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クローン病になって気付いたこと

わたしは20歳、大学3年生の時に「クローン病」の診断を受けた。

クローン病というのは、主に大腸や小腸をはじめとする全身の消化管の粘膜に炎症や潰瘍が起こる病気。(簡単にいえば口内炎みたいなやつが腸にもできてるみたいな感じ)
主な症状は、腹痛、下痢、血便、体重減少などで、日本全国で5〜6万人ほどの患者がいるらしい。
患者で東京ドームが埋まりますね。

このクローン病、医学が発達した現代においても、なお発症の原因が不明なため、国から難病に指定されている。
つまり「なんで発症したのか」の原因もわからないし、「この薬を飲めば完治!」という治療薬も見つかっていない。
わかんないままとりあえず一生付き合っていかないといけない病気。

人によって症状は様々で、症状のない寛解期と、炎症が悪化する活動期が定期的に繰り返される。
私の場合、活動期の時は毎日38度ほどの高熱が出て、気持ち悪くなりご飯が食べれず(食べても下痢になる)体重が減少した。
でも寛解期の時は、普通に好きなものを食べて特に不自由なく生活できているので、見た目も生活スタイルも普通の人と何ら変わらない。

難病だけど普通に仕事して、普通に生きてる。
このところ3年ほどは毎日の薬だけで寛解期を維持できているので、わりと軽症の患者な方だと思う。

この病気になって6年、もうすっかりこの生活が日常だけど、発症してから気付いたことを書いてみたいと思います。

気づいたこと① 食べもののありがたみ

お腹の炎症がひどくなったとき(活動期)にすることはひとつ、絶食。飲食をすると否が応でも消化器官は活動してしまうので、とにかく食べないことで無理やり休ませるのが最善の方法。

私は20歳の時、長引く高熱と口内炎でかかりつけ医から大学病院に紹介され、検査をして診断がおり、即入院ののち絶食になった。

口からご飯は食べられなくて、点滴をつながれて500kcalの点滴パックを毎日5回入れ替えられる。
ベッドからほぼ動かず、寝ているだけなのに、しっかり2,500kcalを摂取させられる。
そして身体的な栄養は足りているのに、口から食べていないので満福中枢は刺激されていないため、ずっと空腹状態なのだ。
寝たきりの老人ってあんなつらい感覚なのかな…と思った。

ご飯の時間は地獄だった。大部屋だったから隣からものすごくいいにおいがするし、空腹なのに何も食べられない。ただただインスタグラムで「退院したら食べたいもの」をひたすら探していた。(自分で自分の首を絞めに行くスタイル)

3日間の絶食のあと、回復食ということで、重湯とものっっっっっすごく薄味の具なしお味噌汁がでてきた。

これ多分、回復食2日目ぐらいの食事。
卵豆腐は低脂質低残渣でクローン病の味方です。

これが、本当に死ぬほどおいしかった。

「今まで食べたご飯で一番感動したものは?」と聞かれたら、間違いなくこのほぼお湯みたいなお味噌汁だと答える。それぐらい、塩味って人間に必要な栄養だわ……と実感した。

健康的な視点からすすんで絶食する人もいるかもしれないし、検査前とか、超多忙とか、そういう理由で1日、2日ぐらいの絶食はわりとみんな経験していると思うので、そんなたった3日で……とか言わないでね…

食べることが趣味みたいな私にとっては、普通に口から食べられるというありがたみをこの時初めて実感した。

ちなみに治療法のないクローン病でも有効と認められているのは、「脂質を抑えた食事」をすること。

目安の脂質摂取量は20g/日ぐらい、と聞いた気がするけど、普通の健康な食事してたらまず間違いなく無理。
コンビニのおにぎりとサラダとデリカップ買ったら1食で20g超えるし、体にいいイメージのゆで卵だって脂質5gあるし、大好きなマックのポテトはMサイズ1つで脂質20gで即刻オーバーだし……美味しいものって本当に全部脂肪と糖でできています。

自分に甘いタイプなので、とりあえず牛豚は控える、油を多く使う食事は控える、自炊する、お菓子とかジャンクフードもできるだけ控える……ようにしてるつもり。(つもり)

気づいたこと② 家族のあたたかさ

発症時に私が入院した病院は実家から近くて、毎日家族の誰かが見舞いに来てくれた。
父も母も、出勤前の忙しい合間に、仕事から帰って疲れてきたあとに、可能な限り顔を出してくれた。

母は、いきなり難病です、と突き付けられて将来や就職やいろんなことに不安になって泣き出したときも、絶食いやだ!!!と愚痴を垂れ流すときも、いつも静かに見守ってくれていた。

入院前の深夜2時ごろ、高熱がおさまらず家で過呼吸になったときに呼吸の仕方を教え落ち着かせてくれた兄も、多忙に働きながら、たまに会うたびに体調を気にかけてくれている。

祖父母は、帰省するたびに「これは食べられるか?」とたくさんのフルーツや食べものを持ってきてくれる。

難病なんて自分には縁のないものだと思っていたから、急なことに理解が追いつかなかったけれど、こうして近くでサポートしてくれた家族がいるというのは、すごく有難かった。

気づいたこと③難病医療費助成制度のありがたみ

急に現実的な話になっちゃいましたが、クローン病の治療って保険制度があてにならないぐらいの大金がかかります。

それこそ流行りのインフルエンザにかかってタミフル処方してもらったりしたとき、明細書を見てほしいんですが、まあ大体診察代と合わせて2〜3000円ぐらいじゃないですか?国民皆保険制度様様すぎるよね。

ただクローン病で使う薬はその比じゃないぐらい高い。

たとえば私はいま「リンヴォック」という飲み薬を1回2錠、毎日飲んでいる。
その薬価、1錠なんと5000円
あの小さな1錠だよ…
毎日ほぼ無意識で1万円の薬を飲んでいるということです。恐ろしい。
1ヶ月にすると30万円。保険の3割負担だとしても9万円
こんなん当たり前に生活が崩壊します。

そんな難病患者のバカ高い医療費負担を軽減するための制度が「難病医療費助成制度」

簡単に言うと、国に指定された難病を治療している人は、毎月の医療費の自己負担限度額が設定されて、それ以上は支払わなくて済む、というもの。

たとえば私は毎月2万円までの自己負担で治療が受けられる。(ちなみに0円〜3万円が上限)

だから30万円の薬も2万円(診療代とかもあるから実質15,000円ぐらい)で済みます。
貧困OLにはそれでも痛すぎる金額だけど、本当にありがたい。
ちなみに、いま私は寛解期だからこの薬代だけで済んでるけど、これが活動期になると検査代、手術代、入院費までかかってくる。

活動期になった時。
診察代+検査代+緊急入院代+薬代らへん総額85万円(!)
が自己負担2,500円……(当時の限度額)


このときは、クローン病の悪化により痔ろうを発症してしまい、手術ののちお尻にゴルフボールサイズの穴が空きました。(その話もいつか書きたい)

ちなみに、クローン病患者は合併症として手術をともなうような病気になる人が多い。
5年手術率が30%、10年手術率が70%と言われているぐらい、腸や肛門なんかで何かしら外科医のお世話になります。

そんな有難い補助があるとはいえ、毎年10万円ぐらいは医療費として出ていくので、全然家計はしんどい。やっぱり健康な体が何よりもコスパいいなと思います。健康第一。

休職してまで入院だったくせして、
退院して速攻でお尻に穴開いたまま遠征した。
オタクの意思は何よりも強いね。








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