見出し画像

フルネームで呼ばれがちな選手について。

*イントロダクション「サッカーを語る言葉を整理したい。」はこちら

閑話休題みたいなネタだけど、こないだSNSでこんなポストを見つけて、ちょっと面白いなって思ったんで。代表ウィークでちょっと暇だし。

ざっくり訳すと「フルネームで呼ばれがちなサッカー選手の名前を挙げていこう。まずはボクから。ソリー・マーチ」って感じかな。ここで名前が挙がってるのは、プレミアリーグのブライトン&ホーヴ・アルビオンのソリー・マーチ(Solly March)。改めて調べてみたら本名は'Solomon Benjamin March'でソリーってのはニックネームらしいんだけど、日本語実況が付く中継では普通に'マーチ'って言われることも多くて、「日本では別にいつも'ソリー・マーチ'って呼ばれてるって印象はなかったりするよな」とか思ったりして。ただ、日本でもこの手の話題はちょいちょいネタになるけど、「海外でも同じような話をやっぱりしてるんだな...」とか思いつつ、言語や文化の違いで'フルネームで呼ばれがちなサッカー選手'も違ってるのもちょっと面白いなって思ったってだけなんだけど。

ちなみに、このポストへのリプライに多くて、日本(語の中継)でも「あ、たしかにフルネームで呼ばれがちかも」って思ったのは、クリスティアーノ・ロナルド(Cristiano Ronaldo)、ロベルト・カルロス(Roberto Carlos)、エンゾ・フェルナンデス(Enzo Fernández)、チアゴ・シウヴァ(Thiago Silva)、ダニ・オルモ(Dani Olmo)、ジョアン・フェリックス(João Félix)、ドウグラス・ルイス(Douglas Luiz)、ジョアン・ペドロ(João Pedro)、サム・カー(Sam Kerr)とかかな。ちょっとググってみたら、日本では10年前に『フットボールチャンネル』で「ついついフルネームで呼びたくなるサッカー選手。その理由は?」なんて記事があったり、Jリーグ自体がSNSで動画付きで「#フルネームで呼びたくなる選手名 まとめ」なんてポストをしてたりするんで、やっぱりわりと好きらしい。個人的にパッと思い浮かぶのは、最近の日本人選手だと前田大然、上田綺世、田中碧、海外の選手で上で触れた名前以外だとブルーノ・フェルナンデス(Bruno Fernandes)とかになるのかな。

で、ちょっとマジメにこの'フルネームで呼ばれがちなサッカー選手'について考えてみると、基本的には文字メディアの表記よりも映像・音声メディアでの発語で問題になることが多くて、特に話題になりやすいのは中継の実況・解説だと思うけど、基本的にはわりと実務的な要請であるケースが多い気がする。一番わかりやすいのは、同じ試合の同じチームか相手チームに同じ名字の選手が複数出場してるケース。区別をするためにフルネームで呼ぶ必要があるし、この場合はネタとかではなく実況・解説はプロとして当然気を付けるべきポイントで、それを実行できるのは大事なスキルだとも言える。残念ながら、上手くできてない人もわりといたりするんだけど。例えば、最近の日本代表戦での伊東純也と伊藤洋輝なんかはすぐに思い浮かぶかな。海外リーグだと、今シーズンはプレミアリーグからチャンピオンシップに降格しちゃったけど、サウザンプトンのアダム・アームストロング(Adam Armstrong)とスチュワート・アームストロング(Stuart Armstrong)なんかは同時期用されることも多いし、背格好とか見た目が似てるわけじゃないけどポジションとかタスクが似てたりして、わりと実況・解説泣かせなイメージがある。もうちょっとトリッキーな例だと、マンチェスター・シティにダヴィド・シルバ(David Silva)とベルナルド・シウバ(Bernardo Silva)が在籍してたときに、どちらのことも'シルバ'って呼んじゃってた解説者がいたり。この2人の場合、アルファベットの表記はどちらも'Silva'だけどカタカナ表記は'シルバ'と'シウバ'で区別されてることが多かったりもして、表記の違いはともかく音としては区別しにくいし、マンチェスター・シティの試合は日本語の実況・解説が付くことも2人同時に出場するケースも多かったから、余計にフルネームで呼んでわかりやすく区別すべき案件だったんだけど。

