夜明けのひぐらし
夜明けに聞くひぐらしの合唱は神聖だ。
今朝はひぐらしの声で目を覚ました。
以前フィリピンでカトリック教会の宗務室に泊めてもらったことがある。
夜明け前の教会。辺りがまだ薄青く肌寒い中、その大聖堂にカトリックの住民は毎朝通い、祈りと讃美歌を捧げていた。
大きく開け放たれた入り口から聞こえてくる静かな歌声とパイプオルガンの音。
非キリスト教者の僕は中へ入るのが憚られるので、戸外で腰掛けその調べにうっとり耳を傾けていた。
夜明けに聞くひぐらしの合唱はそれに似ている。
鳥さえ鳴かない明け方のしじまに、ひぐらしの讃美歌がしっとりと沁みわたる。
窓辺に腰掛けて耳を傾けていると、溶けていく心の澱がひらひらと降り積もっていくのを眺めているような瞑想的な気持ちになる。
日がのぼり、温かくなり、鳥が鳴き始める頃には、合唱は終わってしまう。
今朝は起きた途端に雨が降りだしたので、鳴き声はすぐにやんでしまった。
もう少し聴いていたかった。
雨はすぐにあがったんだけどな。
絵はフィリピンの教会。
色鉛筆だけで描いてみた。