見出し画像

開幕戦で激突したアーセナル対シティをレビュー :: 24/25MR01 :: WSL Watch #109

*有料設定になってるけど全文無料で読めます。

開幕戦でいきなりアーセナルとマンチェスター・シティって対戦があって、期待通り見どころだらけの試合だったから気になるシーンをピックアップしつつレビューしとこうかな、と。今シーズンからWSLはYouTubeで観れるようになったから、YouTubeのクリップ機能を使って、24/25シーズンのマッチ・レビューなんで'24/25MR01'ってカタチで。

▶︎ ハイライト

▶︎ フルマッチ


ルッソではなくブラックステニウスを起用したアーセナル

アーセナルのスタメンでまず目を引いたのは、イングランド代表FWのアレッシア・ルッソ(Alessia Russo)じゃなくスウェーデン代表FWのスティナ・ブラクステニウス(Stina Blackstenius)をスタメン起用してきたこと。実はアーセナルはこの試合の前にすでにUEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグ(UWCL)の予選ラウンドを3試合闘ってて、直近のミッドウィークにBKヘッケンとアウェイで対戦して0-1で負けてるんだけど、その試合からは2人、4-2-3-1の2列目の真ん中に入ってたローザ・カファジ(Rosa Kafaji)とCFWに入ってたアレッシア・ルッソに代えてフリーダ・マーナム(Frida Maanum)とスティナ・ブラックステニウスを起用してきた。

理由はよくわかんないけど、実はスティナ・ブラックステニウスって'シティ・キラー'っていうか、昨シーズンのリーグ戦の2巡目の対戦のアウェイでの試合で途中交代で2点取って逆転勝ちの立役者になった(し、結果的にマンチェスター・シティのリーグ優勝を阻んだ)選手だったりするんで、そういう相性も含めて人選だったのかも? とかちょっと思ったり。

藤野と山下がシティのスタメンに

マンチェスター・シティもミッドウィークにUWCLの予選ラウンドのアウェイでのパリFC戦を闘ってるんだけど、実はその試合ではカディジャ・ショウ(Khadija Shaw)がビザの手続きの問題っていう珍しい理由で急遽出場できなくなったらしくて。この試合は問題なく出場できたからパリFC戦からのメンバー変更は1人だけで、パリFC戦でスタメンだったメアリー・ファウラー(Mary Fowler)がサブに。つまり、長谷川唯だけじゃなく、山下杏也加と藤野あおばも公式戦2試合連続、しかも、アーセナルとの大事な一戦でスタメンってこと。思ってたよりかなり早くチームにフィットできた感じらしい。

▶︎ 00:09- シティのハイプレスとアーセナルのプレス回避

キックオフ直後からいきなりマンチェスター・シティのハイプレスとアーセナルのプレス回避の攻防が見れるシーン。2人のCBの間に立ったGKがボールを保持するところから始まるアーセナルのビルドアップなんだけど、マンチェスター・シティはWGの2人が背中でSBへのパス・コースを切りながらCBに寄せるカタチ、いわゆる'外切り'なんて言われるプレスで入ってて、いきなりマンチェスター・シティの左WGのローレン・ヘンプ(Lauren Hemp)が奪えなかったけどSBのパスをカットしてて。外切りプレスの場合、攻撃側のSBが空くことが多くて、そこまで守備側のSBを縦スライドで出すか中盤のインサイドMFの横スライドで対応するかの選択になるんだけどマンチェスター・シティは後者を選んでて、アーセナルとしてはマンチェスター・シティのインサイドMFの横スライドが間に合う前にSBにボールを届けられれば前進できるんだけど、アーセナルはその直後にGKのマヌエーラ・ツィンスベルガー(Manuela Zinsberger)から左SBのケイティ・マッケイブ(Katie McCabe)まで浮き球の中距離パスをマンチェスター・シティの右インサイドMFのジェス・パーク(Jess Park)の横スライドが間に合う前に届けてて。最終的にはマンチェスター・シティのチャンスにもアーセナルのチャンスにもならなかったシーンだけど、マンチェスター・シティのプレスの入り方とそれにすぐに対応したアーセナルのビルドアップを巡る攻防がいきなり見れて面白かったな、と。実は数分後にも、右WGの藤野あおばが奪いかけたシーンがあったり、ローレン・ヘンプが(手に当たってて取り消されたけど)チャンスになりかけたシーンもあったし。

