職場に出る幽霊が最近一寸愛おしい
会社に勤めてから数か月が経った。
霊感があるわけではないと思っている。しかし僕は他の人の見ている風景というものを知らない。だから霊感があるかないかというのは主観的な感想だ。
無いと思っている。
職場に、きっと幽霊なんだろうな、というものがいる。
何度も繰り返すが、霊感は無いと思う。だからこれは、霊感ではなく、直感で感じたことだ。
初めて出勤したその時からなんとなく、「いそうだな」とは思っていた。
幽霊の存在は信じている。そっちのほうが、世界が面白いからだ。僕は僕の娯楽と、死んだ後の保険のために幽霊はいると思っている。
実体が見えたことはない。と思いたい。
本題に入ろう。
古いビル一棟丸ごとうちの会社だが、事務所のある1階以外は全部倉庫のような使い方をしている。時々お客さんが来て、倉庫の中身を見てくのだがそれも多くて週に4日ほどだ。
大体は上司と2人で事務所にこもっている。
ある日、誰もいないはずの2階から足音がした。あまりにも生々しく響くものだから上司に「誰か来てます?」と聞くがそんなことはないという。
勝手に侵入することもできなくはないが、不可能に近いだろう。出入口は事務所の前を通ていかなければならない。僕たちに気づかれず2階に上がることは、キルアレベルで足音を消せないと無理だろう。
とりわけ、幽霊に怖いという感情も抱かないので「あーやっぱいるんだなー」くらいの認識で、その日は終わった。
その次の日、早番だった僕は上司より先に出勤した。
するとエレベーターが5階で止まっている。
前述したが、2~5階は普段使うことはない。上の階に上がるためには、エレベーターと裏階段しかない。裏階段は誰かが出入りした形跡はなかった。そうなるとこのエレベーターしか5階に行く方法はない。
まず脳裏をよぎったのが、不審者だ。僕より先に勝手にどこかから侵入して5階まで行ったのだろうか。だとしたらどういう対処が正しいのか。武器は角材しかない。倒せるだろうか。そんなことをぐるぐると考えた。
次に、上司が早く入っているのではないかと思った。しかしそれもすぐに粉砕された。下駄箱には靴が無い。
不審者か…と気持ち悪いような、怖いような気になって5階を確認せずにいると宅急便が届いた。玄関口までそれを取りに行き、事務所へ帰る。
そのときエレベーターの前を通ると、
エレベーターは1階まで下りてきていた。
5階にあると確認してから3分も経っていない。その間エレベーターの前を行き来した者は確実にいない。
「あー幽霊か」
と内心思いつつ、不審者じゃないことに少しだけ安心した。よく考えたら不審者のほうがよっぽど怖い。
今までは噂話程度でしか幽霊の存在を感知していなかったが、この実体験をしてから幽霊の存在を確証した。
もちろん、実体は見ていない。
このエレベーター事件を上司に話したら、「それは初めてのパターンだな」と言われた。慣れっこなのか…
最近一人勤務が増えてきた。
一人で事務所の中で仕事をしていると、事務所の前を歩き回る音がする。足音の重さ的に、子供くらいだと思う。
いつも騙されて郵便だと出ていくと誰もない。
間髪入れずにからかうように自動洗浄でも何でもないトイレが流れる。
これがお決まりのパターンだ。
これにも慣れてきたので徹底した無視をしているとかまってほしいのか呼び鈴を鳴らしてくる。これは郵便と間違えるから正直辞めてほしい。
一人の時に、事務所外のラウンジで仕事をしていると2階からパタパタ足音がする。
ラウンジのマッサージチェアが勝手に動いている。
上司といるときはいたずらしてこないのに、僕が一人で仕事をしているといつもちょっかいをかけてくる。
なめられてるのかな。
でも音楽をかけておくと大人しいから、音楽が好きなのかもしれない。
上司曰く、幽霊は男の子らしい。どういうことで知ったのかはわからないけれど、小さめの男の子がいるとのこと。まあ確かに、トイレも男子トイレしか流れないしな。
そんな感じで、寂しがり屋の幽霊君と最近は仕事をしている。
彼の最新いたずらは、「給湯器のコンセントを抜く」である。
飯が食えないのでこれは勘弁。
また彼が何かしたら、記事にしよう。
※特定を避けるため、要所要所ぼかしています。ただし、事実や意味合いが大きく変わるような修正はしておりません
有意義に使わせて頂きます。