蛇足だけど、この件で思い出しちゃうのはやっぱりちょっと前にJリーグで起こった'こばやしゆうき'問題。もちろん、問題って言っても当事者には何の責任もないんだけど、同じ時期にヴィッセル神戸に小林祐希と小林友希が所属してて、同時に試合に出たときに実況と解説がかなり苦労してたのを覚えてる。チームが違ってれば'チーム名+名前'ってカタチで混乱を避けることは可能だけど、このケースはチームまで同じだったから「ヴィッセル神戸の'こばやしゆうき'」って言っただけじゃ区別ができなくて。たしか、実況は「ミッドフィルダーの小林祐希」「ディフェンダーの小林友希」とか「背番号49の小林祐希」「背番号3の小林友希」って区別を試合を通じて徹底してて、「やっぱりプロってスゲエな」なんて思ったり。

ついでにもうひとつ、思い出しちゃったから書いとくと、Jリーグには'前'問題もあったりして。つまり、レノファ山口の前貴之とアビスパ福岡の前寛之の兄弟のことなんだけど。例えば、「インターセプトした前がそのままボールを前に持ち上がります」とか「前が横から足を出してブロック」みたいに名字だけで'前'って呼んじゃうと、前後左右の'前'と混乱する状況になりやすくて。'前選手'でもいいとは思うけど、フルネームでも呼んで混乱を回避してる実況者が多い印象かな。

あとは、同じ試合に出てなくても、そもそも同じ名字の有名選手がたくさんいるケースもそうなのかな。例えば、バルセロナのセルジ・ロベルト(Sergi Roberto)とか、単に'ロベルト'って呼ばれてる印象はほとんどなかったりするけど、それはやっぱりこれまでにたくさんの'ロベルト'が世界中にいたからだろうな、と。日本だと、もう引退してるけど中村俊輔とか中村憲剛、中田英寿と中田浩二なんかはこのケースって言えるのかな。

他にも、名字が極端に短い場合もフルネームになりがちかも。奇しくもちょうど現役引退のニュースを見かけたところだけど、ジュビロ磐田やガンバ大阪でプレイしたイ・グノ(李根鎬 / 이근호)なんかは、さすがに「イのシュート!!」なんて言われることはほとんどなかったと思うんで。そもそも、韓国人選手は短い名字とよくある名字のコンボが多い気がする。セレッソ大阪のキム・ジンヒョン(金鎮鉉 / 김진현)とか川崎フロンターレのチョン・ソンリョン(鄭成龍 / 정성룡)とか。

もちろん、必ずしも実務的な要請じゃないと思えるケースもある。「口にすると気持ちいいから言ってるんでしょ」的なヤツ。典型例として思い浮かぶのはやっぱりガイナーレ鳥取の長谷川アーリアジャスールかな。

ともあれ、実際にどう運用されてるのか、ちょっと興味があったりする案件かも。単に実況者(と解説者)の裁量なのか、局として何か原則とかルールみたいなモノを設けてるのか、機会があったら誰かに訊いてみたいもんだ。「サッカーを語る言葉を整理したい。」の中で考えた「10歳児と留学生」って基準的にも、「たぶん...」って感じでしか説明できそうにない案件だし。

ちなみに、特に海外選手の呼び方問題って一大テーマ、つまり、「'ハーランド'なのか'ハーラン'なのか'ホーランド'なのか'ホーラン'なのか」とか「'エンバペ'なのか'エムバペ'なのか'ムバッペ'なのか」とか、最近けっこう話題になってた例だと「'フラーフェンベルフ'なのか'グラーフェンベルグ'なのか」みたいなヤツは全然別のテーマだし、考えれば考えるほど厄介でほぼほぼ迷宮みたいな大問題なんでここでは取り上げるつもりはないけど。ただ、もうちょっと論点整理をして考えたほうがいいっていうか、活字の表記の問題と口頭の発語の問題の区別とか、言語圏とか国の文化の関係とか、いろいろ整理して考えたほうがいいんじゃね? って前から思ってたりはする。正直なところ、UEFAチャンピオンズリーグの中継を観てるときとか、WOWOWが頑なに使ってる独自の呼び方とか、一瞬イメージが結びつかなかったりして実はけっこうなノイズになってることが多かったりするし。まあ、稀に『サッカーキング』のエンバペ問題解決動画みたいなモノもあったりするけど。

*分類:限りなく「余談」だけど、実況者のスキルなんかを考えると実は「それなりに実益がある」でもあるのかも?

この記事が参加している募集

#サッカーを語ろう

10,836件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?