▶︎ 03:09- シティのビルドアップと長谷川とグリーンウッドの役割

立ち上がりのマンチェスター・シティのビルドアップのシーン。アーセナルの非保持は4-4-2で、マンチェスター・シティのGKの山下杏也加と右CBのライア・アレクサンドリ(Laia Aleixandri)と左CBのアレックス・グリーンウッド(Alex Greenwood)とCMFの長谷川唯の4人に対して、前に立ってるスティナ・ブラクステニウスとフリーダ・マーナムの2人でなるべく制限をかけるような守り方なんだけど、もちろん最優先は長谷川唯に自由にボールを触らせないことで、わりとアレックス・グリーンウッドに持たせる感じになってた。アレックス・グリーンウッドはボールを持てるし蹴れるし前が空いてれば運べるマンチェスター・シティの保持のキーになる選手なんだけど、こないだのUWCLの予選ラウンドで対戦したパリFCと似たようなスタンスで、アレックス・グリーンウッドに持たせて運ばせると、もちろんマンチェスター・シティのチャンスになることも多いんだけど、もしボールを奪ってアレックス・グリーンウッドが空けてるスペースからカウンターを打てれば大きなチャンスになりやすいって側面もあって、ボールを失わないことを前提にしてるように見えるマンチェスター・シティでも100%失わないっていうのは無理だから、諸刃の剣っていうか、ちょっと危うい部分も内包してるんだけど、それでもマンチェスター・シティはアレックス・グリーンウッドが持ち上がることを選んでて、実はさりげなく長谷川唯が左CBの空いてるスペースを埋めてることがわりと多くて。このシーンもまさにそうで、長谷川唯が後ろを埋めたと思ったらすぐ後には1列前でボールを受けてて、さりげないけどすごく効果的なプレイをしてる。その後の縦パスは実は引っかかってるんだけどすぐに奪い返してるところも含めて、このチームにおける長谷川唯のタスクの重要性がわかりやすく出てる感じ。最終的には相手守備陣を押し下げながらチーム全体で前進して、サイドを変えてクロスで終わってるんだけど、マンチェスター・シティらしさがものすごく見えたシーンだな、と。

▶︎ 06:03- マンチェスター・シティのプレスからのシュート

アーセナルがハーフウェイ・ラインくらいまで前進できたらマンチェスター・シティは4-5-1みたいに構えてて、下げたボールにはちゃんとプレスに出てボールを奪いにいくってスタンスがよくわかるシーン。アーセナルがセンター・サークル付近でボールを持ってるんだけど、ジェス・パークと長谷川唯のプレスでGKまでボールを下げさせたら全体で押し上げて、CBからCMFに入ったボールに長谷川唯とフィフィアネ・ミデマー(Vivianne Miedema)が連動してCMFの2人のパス交換にプレスをかけてボールを奪って、フィフィアネ・ミデマーがそのまま惜しいロング・シュートを打ってるんだけど、高い位置からの外切りだけじゃなく、一旦下がったところからのマンチェスター・シティのプレスがよくわかってなかなか興味深いシーンだな、と。惜しいシュートを打てちゃうフィフィアネ・ミデマーもさすがだし。

