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'交代のカード'って何色?

*イントロダクション「サッカーを語る言葉を整理したい。」はこちら

最初に書いとくと、コレはたぶんほとんど実害がない、言ってみれば半分ジョークみたいな案件だけど、一応、思い出しちゃったんでせっかくだから忘れないように。ひとつ前の「'クサビ'は通じてるのか?」を書いてるときに思い出したんだけど、'交代のカード'って実はちょっと紛らわしくね? って件について。つまり、実況や解説がけっこう頻繁に使ってる「交代のカードはまだ2枚残ってますからね」みたいな表現ってことなんだけど。

サッカーの中継を観てると、実況が「どうやら交代選手を変更するようで、改めて用紙を第4審に提出していますね」みたいことを言う場面がたまにあって、実際にその場面が中継画面に映ったりすることもある。基本的には所定の用紙に必要事項をその場で記入して提出するって手順で交代は行われてるみたいだけど、実際には普通の白い紙を提出してて、一般的に'カード'と言われてイメージするような質感・サイズ感じゃなく、文字通り'用紙'って言われてイメージするような紙だったりする。

ちょっと脇道に逸れるけど、試しに「サッカー 選手交代 用紙」でググってみると、全国の都道府県や市町村のサッカー協会で使用されてるらしい用紙のデータがダウンロードできるようになってたりする。いくつかを見てみた感じでは、ピッチから出る選手とピッチに入る選手の名前と背番号だったりチーム名だったり監督の署名みたいな必要項目はもちろん共通してるんだけど、一律の定型が定められてるわけじゃないっぽくて、データ形式もPDFだったりエクセルだったりしてるし、デザインもいろいろで、逆に「このくらい緩い感じなんだな」なんて思ったりする感じだった。もちろん、プロのトップ・カテゴリがこんなに緩いわけじゃないんだろうけど。

ともあれ、交代のときに提出してるのはカードじゃなく用紙なんだったら、実況や解説が使ってる「交代のカードはまだ2枚残ってますからね」みたいな表現は実際にカードってわけじゃないってことになるわけで、文脈から考えて比喩として使ってるんだろうなって推察できる。おそらく、トランプとか花札みたなカードゲームがモチーフで、監督=勝負師が切り札を使うみたいなイメージなのかな、と。実際に「交代のカードを切る」なんて表現も常用句になってるし。それはそれで別に違和感はないし、それこそ'クサビ'と違ってトランプならたぶんほとんどの人が知ってるだろうから比喩としてもわりと上手い類いだとも思うし

ただ、ちょっと紛らわしいかも? って思っちゃうのは、サッカーの試合では実際のカードが登場する場面もあるから。しかも、わりと重要な意味を持ってたりして。もちろん、イエローカードとレッドカードのこと。実際に、選手交代のときに監督がカードに選手の名前を書いて提出するって思ってた知り合いがいるんだけど、「警告が黄色で退場が赤なら交代のカードは何色なの?」なんて普通に言ってたし。ちなみに、この知り合いは別にサッカー好きってわけじゃなくて、でも、サッカーにはイエローカードとレッドカードがあることは知ってて、中継で頻繁に'交代のカード'って言ってるからきっと別の色のカードがあるに違いないって思ったらしい。コレって、特にサッカー好きなら日頃は全然気にしてないけど、たしかに、言われてみればそう思っちゃってもおかしくないよな...って思って、ちょっとハッとしたりして。

わりと多くのサッカー中継で実況・解説が'交代のカード'って比喩表現を特に説明なく使ってて、もちろん「交代のカードはまだ2枚残ってますからね」は「交代選手の枠はまだ2人分残ってますからね」みたいに簡単に言い換えられるけど、でも、その比喩はわりとすぐにイメージができるし、「切り札を使う」みたいなニュアンスを込められるって意味では比喩として十分に効果的だし、ちょっとした勘違いを生む可能性はあるけど、その勘違いもそれほど実害が大きくなさそうで、「サッカーを語る言葉を整理したい。」の中で考えた「10歳児と留学生」って基準で考えても、ちょっと説明すればすぐにわかってもらえそうって類いの案件ではあるのかな。ただ、だからこそなのかもしれないけど、ほぼほぼ無自覚に使われてる用語の代表格とも言える気がしちゃうけど。

*分類:「比喩系」で「それほど実害はない」「一定の実益はある」けど「言い換え可能」ってタイプになるのかな。

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