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「全文公開」で本バカ売れ、印税ガッポリを夢見る作家様、編集者様に残念なお知らせがあります。

このnoteは、「これをキッカケに本が売れたら良いなぁ」「100冊…いや、どうせなら1000冊は越えてほしい!」「重版や!重版出来や!寿司買うてこなあかんわ!ガハハ!」と壮大な夢を見て「全文公開」を過去5回行った実績から、メリット・デメリット、効能・副作用などを、ざっくばらんに書き留めています。

はっきり言って、何もまとまっていない雑文です。ごめんなさい!頭の中でモヤモヤ抱えているぐらいなら、いったん文章にした方がまとまると思ったのですが、結局まとまりませんでした。

このnoteで言っている「全文公開」は、note上で行った全文公開コンテンツをさしていますが、基本的にはどんな媒体であれ通じる話かと思います。


そもそも、あなたは誰?

松本健太郎と申します。これまで、電子書籍限定も含めて10冊の書籍を刊行してきました。

他にも、主にITmediaで月1〜2回程度、定期的な寄稿コンテンツを公開しております。いろんな人に会うのが楽しいです。


過去5回の実績と松本自身の平均的な傾向について

松本はこれまで、5回全文公開を行いました。内容は、以下のマガジンでまとめているので、お手隙の際にご覧ください。

全文公開した結果、各コンテンツのPV数は以下のような結果となりました。全文公開コンテンツを黄色で塗り潰しています。

ちなみにnoteではアクセス数を特定の期間に絞って確認することができないので、全期間で選択しています。

全文公開の1つ、賃金問題が断トツでトップの約5.7万PVでした。その他の全文公開も比較的上位に食い込んでいます。

ちなみにnote全体で見て、何万PVを越えると「おっ、人気だね」なんでしょうかね。

PV数を見ると、オウンドメディアにありがちな負の二項分布を表しているのが分かります。あーあるある、ですね。

では、全文公開して良かったと言えるでしょうか。ここで数字の見方を変えてみます。

noteでは、コンテンツに対して訪問者から「いいね」と表現できます。そこで全訪問者のうち何%が「いいね」と言ってくれているかを調べました。それが「評価」の列です。

もしコンテンツに対して評価してくれる確率が共通してNだったとして、コンテンツの内容が良ければ上振れ、悪ければ下振れるはずです。

ちなみに分母にあたるPV数が少ないと上下振れ幅が大きくなって評価し難いので、1000PV以下は切り捨てました。

う〜ん、他コンテンツと相対的に比較して、全文公開コンテンツは評価が低い結果となりました…。こっちの見方の方がなんだかスッキリする…。

やっぱり、「全文公開」=なんか宣伝感あるよね、だからは評価はしたくないという人は一定層いらっしゃるのでしょうか。いやもしかしたら、コンテンツの質が悪い可能性も…。グスン、泣いちゃう。


全文公開の効果:書籍の売れ行きについて

全ての全文公開コンテンツで、元となった書籍のAmazonリンクを貼り付けています。

全文公開当初はそのリンク経由でいっぱいアクセスがありましたし、盛り上がりが落ち着いて以降も、数字が途切れることなく続いていることを確認しています。

全文公開以降、「グラフをつくる前に読む本」「データサイエンス超入門」はAmazonリンク経由で以下ぐらい売れております。

こちらは、あくまでAmazonリンク経由のみの数字です。書籍編集者からは「だいたい、この2倍ぐらいの数字で動いている」とのこと。

なので実際には、「グラフをつくる前に読む本」は50冊ほど、「データサイエンス超入門」は100冊ほど動いているはずです。

思ったより少ないでしょうか? 上記に記載したコンテンツのPV数に対しておよそこれぐらいの注文数が、CVR的に見てもリアルかと思います。

もしAmazonリンク経由のみ注文数で100冊200冊売れるなら、たぶん1コンテンツのPV数で20万は越えないと難しいのではないでしょうか。

というわけで、全文公開だけで「本バカ売れ」は、1コンテンツあたり20万PV以上叩き出せる人でなければ、今のところ無いのかな…という感じです。


全文公開、やる意味あるの?

最初に全文公開の話を聞いた時、キンコン西野さんの「絵本全公開大炎上祭り」を思い出しました。曰く「既に本を買った人がかわいそう」「買った人に金返せ!」という怨嗟の声が響き渡り、何しても炎上する人って大変だなぁと感じました。

全文公開には確かにそうしたデメリットがある一方、在庫が動く=さらに売れて重版がかかる可能性があると思っています。これは大きなメリットだと思っています。

<余談>
メリットとデメリットの話は非常に難しくて、私のなかでは「これだ!」という正解が出ていません。
私自身は書籍代を「内容を読むために払う」のではなく「創作してくれたことに対する投げ銭」だと考えて生きてきました。したがって、あんまり好きではないけど注目を集めている作家さんは図書館で読み、注目されていないけど頑張って欲しい作家さんは書店で買っていました。ちなみに前者の代表例は東野圭吾さんや宮部みゆきさん、後者の代表例は佐藤裕哉さん、清涼院流水さんです。単なるメフィストヲタとか言うなよ。私にとって書籍は所有することへの対価だったのかな、と感じています。
なので、私自身は「全文公開されていようと、創作してくれたことへの感謝として買う=投げ銭する」という理屈の人なのですが、だからと言ってデメリットの声をあげる人に向けて、こうした理由で納得してくれるとも感じていません。彼らは読むために対価として金銭を支払っているからです。

ドラマ化もされた「重版出来」11巻は、たった3巻で打ち切りとなった「あに丸ジャンクション」が電子書店のキャンペーンをキッカケに急速に認知され、やがて重版出来するーという、全俺が泣いた話が中心です。