▶︎ 06:52- アーセナルのプレス回避からの先制点

実は上のシーンの直後なんだけど、アーセナルがマンチェスター・シティのプレスを回避して上手く擬似カウンター状況を作って見事に先制したシーン。アーセナルの左CBのライア・コディナ(Laia Codina)がGKのマヌエーラ・ツィンスベルガーにボールを渡したところから始まってるんだけど、マンチェスター・シティの左WGのローレン・ヘンプがアーセナルの右CBのロッテ・ウッベン・モイ(Lotte Wubben-Moy)を消しながらGKにプレスに出て、マヌエーラ・ツィンスベルガーがCMFのキム・リトル(Kim Little)を経由して(外切りプレスだと空いてるはずの)右SBのエミリー・フォックス(Emily Fox)までボールを届けて、エミリー・フォックスは前が空いてるから自分でどんどん運んで、マンチェスター・シティの左SBのレイラ・ウアハビ(Leila Ouahabi)の裏に走ったケイトリン・フォード(Caitlin Foord)にボールを流し込んで、走り勝ったケイトリン・フォードのクロスに走り込んだスティナ・ブラクステニウスが潰れたこぼれ球を後ろから走り込んだフリーダ・マーナムが押し込んで決めたんだけど、最終的にはマンチェスター・シティの選手がみんな後ろ向きでギリギリの対応を迫られてて、まさに擬似カウンターって感じの見事な攻撃だったな、と。ポイントはいくつかあって、キム・リトルのところに余裕を与えちゃったマンチェスター・シティ側の問題もあるし、その隙を見逃さずに空いてるはずの右SBのエミリー・フォックスに届けたキム・リトルもさすがだったけど、個人的にはエミリー・フォックスの持ち上がりが実はすごく大きかった気がしてる。スプリントで追いかけてくるフィフィアネ・ミデマーを振り切って、ケイトリン・フォードの位置を気にしてるレイラ・ウアハビに向かってボールを運んだドライブが素晴らしかったな、と。もちろん、その後のケイトリン・フォードの裏抜けからのクロスもちゃんと飛び込んでくるスティナ・ブラックステニウスの9番らしい動きもセカンド・ボールを狙ってるフリーダ・マーナムも見事だったんだけど。質が高い選手の連動した動きが続いて生まれたアーセナルらしいゴールって感じ。

▶︎ 08:55- シティのプレスを惑わすアーセナルのプレス回避

アーセナルの先制点の直後なんだけど、これもアーセナルのプレス回避の上手さが目を引いたシーン。GKのマヌエーラ・ツィンスベルガーからのボールを後ろ向きのCMFのカイラ・クーニー・クロス(Kyra Cooney-Cross)が左CBのライア・コディナに戻して、ライナ・コディナからの浮き球のパスを受けた左SBのケイティ・マッケイブがすぐにライア・コディナに戻して、その後にライア・コディナから縦パスがスパッて入ったところで局面が変わってるんだけど、この縦パスまでのアーセナルの選手の左サイド後方でのパス交換のときのマンチェスター・シティの選手の動きを見てると、CFWのカディジャ・ショウも右WGの藤野あおばも右インサイドMFのジェス・パークも右SBのカースティン・カスパライ(Kerstin Yasmijn Casparij)もけっこう振り回されてるけどどこにも強い圧をかけれてなくて。しかも、ライナ・コディナからの縦パスを自陣の中央のレーンで受けてるのが左WGのマリオナ・カルデンテイ(Mariona Caldentey)だったこともマンチェスター・シティの守備陣を惑わせたと思うんだけど。そこからは右WGのケイトリン・フォードに展開して、右SBのエミリー・フォックスの絶妙なタイミングのアンダーラップも入って、見事な擬似カウンター発動って感じで。マリオナ・カルデンテイからケイトリン・フォードにパスが出た時点でマンチェスター・シティの選手は6人が置き去りにされてて、完全に最終ラインの4人が晒されながら背走してる状態なんで。しかも、エミリー・フォックスにボールが渡るまでにアーセナルの選手は誰もワンタッチ・パスをしてないことも実はけっこう大事なポイントかも。最終的にはエミリー・フォックスのクロスのミスで終わったからマンチェスター・シティ的には事なきを得たけど、クロスのタイミングでボックス近辺が同数になってたことも含めて、立ち上がりに何度かエラーはあったけど、キックオフから10分も経ってないのにアーセナルはマンチェスター・シティのプレスの外し方をつかんじゃった? って感じがするくらいアーセナルのビルドアップが見事だったかな。

▶︎ 12:37- シティのプレスを上手く外したアーセナルの決定機

これもアーセナルのビルドアップでのプレス回避なんだけど、SBが空くことを上手く使って前進できてるシーン。後ろからのビルドアップで左SBのケイティ・マッケイブにボールを上手く逃して、右インサイドMFのジェス・パークのスライドが間に合わないタイミングでロング・パスで裏を取ってるんだけど、GKの山下杏也加まで引っ張り出して決まっててもおかしくない決定機を作れてる。SBのところがどうしても空きやすいマンチェスター・シティの外切りプレスの泣きどころを繰り返し使いながら前進できてるアーセナルの上手さがさすがだな、と。

