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人生、綴ってみた 【結婚・後編】 #25

 金融会社から
 旦那が言っていた手紙が届いた
 今まで手にしたこともない分厚い封筒
 A4用紙十八枚
 旦那の借金履歴、全てがそこにあった

 私と知り合う前から
 借金まみれの男だった

 バレてはゼロになる
 そんなことの繰り返し
 周りの人が助けてくれた履歴も
 そこにはあった

 明細書を持つ手が震えた

 まるで銀行のATMで
 自分のオカネを引き出しているかのよう

 この人にとって
 カード一枚で借りれるATMは
 まさにそうだったのだろう

 毎月七万もの利息
 それを返すために、さらに借りる

 二十五才から、二十一年間
 そうやってオカネを借り続けた

 こんな人を好きでいたなんて

 苦しい
 胸が苦しい
 どうやって息をしたらいいのか
 わからない
 呼吸が乱れていく
 これは何?
 過呼吸?

 私を打ちのめすには
 十分すぎる内容だった

 数日後
 旦那がいきなり帰宅して、土下座をした

「今まで、借金ばかりして
 本当に申し訳ありませんでした。
 別居したいなら、別居する。
 離婚したいなら、離婚する。
 でも、親の介護だけはしてほしい」

「お前なんかに面倒みてほしくない、
 って言ったのはあなたでしょう?」  

「だったら、
 葬式くらいは出てもらってもいいだろ?」

 そう
 結婚した時から、ずっとそうだった
 面倒なこと、厄介なことは
 いつも私に押し付け
 嫁としての役割を求めているだけだった
 そんな申し出が
 私を傷つけていることすら
 この人は全く気がついていない

「お母さん、辛いね」
 息子が察してくれている
 もう、それだけで十分だと思った

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