか?とか、これまでの関係性があるのにいくらなんでも無断でやるはずがないのでは?とか、色々疑問は生じるので、さすがにメンバーに許可を取っているか、少なくともメンバーに出すとの連絡は入れているのではないかと個人的には思う。

気になるのは、2013年の「1224 FILM THE MOVIE 2013」のオフィシャルグッズ発売の際には、「メンバー4人の了承のもと、BOOWYの版権管理者であるユイミュージックが制作販売」、2019年の「LAST GIGS -THE ORIGINAL-」については、「メンバーも今作の発売に同意」と告知ニュースにわざわざ記載があったのに、今回はそれがないこと。
かといって、「メンバーが同意」という文言が記載されていないということが、「メンバーは同意していない」という意味では必ずしもないだろう。これだけでは、判断の材料に乏しい。

とはいえ、許諾を求められたら、メンバー達も別に強く反対する案件ではないのではないかとも思う。(あくまでも私の想像ですが。)

氷室氏は、BOOWY関連の商品発売については、「興味ない」「好きにすればいい」といった趣旨の発言を過去に何度かしている。
一例を挙げよう。

BOOWYが解散した後に出したレコードに関してはノー・タッチっていうか。そんな過去のことにいちいち口を出すのも面倒くさいってところだよね。
あとオーケストラのインスト・アルバムも出たでしょう?それも出したきゃ出せばみたいな……。でも、そう言ったらミもフタもないじゃんね。それを売ろうと思ったスタッフはどうなっちゃうのよっていう。この頃はもうメンバーにも会ってないからわかんないんだけど、誰かディレクションしてたのかな?わからない。
オレはとにかくBOOWYを解散してから、表彰式があるので出て下さいっていうのも一切出なかったし。一つケジメをつけたかったからさ。解散して東京ドームで同窓会的にやったあのライヴで完全に終わりになった。(※4)


(注1)文中のオーケストラのインスト・アルバムとは、「ORCHESTRATION BOOWY」のことである。同アルバムのエグゼクティブ・プロデューサーは、布袋氏の事務所社長となった元BOOWYプロデューサーで、ライナーノーツには布袋氏のコメントが掲載されている。

(注2)第3回日本ゴールドディスク大賞(1989年)の授賞式には氷室氏は出席せず、布袋氏が出席した。

このスタンスが続いているなら、氷室氏は「BOOWYについては」基本的に「我関せず」ではないか。
実際、2007年に前の事務所(旧ユイ音楽工房)から「BOOWYの素材を確認してくれ」と頼まれてBOOWY時代の映像(発言の時期的に、BOOWY解散20周年記念プロジェクト作品として発売された「“GIGS” BOX」と思われる)を見た時の感想が「久しぶりに見てみたらかなりひどかったですね」「あ、これじゃ、解散するわ」だったが、そんな本人的には「ひどい」と評す素材も、その後普通に販売されている。
そのくせ、御自分のソロ作品では、未だに映像作品としてのリリースを許さないツアーがあったりもする。そういったことを勘案すると、やはり氷室氏は、ソロはともかく、BOOWYに関しては基本的に「みんなが出したきゃ出せば」のスタンスで、一々文句を言わないタイプなのだと思う。

布袋氏も、パチンコ(パチスロ)CR北斗の拳に楽曲提供(「STILL ALIVE」/2012年)するなど、パチンコに対する忌避感はないと思われる。
というか、この御方に無断でやろうものなら、即、物申す(笑)。たとえ事前に告げられていても、レコード会社への不快感を滲ませた発言を過去にしているし。
何も言わないのであれば、そういうことでしょうよ、と。

高橋氏も、BOOWYアニバーサリーイベントには必ず登場し、アマバン・コピバンとの共演も多い。余程のことがない限り、来た仕事は断らないスタンスであるようだから、反対はしないだろう。

松井氏は……この人が一番よくわからない(笑)。テレビ嫌いだし、言動などから実は結構プライドが高そうな印象も受けるので何ともいえないが、意に反することをやられた場合、公式サイトの「COLUMN」でチクッと言いそうな気がするので、言わないのであれば反対ではないと思う。

いずれにせよ、契約がどうなっているかわからなければ、全て憶測。
ここに書いたのは、所詮素人がネットでちょっと調べて出てくる程度のものがほとんどなので。

一つだけ懸念されることがあるとすれば、2021年12月1日に株式会社Fanplusという会社が発表したプレスリリース。

「NFTマーケットプレイスにおけるユイ音楽工房所属アーティストのNFTコンテンツの販売決定のお知らせ」

詳しくはリンク先をご覧いただきたいが、「ユイミュージックが権利を保有する、数多くの有名アーティストのロゴや、肖像、映像、音声データなどを用いて、各種デジタルコンテンツをNFT化」「株式会社ユイミュージックとの間ではNFTに関する業務提携も行い、今後は当社がユイミュージックのNFTコンテンツ販売の代理店としての役割を担うことも決定」等々、今後はこちらの会社が窓口となってBOOWYの版権ビジネスをどんどん展開していきそうな気配を感じて、ファンとしてはあまり心穏やかではいられない。

今回のパチスロ化ももしかしたらこの新たな版権ビジネスの流れの中で行われたものの一つなのかもしれない。
ファンとして一言言わせていただくならば、制作側にオリジナルコンテンツへの最低限の愛情と敬意がないと、そのコンテンツは衰退していくので、どうか心にお留めおき下さいますよう。
「お前らこうすれば喜ぶんだろ」「どうせ文句言いつつ何でも買うんだろ」という制作側の驕りと嘲りは、どんなに表面上は美辞麗句で飾ろうとも、やはり透けて見えてくるので。そうすると、ファンが抱くオリジナルコンテンツへの愛情はどんどん磨り減っていく。
ファンの愛情を食い潰したら、そこにはもう何も残らない。