▶︎ 20:53- プレスがハマらない問題を解決できないシティ

試合が始まって20分経ってるけどSBにボールを逃されてアーセナルにプレス回避される問題をマンチェスター・シティが解決できてないことがわかるシーン。中途半端な位置に立つ左SBのケイティ・マッケイブに藤野あおばもジェス・パークもアプローチできずに前進されて、マンチェスター・シティの守備陣は背走しながらの守備対応を迫られてる。最終的にケイトリン・フォードのクロスがミス・キックになって攻撃が終わったけど、まだマンチェスター・シティはプレスがハマらない問題を全然解決できてない感じ。マンチェスター・シティとしてはこの時間帯に追加点を奪われなくてラッキーだったし、アーセナルとしては追加点を取りたかったって展開だったかな。

▶︎ 22:19- シティのボール保持からの藤野の決定機

ハイプレスはなかなか上手くハマってなかったマンチェスター・シティだけど、保持局面は別に上手くいってなかったわけじゃないことがわかるシーン。コンパクトな4-4-2で守るアーセナルに対して、幅をとる選手を変えたりしながらパス・ワークで我慢強く揺さぶって、最終的には裏を取った左WGのローレン・ヘンプからのクロスが抜けたところにファーから右WGの藤野あおばが詰めてシュートまでいけたけどケイティ・マッケイブにブロックされたって流れなんだけど、丁寧に何度もやり直す保持がいかにもマンチェスター・シティだな、と。

▶︎ 28:17- プレスがハマらない問題をまだ解決できないシティ

マンチェスター・シティのプレスがなかなか上手くハマらない問題を30分近くなっても解決できてないことがわかるシーン。CMFを飛ばしてGKから真ん中のレーンのひとつ奥までパスを差し込まれて、前向きのCMFを使って右SBまで展開されて、WGの2人とCFWにピン止めされたマンチェスター・シティの最終ラインの手前のスペースを使われて、最終的にフリーダ・マーナムにシュートを打たれてるんだけど、長谷川唯のスライディングがギリギリで間に合ってないところも含めて、アーセナルのプレス回避が上手いとも言えるけど、マンチェスター・シティの非保持の問題はまだまだ解決できてない感じ。こうやって改めて観てみると、少なくとも30分くらいまではマンチェスター・シティのプレスが上手くいってなかったことがよくわかる。ちなみに、このちょっと後の30分過ぎくらいのタイミングでポゼッション率が表示されたんだけど、マンチェスター・シティが60%だったりして。

▶︎ 32:35- ハマりかけたプレスを上手く回避したアーセナル

これもアーセナルのプレス回避のシーンなんだけど、今回はマンチェスター・シティのプレスがハマりかけたんだけど上手く回避されたって感じ。アーセナルのゴールキックから始まるシーンなんだけど、左SBのケイティ・マッケイブへの浮き球のパスに対してはマンチェスター・シティの右インサイドMFのジェス・パークのスライドが間に合ってて、戻したボールに対しても連動して圧をかけれてるんだけど、それでも中のレーンでのパス交換にタイミングを合わせて走ったケイティ・マッケイブに上手く浮き球のワンタッチ・パスを通して前進して、最終ラインの裏に走った右WGのケイトリン・フォードへのパスをGKの山下杏也加がボックスの外に出てクリアしたけど、セカンド・ボールを拾ったアーセナルの2次攻撃が始まって、最終的にはロッテ・ウッベン・モイからのマンチェスター・シティの最終ラインの裏に落とすようなボールに斜めに走り込んだマリオナ・カルデンテイがワンタッチでシュートして、決まれば間違いなくゴラッソだったけど、さすがに難易度が高くて枠外って流れで、アーセナルの保持の質の高さが存分に発揮されたシーンだったかな、と。アーセナルのゴールキックが始まる前に寄りで写ったカディジャ・ショウの表情を見てもフラストレーションが溜まってそうな感じが伝わってきたし。