この話は、「全文公開」の理想像の1つが描かれていると感じました。

漫画、小説問わず、よほどの大作でなければ複数回に渡って宣伝されることは皆無で、基本的には「書店での巡り合わせ」が本との出会いになります。つまり書籍は「衝動買い」の最たるものの1つだと考えています。

したがって「口コミ」「誰かの紹介」ほど重要な要素はありません。Twitterでインフルエンサーの○○さんが薦めていた…それだけでも10冊ぐらい在庫に影響が出ると思います。

ただ、問題なのは、リアルの書店舗がめちゃくちゃ減っている点です。不破雷蔵さんのまとめによると、店舗数の減少、大型化が止まりません。

出張や旅行で地方に足を運んだ際、書店巡りをするのが好きなのですが、「本屋少ない!」が第一印象です。

しかも陳列されている書籍の多くは売れ筋ばかり。売り場面積が限られている以上仕方がないかもしれませんが、これでは衝動買いをしようがない…と感じました。

店舗の数、陳列する棚、2つの意味でフィジカルアベイラビリティが下がっている以上、相対的に宣伝以外の「口コミ」の重要度は増してきます。その一方で、その効果ほど本は売れなくなっていると思います。だって、本売れてたら著名人がサロンとかする必要ないし。あれは、固定収入だけでなく、刊行される本を毎回必ず買ってくれる人を確保するためだとも思ってます。

ただ、Amazon上で回遊買い、衝動買いが発生するかと言えば、「リアル店舗ほどでない」と感じています。Amazonは指名買いをする場所で、買いやすさを追求してもセレンビリティを追求したサイトではないはず。

したがって、noteというプラットフォームで全文公開された私の書籍の存在を知ってもらうことで、Amazonなり近くの書店でお買い求め頂けるのであれば幸いだと感じています。

つまり、新たな「知って貰うための機会」をnoteの全文公開が提供してくれているのではないでしょうか。

これが今時点で私が感じている全文公開のメリットだと考えています。リアルの世界で、第2、第3の「あに丸ジャンクション」が誕生すれば良いなぁと思っています。


全文公開、現時点での問題点は?

ではnoteは新たな本屋か?と問われれば、まだ判断できません、という解答になりそうです。

note自体は、紙の時代の次なる可能性を秘めていると思っています。しかしそれらを束ねたからといって現時点では本屋にはならないでしょう。

それはリアル店舗のような回遊性の問題です。GAタグが埋め込めるわけでもないのですが、恐らくnote全体のコンテンツ平均直帰率は95%〜96%ぐらいではないでしょうか。つまり、手にとっては棚に置き違う本を読むという立ち読み体験は、まだそこまで起きていないのではなかろうかと感じています。

平均的なコンテンツマーケティングのためのWEBサイトの直帰率がそれぐらいの感じなので。違っていたら良いなぁ…。

松本の書いたコンテンツのうち上位は、Twitter上でインフルエンサーなAndoさんや田端さんに紹介されたことがキッカケです。どちらかと言うと、noteでの全文公開は「こんな面白いコンテンツがあります!」と紹介しやすい本棚のような存在ではないかと感じています。

もっとも、それが「次世代の本屋」だという意見も否定はしません。清水克衛さんの運営されているような書店も1つの形態ですよね。

ただ、そうなると、私自身がソーシャル上でフォロワー数を増やして、自身の書いたコンテンツに誘導できるインフルエンサーにならないと、全文公開の効用を活かしきれないのだと気付かされます。

文章公開して、一気に日本中に広がって、本バカ売れ。世の中、そんなに甘くないですよね…。

すると今度は、苦労してインフルエンサーになったとして、書籍をえっせらおっせら刊行するより、知名度を活かして公演とかした方が儲かるんじゃないの?と考えてしまうのです。あるいは、そこまで有名だと別に全文公開しなくても、自然と売れるんじゃね?とも思ったり…。

そもそも、「グラフをつくる前に読む本」は執筆に1年、「誤解だらけの人工知能」は準備〜執筆で半年、「データサイエンス超入門」はデータ準備だけで国会図書館に1ヶ月篭もりました。印税と照らし合わせると、たぶん時給10円もしない。

今だったらnoteにコンテンツを公開するだけで、毎月投げ銭で1万円分くらいコーヒーが買えているので、お金のためだけなら書籍を刊行する行為そのものが非効率なんです。最近は誰でも本を出せる時代になったので、信用度という点で見ても疑問符です。

私のようなあまり名の売れていない人間でも、全文公開を活用して本がバカ売れする上手いマーケティング方法を生み出せれば良いのですが、今のところ思い浮かんでいません。ごめんなさい。

イケダハヤトさん、はあちゅうさんのサロン問題をキッカケに「信者ビジネスどうなの?」という声は上がっていますが、全文公開という機会がありながらそれを活かしきれていない私よりよほどマーケティング上手とも言えます。(いや、炎上したから持続可能性は無かったけれども)

結局、どうすれば本が売れるのか、ネット上での全文公開は売れるキッカケになるのかと考えれば、「運」要素が一番強く、次に「ファンの数(=フォロワー数)」が強く物を言うのが現状ではないかと感じております。

だから、幻冬舎の箕輪さんは正しいのです。多くの出版社の殆どの編集者は嫌っていますが、箕輪さんの行動は正しい。売れてるし。9私は「正しい手段でつまらん本を出している」と思ってますけど。

だから僕は、「へぇ〜そういうマーケティングあったのね」と言われるような何かを見つけたいと考えています。

雑文、失礼いたしました。

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