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人的資本活動における教育活動<社内資格制度>

社内資格制度とは、企業や組織が独自に設けた資格制度であり、従業員が特定のスキルや知識を持っていることを証明するためのものです。
最近では、社内資格制度と似たものとして「マイスター制度」があります。
両者は、性質は類似しているものの、厳密には異なる制度です。
社内資格制度は、企業が独自に設けた資格制度で、従業員が特定のスキルや知識を持っていることを証明することを目的としたもので、目的は、社員のスキルアップ、キャリア開発、業務の標準化などです。そして、方法は、試験や評価を通じて資格を取得するというものです。
一方、マイスター制度は、特定の分野や職種において、高度な技能や知識を持つ従業員を「マイスター」として認定する制度でドイツの職業訓練制度が元になっていることが多く、専門技能の継承、技術水準の向上、若手の育成などを目的としており、厳しい基準や評価をクリアした上で認定されます。


 
 

 
 
 
 
 
 


 
 
 
 
 

社内資格制度を類型化すると、主に3つに分類できます。①は主に製造業やIT関連においての資格要件で、製品の重要なポイントとなる技術力水準を維持するための条件設定、これをここでは「技術品質の維持」ということにします。②は主に小売業やサービス業において、商品力と共により顧客にとっての有用な満足を提供できる条件設定として、「提案品質の向上」を果たそうとする資格条件、③は主に上述の①と②などを中心としてプロを着実に養成・指導する資格を要する資格設定といった区分があり、これを「マネジメント品質の維持」とします。
このように見てくると、企業は単なる製品・価格志向から一歩進化して、まさに自社の製品の技術と品質を社内資格制度によって水準維持及び技術承継するということと、より積極的な「技術品質プライド」を制度として進化させようとしていること。また、自社の製品特性を開発したコンセプト通り徹底して顧客に伝達し、それにより楽しさ・豊かさをプラスした「用途提供による提案プライド」でレベルの高い顧客満足を追求するということで企業間の差別化を進めようとしていること、さらに人的側面より「マネジメント品質プライド」として能力水準の維持向上を図るという積極的な取組み姿勢が理解できます。
私の接してきた体験的な角度からもう少し事例的に述べると、①の「技術品質の維持」ということでは、嗜好飲料企業で実施している「マイスター制度」があります。もともとマイスターという用語は、ドイツで熟練技能者を育てるための職業訓練制度から生まれたものですが、この会社では品質の高い商品の味を最大限に引き出すためには、その飲料として飲む前に行う簡単な処理工程の仕方が重要として、飲料の加工・提供までの商品化の技術を中心にして商品知識や提供方法にいたるまでのプロ人材育成のために、業界団体が実施する資格制度を取り入れ運用しています。この制度を柱として得意先小売店への販売支援を行い、最終顧客に高い品質水準の飲料のある生活を提供しようとの狙いで実施されています。まさに、商品力とそれを生かす提供技術品質へのこだわりに徹するという考え方です。また、ここでは取引先小売店で新しい店舗を開業する場合に充実した支援が行えるように開業のためのプロ人材としての資格制度も導入しています。開業のためのマーケティング・事業計画策定・店舗設計等総合的サービス支援が行える体制の位置づけです。
②の「提案品質の向上」は、商品を販売するだけではなく、いかに無形の付加価値を提供できるかというものです。近年、商品の機能は、ますます多様化し取扱説明書はかなり分厚い冊子が2冊、3冊それにCD付きという状況にあります。これが競合他社との争点であり、的確にどう顧客に伝達・理解を取り付けるかが重要になっています。ここまでくると、その商品知識やそれに伴う技能、サービスのレベルはかなり高度な内容が要求されてきます。販売の要はこれに対応できる人材でありその育成です。この会社では、これを数段階のランクにわけ計画的にランクアップできる社内資格制度としています。情報通信の多様化時代に商品が持つ機能をフルに活用して生活を楽しむ、このための提案力こそ差別化の戦略と直結するものです。
③の「マネジメント品質の維持」についての取組みもその活用範囲はかなり広くなります。特に、小売業や飲食業界ではスーパーバイザー制度が多く取り入れられています。直営店舗やゆフランチャイズ店舗を数多く有する企業においては、各店舗品質を一定水準以上のレベルでいかに確保できるかが経営上の課題になります。そこでは、スーパーバイザーとしてのプロ人材の力量がきわめて重要な位置づけとなることから社内資格として取り組むケースも多く見られています。当社でもこの分野への関わりはかなり多いものとなっています。

社内資格制度導入の手順
社内資格制度設計の体系
社内資格制度の導入にあたっては、なぜ資格制度を導入するのかの目的を明確にし、狙うべき成果をはっきり設定することから始めることが重要です。これまで述べてきたように「技術品質の維持」や「提案品質の向上」あるいは「マネジメント品質の維持」など、自社の状況に対応した、誰もが理解できる設定が必要です。自社の現状と将来、自社の強みと弱みなどを明確にして、その方向付けを検討する「SWOT分析」の手法なども活用すべきですし、何よりもトップの戦略的ニーズにマッチするものでなければなりません。また、もうひとつの側面として大切な「社員にとってのモチベーション向上」「社員にとっての能力向上」につながる設定が重要になります。その上で社内資格制度の設計の大枠をつくることになります。


 
 

ここでいう職務と課業は、職務分析で使用する用語定義を使用しています。次回の投稿で、この枠組みをもとに導入の手順を述べます。

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