▶︎ 40:57- ミデマーが決めたシティの同点ゴール

非保持ではあまり上手くいってなかったマンチェスター・シティがフィフィアネ・ミデマーのゴールで同点に追いついたシーン。最後のところはデュエルの連続だったし、シュート自体もデフレクションだったし、決して上手く崩したって感じじゃなかったって意味ではマンチェスター・シティらしいゴールとは言えないかもしれないけど、フィフィアネ・ミデマーにボールが入るところまではマンチェスター・シティらしいパス・ワークだったし、マンチェスター・シティに移籍して最初のリーグ戦で、しかも、エミレーツ・スタジアムでの古巣のアーセナルとの対戦で、あまりいい流れじゃなかった展開の中で前半終了間際に貴重な同点ゴールを決めちゃうとか、やっぱりフィフィアネ・ミデマーって選手の凄さを改めて強く印象付けたって感じだったんじゃないかな。「何もないところから」とまでは言わないけど、アーセナルとしては別に「やられた」って感じのシーンじゃなかったと思うし。簡単に言っちゃうと、やっぱりスターだなってことなんだけど。

▶︎ 44:01- 試合の流れを左右する山下杏也加のビッグ・セーブ

前半40分を過ぎてからフィフィアネ・ミデマーのゴールで同点になって、「上手く攻めれてたのにリードを広げられなかったアーセナルと上手くいってたわけじゃないけど追いつけたシティって感じで、試合の展開としてはすごく面白くなったな」なんて思ってた矢先のアーセナルの決定機を山下杏也加が止めたシーン。ミドル・ゾーンでアーセナルがボールを奪って打ったカウンターでGKと1v1の決定機になったって意味ではそれほど珍しいシーンってわけじゃないと思うけど、同点のままハーフタイムに入るのとアーセナルが勝ち越してハーフタイムに入るのとではもちろん全然違うんで、試合の流れを考えるとけっこう勝敗を大きく左右するようなビッグ・プレイだったんじゃないかな、と。抜け出してシュートを打ったのが'シティ・キラー'のスティナ・ブラックステニウスだったって点も含めて。

▶︎ 45:49- シティの保持のミスからの際どいオフサイド判定

両チームともメンバー交代をしないで始まった後半開始直後に、際どいオフサイドの判定で取り消されたけどアーセナルがネットを揺らしたシーン。マンチェスター・シティの右SBのカースティン・カスパライの斜めのパスがズレたのかな? 長谷川唯に出したのかカディジャ・ショウを狙ったのかわかんないけど、「外のレーンから中のレーンへの横パスとか斜めのパスが引っかかるとカウンターを喰らいやすい」の典型例みたいなアーセナルのカウンターで。

実はシュートのシーンに関しては、ちょっと後(画面に表示されてる通り56:29のタイミングで)に下に貼ったキャプチャのリプレイが出たんだけど、これで見るとオンサイドに見えるかな。リアルタイムではちょうどマンチェスター・シティの選手と入れ替わる感じだったから難しい判定だったとは思うけど。VARがあったら認められたかもって感じだけど、今シーズンもWSLにはVARが導入されてないんで、ピッチ上の判定通りオフサイドに。アーセナルにとってはアンラッキー、マンチェスター・シティにとってはラッキーだったとしか言えないシーンだったと思うけど。

オフサイドって判定されたシーン

▶︎ 47:11- まだまだ空転させられるシティのプレス

後半に入ってもまだマンチェスター・シティのプレスがハマってない、逆に言うとアーセナルのプレス回避が上手いってことがわかるシーン。ローレン・ヘンプと藤野あおばの立ち位置を見るとCBへのアプローチをうかがってるように見えるから、基本的には外切りプレスってスタンスは変わってないように見えるんだけど。瞬間的にマンチェスター・シティの選手が高い位置に6人いたりして、かなりリスクをかけてる、何なら前半以上に前に出るってハーフタイムに意思統一してきた? って感じで。実際にけっこう強めの圧はかかってるように見えるし。ただ、アーセナルも左サイドで左SBのケイティ・マッケイブと左WGのマリオナ・カルデンテイが位置を入れ替えてみたりしつつ相手選手の出方をうかがって、最終的にはやっぱり右SBのエミリー・フォックスに逃がしたところから内側のレーンに下りてきたケイトリン・フォードとのワンツーで上手く抜け出して、そのままエミリー・フォックスがボックス近くまで自分で運んでクロスまでいけてて。けっこう強い圧はかかってるように見えるから、やっぱりアーセナルのプレス回避が上手いってことなんだけど、マンチェスター・シティとしてはなかなか難しい感じ。

