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ポニーテールの先輩

今朝は3時頃に目が覚めた。

高校の時の夢をみて、モダンダンス部の先輩を思い出した。ポニーテールの、全校生徒の憧れてた可愛い人だったのに、思い出す時はいつも先輩の顔はハッキリしない。生々しい夢で高校当時を思い出し、あの頃の一つ一つを鮮明に思い出せるのに、顔だけが出てこない。

そして、体育館で先輩のポニーテールにまとめられた髪を握り、柔らかく強い弾力の感覚だけがいつも思い浮かぶ。

身体が弱く不整脈が小さい頃から起きて、それだけでは無いが、20歳までは生きられないといわれ、ワガママに過ごしてきた。短命なら高校へも行かずに好きな事をさせようといわれていたのに、なぜか男女共学の高校に入ってしまった。高校では誘われるままに剣道部に入り、図書クラブとか文学部にも入っていた。先生は事情が分かっていたので自由にさせたが、部活の先輩達からは生意気に思われていたようだ。

特に運動はすぐに苦しくなるので、みなと同じように出来なかった。事情を知らない先輩からはイジメのように扱われていた。ある日女性だけのダンス部の更衣室に押し込まれた。ダンス部の先輩はイジメを受けていたのを分かっていたらしく、先輩は騒がずに「後ろを向いてて」というだけで、追い出す事はしなかった。他のダンス部の部員達も、この先輩に一目おいてたらしく、素直にいうことを聞いてた。

それから親しくなり、疲れるとダンス部の近くに座って、黒のレオタード姿で踊るのを見てた。小柄で痩せてて、少し長い髪は黒い髪留めのゴムで、ポニーテールにまとめられてた。横に座り、話をしながらポニテの髪ばかりを見ていた。全校男子生徒の憧れだったようで、彼女の近くに行けば、先輩達は何も言えなかった。

ほぼ1年間くらいそうして過ごし、時には下校も待ち合わせて一緒に歩いた。先輩の友達や家族の事、将来の夢や希望も聞いたように思うのだが、話の内容が全く思い出せない。

2年に成ったときに、彼女の勧めと選挙運動で生徒会長になり、卒業生を送る会の時に祝辞を述べる機会を得た。あの時は先輩だけを見ながら、送別の言葉を述べた。下書きを持っていたのに、それを見る事もなく、ただ先輩に対してのお礼の言葉だけを一生懸命に話した。

以来、先輩と会う機会はなかった。踊る姿よりも、横に座った時の汗の匂いと石鹸のような爽やかな香りや、髪を握ったときの柔らかな弾力を思い出す。耳に掛かった髪の毛や、動くたびに揺れるポニーテールの髪や、その下の汗に濡れたウナジの産毛を思い出すのに、先輩の名前も顔も思い出せない。

高校時代の思い出は沢山あるが、先輩の事だけは別枠の引き出しにしまってある。余りにも仕舞ったままにしてたので、記憶が薄らいでしまったのだろう。あれから半世紀以上も経ってしまった。今でもあの頃と変わることなく、向こうの世界で、小柄で明るい美しい女性のままでいるのだろうか。

もう一度、逢えたら良いなあ。

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