財務モデリング④(プロジェクトファイナンス)
前回の財務モデリングの記事(財務モデリング③)からかなり時間が空いてしまいましたが、プロジェクトファイナンス向けの財務モデルを紹介します。所々簡略化していますが、太陽光発電所への投資(セカンダリー取得)をイメージするとこのようなモデル↓になります。(循環参照回避のためコピペ自動化のマクロを入れています。)
(アンロック版は最下段へ)
インフラプロジェクトの投資においては、このようなモデルを手元に投資検討や銀行とプロジェクトファイナンスの組成に向けた協議を行います。
全体構成と作成の流れ
モデルの全体構成は、①Input、②Calculation、③Outputと3つに分かれており、①Inputで各種前提条件を入力し、②CalculationではInputに基づいてPL/BS/CFの作成に必要な項目を計算し、③OutputでPL/BS/CFの作成とIRRの計算を行います。
添付のモデルでは借入の返済ピッチに合わせて6カ月単位で期間を区切っていますが、より精緻に作る場合、四半期や月次で作成することもあります。
大まかな作成の流れとしては、①プロジェクトのPL算出→②借入可能額の算出→③プロジェクトコストの算出→④財務三表(各項目)の作成という流れとなります。
②の借入可能額の算出において、将来CFを基に計算する必要があり、その為まずは①プロジェクトのPL情報から取り掛かるのが作成しやすいと個人的には思っています。
太陽光発電所におけるPLの作成
太陽光発電所の場合、売上は発電量(売電量)×単価(円/kWh)で、費用はオペレーション&メンテンナンス(O&M)、アセマネ(AM)、地代、保険料、光熱費(買電費用)、租税公課(事業税、固定資産税)、その他諸経費となります。
太陽光発電所への投資でよくある匿名組合出資(TK-GKスキーム)であれば、匿名組合員への分配は損金となり法人税の発生をほぼ0とすることが可能なので、法人税の計算は除外しても問題ない場合が多いです。(添付では税金計算の参考の為、通常の出資の場合を想定しています。)
PLにおいて一番重要となる発電量の計算においては、外部アドバイザーを起用して超過確立毎の発電量予測を行い、その発電量予測を基に売電収入の予測を立てます。
発電量予測は超過確率毎に測定され、超過確率 50%(P50)の場合や、超過確立75%(P75)、85%(P85)、90%(P90)、95%(P95)などの場合の将来発電量の予測を算出します。算出された発電量予測に経年劣化を考慮して20年間に渡る長期の発電量予測を作成し、その予測を基にプロジェクト期間における売電収入を計算します。
例えば発電所の定格出力が50,000kWの場合、その発電所の最大発電量としては50,000kW×24時間×365日で438,000,000kWhとなります。(メガワット換算すると438,000MWh)
しかし、太陽光発電所の場合、発電可能なのは日中のみとなり、また発電から送電までの間のロスやその他要因によるロスから、実際には上記最大発電量に対して10%~15%程度(43,800MWh~65,700MWh)の発電量となる場合が多いです。(この場合の10%~15%の割合のことを「設備利用率」と言います。)
超過確率と発電量の関係としてP50の方が発電量が高く、P90の方が発電量が低くなります。50%の確率で発生するであろう発電量(楽観的な予測)と90%の確率で発生するであろう発電量(保守的な予測)と考えると分かりやすいかもしれません。
※電気のことに関しては専門ではなく、あくまでも金融実務者レベルの理解度となり、専門家から見れば正確には解釈が違う部分もあるかもしれませんがご容赦ください。
(次回以降へ続く)
アンロック版で実際にモデルを弄ってみたい方はこちらからどうぞ。
(このままでもプロファイ組成の協議に使用できるレベルと思いますが、正確性や網羅性を担保するものではない為、その点ご承知おき下さい。)
ここから先は
¥ 300
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?