▶︎ 57:31- パークのゴラッソでシティが逆転

非保持ではあまり上手くいってなかったマンチェスター・シティがジェス・パークのゴラッソで逆転したシーン。まず、ジェス・パークのシュート自体が見事そのもので、アーセナルのGKのマヌエーラ・ツィンスベルガーもさすがに見送るだけって感じで、ジェス・パークのシュートを褒めるだけって感じなんだけど、ただ、あえて他の要因を探るなら、フィフィアネ・ミデマー加入の効果が出たシーンって言えるのかも? って思ったり。今までのマンチェスター・シティだったら、基本的にはハイ・クロスのターゲットはもちろんカディジャ・ショウで、それは今シーズンも変わらないんだけど、このシーンではカディジャ・ショウに加えてフィフィアネ・ミデマーもボックス内に飛び込んでて、アーセナルの守備陣はかなり押し下げられてるし、実際にフィフィアネ・ミデマーのところから生まれたこぼれ球だったりもしてるんで。やっぱり、ゴール前にカディジャ・ショウとフィフィアネ・ミデマーの2人がいるのは相手の守備陣にとっては脅威だなってことが現れたシーンな気がして。それでも、「こんなシュートが入るか?」って言われれば入る確率はかなり低いと思うし、それだけクオリティが高いプレイだったし、「勢いがある選手って、こういうの、決めちゃうよな」って感じのゴールだったとは思うけど。

▶︎ 61:00- ミデマーの凄さが発揮された一連のプレイ

フィフィアネ・ミデマーの個の能力が発揮されたシーン。個人的にはチームとしての戦術的な振る舞いの部分を注視する傾向が強くて、個人のプレイを切り取り始めるとキリがなくなるからあまりしないようにしてるんだけど、これはさすがに目を引いたんで。今シーズンのマンチェスター・シティに新たに加わった部分だって意味もあるし。実は長谷川唯が珍しくボール・ロストしてたりして、マンチェスター・シティの保持が安定せずにボックス近辺まで攻め込まれたシーンなんだけど、フィフィアネ・ミデマーが個人の能力でその状況を打開してくれて、左WGのローレン・ヘンプを上手く押し出して、ローレン・ヘンプとエミリー・フォックスの見応えがある1v1があって、ローレン・ヘンプのクロスにカディジャ・ショウが飛び込んだこぼれ球をフィフィアネ・ミデマーが拾うんだけど、その後の右足のキック・フェイントからの左足のシュートまでの動きもスムーズで、さすがフィフィアネ・ミデマーって感じで。シュートの跳ね返りを拾った長谷川唯が藤野あおばにつないで2次攻撃もクロスまではいってるんだけど、自陣のボックス近辺に攻め込まれてる状況を1人で打開して、最終的に惜しいフィニッシュまで繋げられるフィフィアネ・ミデマーはやっぱり凄いな、と。

▶︎ 64:04- アーセナルのハイプレスに苦労するシティ

リードを奪われたアーセナルがハイプレスの圧を強めてきて、マンチェスター・シティのビルドアップにミスが起きかけるシーン。アーセナルの非保持は前半から変わらずに4-4-2がベースで、交代で入ったアレッシア・ルッソとフリーダ・マーナムの2トップがマンチェスター・シティのGKとCBの2人を牽制しながら長谷川唯を背中で消す感じのアプローチなんだけど、前半よりもWGの2人の位置が高めで、交代で右WGに入ったベス・ミード(Beth Mead)と左WGのマリオナ・カルデンテイもCBにアプローチする構えを見せたりして、瞬間的に4-2-4みたいに見えるようなプレスになってて。そのプレスに圧を感じたのか、マンチェスター・シティは上手く前進できなくて、山下杏也加のところでやらかしかけてて。山下杏也加は保持局面も含めてここまでは上手くやれてたし、このシーンに関しても、戻されたボールにも問題はあったと思うけど。最終的に事なきを得たけど、マンチェスター・シティにとってはかなり危なっかしいシーンだったかな、と。

