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【第19回JWCSラジオ リンク記事】 プラスチックに群がる野生動物と、その体内にある大量のプラスチック

スリランカ政府はようやく、使い捨てプラスチック製品の輸入、生産、販売、使用の禁止に踏み切った。施行は2023年6月からだ。

この国に生息するゾウやシカの死因の一つとして、プラスチックの誤食が挙げられ、大きな問題となっていた。


野生のゾウといえば、アフリカの自然公園内を悠々と移動するサバンナゾウを思い浮かぶ私にとっては、投棄場でゾウが餌を求め徘徊する写真には衝撃を受けた。


これまで、野生動物による誤食を防ぐために、スリランカ政府は使い捨てプラの禁止を講じる前、いくつかの試みもしてきている。

例えば、2017年実施の非生分解性のプラスチックバックの禁止、2020年実施のゴミ投棄場の閉鎖や電気柵・溝による野生動物の侵入防止措置である。

生分解性であっても、動物が生分解性を消化できるわけもなく、クジラの死体から生分解性プラスチックが消化されないまま残っていたという報告もある。

生分解というのは、

「生分解とは、単にプラスチックがバラバラになることではなく、微生物の働きにより、分子レベルまで分解し、最終的には二酸化炭素と水となって自然界へと循環していく性質」

日本バイオプラスチック協会 http://www.jbpaweb.net/gp/

であり、生物の体内で分解できるわけではない


ラジオでも紹介しているように、生分解性といっても、自然環境で分解されるのは実に難しい。なぜなら、生分解性プラが分解されるには、限られた環境でのみ効果的に分解されるからだ。

そのため、生分解性プラスチックも人工的な環境でしかほとんど分解できないのが現状である。

特に生分解性プラスチックは、酸素が少ない海中では土壌よりさらに分解率も下がるという(釜田 2019)。


また、電気柵はゾウには機能しないこともよく知られ、実際に私もアフリカに滞在していた時期に、電気柵をバキバキ折って電気柵内へ入っていくサバンナゾウを見たことがある。

アフリカの自然公園内でのサバンナゾウ


プラスチックの誤食はゴミ投棄場だけでなく、自然公園内でも起きている。Katlamらによる2020年のインドの研究によれば、野生のゾウの糞にプラスチックが含まれていた(Katlamら 2020)。著者は、分解されないプラスチックが糞としてゾウから環境に排出され、ゾウの大きな行動圏内でさらにばら撒かれることを懸念している(Katlamら 2020)。


また、これらの問題が起こっているのはいうまでもなく、スリランカだけではない。
タイで、死んだシカの体内から7キロものプラスチックゴミが出てきたり、


ミッドウェー島で発見されたアホウドリの死骸から、胃の99%をも占めたと推定される量のプラスチックが見つかったりしたこともある。



プラスチックが野生生物にもたらす影響について議論される時、よく取り上げられるのはウミガメだ。

ウミガメがクラゲと間違えてプラスチックバックを誤食している写真はよく見かけるだろう。

2015年のクイーンズランド大による研究によれば、世界のウミガメの半分以上がプラスチックを誤食したことがあるという。


スリランカの他にも、ケニアは、野生動物への影響を理由に挙げプラスチック使用や製造、輸入、販売を規制した。2017年にこの全廃を実施した。何より、これに違反すると最長で4年の禁固刑か200万~400万ケニア・シリング(約2,200,000円から4,400,000円)と罰金刑となる可能性がある。

さらにケニアでは、代替品として導入されたポリプロピレン製不織布も、2019年に製造、輸入、販売、使用が全面禁止された。再利用の難しさによる使い捨て利用の増加が問題となっていたためだ。


これらのプラスチックに関する規制には、禁止令の他にも課税や有料化によりものもある。一番これらの規制が進んでいる地域はアフリカ諸国だ (Plastic smart, p15)。

この理由として、これまで先進国のプラごみを含む多くのゴミがアフリカ諸国へ輸出され、それらの地域に捨てられていたことが挙げられるでしょう。

インフラやゴミ処理施設の不足、ゴミ処理技術の限界から、ごみの輸入量と処理量が追いついていない (Sadan と De Kock 2021)。


これらのことから言えることは、気候変動問題だけでなく、野生生物への影響を軽減するためには、生分解性に関わらず、プラスチックの使用料を減らしていくことが重要であるということだ。

一人一人が使い捨て利用を極力減らし、再利用可能な代替品を長く利用していくことが求められる。


【引用】 


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