今回のパチスロ化のニュースは、私はパチンコを嗜まないので正直微妙だった。ましてこれを「40周年の集大成」と言われてしまうとね……。
ただ、「BOOWYファンは世代的にもパチスロファンと一致」とニュースに書かれていたとおり、一定のニーズが見込まれるのは確かなのだろう。実際に喜びの声を挙げていた方々もいらっしゃったので。
お好きな方はどうか楽しまれますよう。
私は、7月2日から流れるというテレビCM捕獲を頑張ろう(笑)。
パチンコのCMというものを見た記憶が最近全くないのだが、いつ流れるのだろうか……。

【追記】

なかなかテレビCMに遭遇できない……と思っていたら、どうやらテレビ東京でよく流れている模様。無事見ることができましたができました!
ても、LAST GIGSの映像搭載という触れ込みだったのに、何故CMでは1224の映像を使用しているのだろう……。そして1224の映像をわざわざ使用したのに、使用楽曲がBAD FEELINGなのはどうして……。元々ギターが目立つ曲ではあるけれど、ヴォーカルの音量をかなり絞ってさらにギターを前面に出すような仕上げだし。
なーんか変なの。

そしてCMを観て思った。
今回のパチスロ化について、私は「40周年の集大成とか謳われると微妙だけど、きちんとメンバーにも利益が還元されるのであれば、まぁ良いのでは」という感想であったが、1224だけはパチンコ・パチスロ化してほしくない。正確には、あの解散宣言~Dreamin'の部分は使ってほしくない。氷室氏がどんな想いであの場に立ち、どんな想いであの言葉を発したかを想像すると、パチンコに限らず、誰であろうと軽々しく使ってほしくない。
いつだったか、布袋氏が御自分のライブで「フォークのバンドじゃないんだから、ジメッとするなよ!なーんつって(笑)」とこの時の言葉を茶化したMCをしたという話を耳にした時、布袋氏に対する好感度がかなり下がったもの。
もしかしたら御本人達はもう何とも思っていないのかもしれないけれど、一ファンとして、あそこには触れてほしくないなぁ。
もし今回のが好評だったら、第2弾があったりするのだろうか。

【さらに追記(2022.9.8)】

そういえばニュースでは9月から導入と書いてあったなぁ……とふと思い出して、ちょっと検索してみたら、どうやら稼働は9月20日からの模様。
ただ、既に店舗には実機が納入されていて稼働待ちの状態と語るパチスロファンもいらっしゃる。納入されてるならとっとと稼働させればいいのにと素人考えでは思うが、そこまで待たなければいけない事情が何かあるのだろうか。

もっとも、いくらBOOWYとタイアップしていても、パチスロは私にとってハードルが高すぎるので、稼働が始まったところで打ちに行くつもりはないのですが。とはいえ、どんな感じかは見てみたい……ということで、動画サイトにアップされていた試打動画を見てみた。
ライブ映像が映っている場面を中心に流し見で。
そんな風に適当にスキップしながら見ていたら、ある映像が目に留まった。
「あれ?この映像1224では……?」

「ラストライブ「LAST GIGS」の映像が搭載」との売り文句だったのに、何故1224の映像が使われているの?と不審に思い、その場面で流れている曲を聴いてみたら「季節が君だけを変える」。
あぁ、うん。「季節が君だけを変える」ね。そりゃあ「LAST GIGS」にはないですよね。
恥ずかしながら、「BOOWYがパチスロになる」ということにばかり気を取られて、搭載楽曲リストはろくに確認していなかった。全部で22曲も使われるのね、くらいの認識。
あぁ、だからCMの映像も1224だったのか、と。
そして、そのまま試打動画を見ていたら、解散宣言の瞬間(正確には、宣言直前の映像)もちらっと映った。
あぁ、あの場面すらも使ってしまうのか、と。

「『LAST GIGS』の映像を搭載」としか告知されていなかったので、てっきり使用されるのは「LAST GIGS」の映像だけだと思い込んでおりました。
どうしてそこまでして「季節が君だけを変える」を使いたかったのだろう……。
どうしてそこまでして解散宣言の場面の映像を使いたかったのだろう……。

今回のパチスロにお金を落とす気が全くない私が言える義理ではないことは重々承知しておりますが。
本当に。本当に、残念です。


【出典・参考資料】

※1 日刊スポーツ 2022/6/28(火) 5:01配信「伝説のロックバンド『BOφWY』がパチスロに登場 ヒットナンバーに「LAST GIGS」映像も
※2  東スポWeb 2022/6/28(火) 20:17配信 「40周年BOOWYが今秋パチスロで復活の衝撃 音楽関係者『夢の再結成につながるかも』」
※3 サンスポ 2022/6/28(火) 5:00配信 「BOØWYがパチスロで復活! 『マリオネット』など22曲収録、伝説『LAST GIGS』の映像も」
※4 「月間カドカワ」1991年4月号 P48
※5 アサ芸プラス  2022年7月3日 17:58配信「パチスロBOOWY」は再結成の観測気球…熱烈ファンに飛び交う「ライブ映像が流れる」「金に目がくらんだか」賛否の行方」

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