▶︎ 69:20- 藤野の局面打開から生まれたシティのチャンス

マンチェスター・シティの保持局面からのチャンス・シーンなんだけど、この場面では藤野あおばの良さが見れたかな、と。右サイドのタッチライン際でちょっと難しい状況でボールを渡されたけど個人のスキルで局面を打開して、中のレーンにボールを運ぶことで相手の守備陣形を中央に集結させて、左サイドに展開して左WGのローレン・ヘンプが仕掛けられる状況を作って、ローレン・ヘンプの仕掛けからのクロスのタイミングではファーでちゃんと待ち構えてて。結果的にファーにボールは抜けてこなかったけど、待つべき場所でちゃんと待ててるのは素晴らしかったな、と。もちろん、単に藤野あおばの個人の話だけじゃなく、藤野あおばからボールを受けてローレン・ヘンプに展開した左SBのライア・アレクサンドリの関わる位置とタイミングとか、幅を取って待ってる左WGのローレン・ヘンプの仕掛けとか、ボックス内で待ち構えてるカディジャ・ショウとか、セカンド・ボールに反応してボックス内まで飛び込んできた長谷川唯とこぼれ球に反応したフィフィアネ・ミデマーまで含めて、チームとしてやるべきことが共有されてるマンチェスター・シティらしい攻撃のカタチだったし、その原則の中で個の能力を活かせてる藤野あおばのプレイは良かったな、と。

▶︎ 70:34- シティのプレスと藤野が作った決定機

マンチェスター・シティがハイプレスでGKに蹴らせて、セカンド・ボールの争いからチャンスを作ったシーン。マンチェスター・シティはこの時間になってもハイプレスのスタンスは維持してて、このシーンではGKのマヌエーラ・ツィンスベルガーに長いボールを蹴らせて、センター・サークル付近での競り合いのこぼれ球を一度はアーセナルのマリオナ・カルデンテイに拾われるんだけど、コントロールの方向を予測して素早く反応した長谷川唯が上手くインターセプトして、すかさずカディジャ・ショウに縦パスを差し込んで、そこからの展開でボールを受けた右サイドの藤野あおばが仕掛けながら裏抜けしたローレン・ヘンプをデコイにして切り返して、ボックス内に入ってきたジェス・パークを見つけてワンタッチで打てるようなボールを渡して、ジェス・パークがキック・ミスしちゃったから得点にはならなかったけど、明確に決定機だったし、アシスト未遂って言っていいんじゃないかな。藤野あおばのプレイはもちろん素晴らしかったし、実は長谷川唯のインターセプトもものすごく長谷川唯らしいプレイで、オン・ザ・ボールのクオリティばっかりが注目されがちだけど、こういう部分もさすが長谷川唯って感じのプレイだったかな。

▶︎ 71:15- シティのハイプレスからのショート・カウンター

上のシーンに続いてマンチェスター・シティはハイプレスから立て続けに作ったチャンス・シーン。マンチェスター・シティのハイプレスは変わらずに外切りなんだけど、このシーンがマンチェスター・シティの対応が今までとちょっと違ってて。アーセナルの左CBのライア・コディナが右SBのエミリー・フォックスに斜めの浮き球でボールを逃がそうとしたんだけど、エミリー・フォックスのところまでマンチェスター・シティの左SBのライア・アレクサンドリが出てきてて、当然、本来は見てるべき右WGのベス・ミードを捨てて出てるってことだからそれなりにリスキーなんだけど、エミリー・フォックスのところまで出るって決断をして、競り合ってこぼれたボールをローレン・ヘンプが拾って、フィフィアネ・ミデマーとのワンツーで裏を取ったローレン・ヘンプのクロスをボックス内のカディジャ・ショウがシュートして、最終的にGKにセーブされたんだけど、そもそもボールを蹴ったライア・コディナのところにも圧がかかってたし、ライア・アレクサンドリの決断と競り合いも良かったし、決まっててもおかしくないシーンだったかな、と。ローレン・ヘンプのクロスはカディジャ・ショウじゃなくてその先で待ってたジェス・パークを狙ってた気もするけど、強めのパスをちゃんと蹴れる位置に止めて強烈なシュートを打てちゃうカディジャ・ショウもさすがだったし。あまりハマらないことが多かったマンチェスター・シティのハイプレスから生まれたシーンとしては、このシーンはかなり惜しかったんじゃないかな。

