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『なれのはて』を読んで

アイドルNEWSのメンバー加藤シゲアキさんの最新作、『なれのはて』。
まず率直な感想としては、感動した、に尽きる。

大きなスケールで描かれたある一族の話。絵画を巡り、主人公たちも自分のルーツを巡ることになる。東京と秋田を行き来し、戦争の時代から現代まで時間も絡んで経過する。読み終わるのにかなりの重量感のある作品だ。

私は昔から小説を読むのが好きだった。
16歳の時には小説家になりたいという夢まで持った。
小説に思い入れがある程、アイドルが小説を書いたという事が鵜呑みにできなかった。
10年前、加藤シゲアキさんが『ピンクとグレー』を生み出し話題になったことは覚えている。映画にもなった。本は読めずに映画を見た。読めなかったのは偏見と嫉妬があったからだと思う。今思えば誰に嫉妬してるんだか、と恥ずかしくなるが、当時はそのような気持ちだった。
映画は素晴らしく、原作が素晴らしいものだと確実に思わせるものだった。

それでも偏見を持ったまま時は過ぎ、その他に出版された彼の本も読むことなく過ごしていた。
すると数年前、ロックが大好きな姉が急にチームNEWS(ファンクラブの名前)になった。
彼らの魅力を近くで見るようになり、偏見は取れていった。
そして最新作、『なれのはて』を姉から拝借して読むことになる。作家人生10年を過ぎた大作だという前触れを込みでも、誤差なく大作であった。

なれのはての意味を知り、複雑に絡まり合う、でもシンプルな愛情と絆を見、感動せざるを得なかった。
書き方としても、どこでこれを回収するのかと追っていた伏線が、マジックかのようにさらりと、大オチの手前で回収されていく様は流石アイドル、とさえ思った。大舞台の上で光り輝いて踊っている。一瞬のターンの間に早着替えするような。そんな華麗さだった。

偏見を持つのは辞めよう。
スピリチュアル的にも良くない。
それに、彼に至ってはアイドルであることを逆手に取ったような書く力がある。そう思った。やっぱり身の程知らずだが悔しい。
自分も精進せねばと思う。

最後の一文というのは、読者の心に残るものと流れていくものがあると思っている。
ストーリーの内部は覚えているが、最後の締めの部分はどうだったっけ?と思う事が多々ある。
しかし彼は、最後の一文にしっかりと縁取りがありくっきりとしている。それも魅せるという職業柄なのかなと感じた。

とても素晴らしい作品でした。

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