▶︎ 79:54- 交代出場のカファジとミードが生んだ同点ゴール

試合終盤までマンチェスター・シティのリードで進んだ試合を振り出しに戻したアーセナルの同点ゴールのシーン。シーン自体はわりと事故的っていうか、交代でピッチに入ってたマンチェスター・シティのクロエ・ケリー(Chloe Kelly)に対してケイティ・マッケイブがタックルをして、倒れたクロエ・ケリーが近くにいたキム・リトルともつれあって、こぼれ球を拾ったケイティ・マッケイブが交代で入ってたローザ・カファジにスルーボールを通して、ボックス内で思い切りよく打ったローザ・カファジのシュートがポストに当たった跳ね返りを走り込んだベス・ミードが押し込んだってゴールで、もちろん、ケイティ・マッケイブのタックルがファールじゃないのかとか、クロエ・ケリーともつれあったキム・リトルはファールじゃないのかとか、もつれあって倒れてる2人を飛び越えてプレイを続けたケイティ・マッケイブは抜け目ないとか、いろいろ論点があるとシーンだったんだけど。とはいえ、ローザ・カファジのシュートは豪快だったし、ちゃんと決めちゃうベス・ミードもさすがだったし、カタチは事故的だったけど、このままでは終われないっていうアーセナルの意地みたいなモノは感じたかな。

互いに譲らずドロー決着

その後も互いに攻め合ったけど、結局は互いに譲らずに2-2のドローで終わった感じで、ライブで観てたときには一進一退の攻防って印象で、それはそれで間違ってない気もするけど、改めてこうやって全体を観てみると、プレスがあまりハマらずに繰り返し前進されてちゃってた問題を最後まで解決できなかったように見えるマンチェスター・シティがちょっとだけ劣勢、アウェイだってことも含めて考えると負けなくてよかったって感じだったのかな。逆にアーセナルとしては勝っておきたかった試合だと思うし。もちろん、互いに決まっててもおかしくないチャンスはあったし、そういう意味ではどっちに転んでもおかしくなかったから、妥当な結果って言ってもいいくらい僅差だったとも思うけど。

お互いにUWCLのグループ・ステージ進出がかかった大事な予選ラウンドの1stレグと2ndレグの間の試合だったし、でも、開幕節では一番の注目が集まるビッグ・マッチだったし、もちろん、リーグ優勝を左右するって意味も含めて決して簡単な試合じゃなかったとは思うけど、期待を裏切らないナイス・ゲーム、いかにもWSLって感じのクオリティの試合だったじゃないかな。こういう試合でゴールを決めちゃうフィフィアネ・ミデマーとかベス・ミードはさすがスターって感じだったし、フリーダ・マーナムのゴールも見事だったし、もちろんジェス・パークのゴラッソは圧巻だったし。見どころが多すぎて、ピックアップしたシーンもすごく多くなっちゃったし。

ちなみに、この試合はエミレーツ・スタジアムのゴール裏の上層部だけ開けてなかったように見えたけど、それでも入場者数は41,818人で、やっぱりアーセナルの人気は圧倒的だな、と。それこそ、藤野あおばと山下杏也加は代表戦以外でこんなにたくさん入ったスタジアムでプレイするのは初めてだったんじゃね? とか思ったり。そういう部分も考えると、新加入選手2人をスタメンで起用してアウェイのアーセナル相手に拮抗した内容でドローって結果は、やっぱりマンチェスター・シティにとっては悪くない結果だった気がするかな。

ここから先は

0字

¥ 200

この記事が参加している募集

サポートしてもらえると今後も続けるモチベーションが上がるし、何よりも純粋に嬉しいです。