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ヴィッセルはなぜ勝てない⁈

開幕6試合で3分3敗。名古屋、浦和、福岡、横浜FM広島、鹿島と昨年の上位チームが相手とは言え、苦戦を強いられている。

なぜ勝てないのか。いくつかの視点から見てみる

まずは選手起用における課題だ。
プレシーズンに試合を上手く組めなかったことが影響しているとは言え、選手個々の特性とフォーメーション、やりたいサッカーにズレが生まれているように感じる。代表格は今年から加わった扇原、汰木の起用法だ。

扇原はこれまでチームでスタメンを張っているサンペールとは違い、良いボールの奪い方から周りにボールを散らしながらゲームリズムを作っていくことに長けた選手であるように見える。神戸が採用している中盤1アンカーのダイヤモンドシステムの底のポジションは近くに味方がいない状況下でボールを受ける機会も多く、サンペールの様にボールを持った際にはある程度前へ持ち運ぶ軽やかな身のこなし、ドリブルで相手のファーストラインを突破することも時には求められ、マークにつかれた際には正確なボールコントロール技術が求められる自由度が比較的少ないポジションだ。一朝一夕にJリーグでもトップクラスのアンカー選手であるサンペールの様なタスクを90分通して求めることは酷であろう。そのため、扇原はダブルボランチでの起用が有効なのではないかと考える。インサイドハーフやサイドバックなど最適解を見つけるべく三浦監督も彼をポリバレントに起用しているものの、現時点でどのポジションでも中々試合のリズムに入れていない印象だ。その中、横浜FM戦では山口と共にダブルボランチでスタメン出場したが、2人の阿吽の呼吸で攻守のバランスを取りながら、ボールを散らしていく扇原の良さが試合の前半は出ていたように見えた。さらに汰木。彼は個人で相手を剥がしながらリズムを作りつつフィニッシュまでいける良さを持っている。そのため、現在の中盤ダイヤモンドでは彼の最適なポジションはないように感じる。前述の扇原との同時起用で4-4-2のサイドハーフや3-5-2のウイングバックでの起用が彼の崩しの良さを活かせるのかもしれない。過密日程も考えればサンペール、イニエスタを軸とした中盤ダイアモンドの4-4-2だけではない立ち位置の決め方が求められているように感じる。このように怪我人等も含めメンバーやフォーメーションが固定できないことで毎試合出る課題が少しずつ異なり、修正がかけられていない弊害が出ている様に感じる。

次は試合の中での課題を見てみる。

1番は中でもサイドでも深さを取った際に顔を出す選手が少なく、全体が止まってしまっていることが気になる。酒井や山口、サンペール、イニエスタといったコンビネーションを取ろうと仕掛けのパス、所謂縦パスをつけることができる選手は数多くいるものの、つけるタイミングでの選手間の距離が遠いのだ。選手間の距離が遠いことで起こる不利益は大きく2点。1点目はビルドアップ時の立ち位置自体が不安定となり、ズレが生まれることだ。名古屋戦、浦和戦では中を意識しすぎる余りにパスが引っかかりピンチを招くシーンが多かった一方で、横浜FM戦、鹿島戦ではサイドに張る選手はいるものの、中で顔を出す選手が少なく相手に潰され、パス出しに苦戦した。その立ち位置の良いバランスが出た選手の中で共有できていないことが攻めのリズムが生まれない要因であるように感じる。2点目は攻から守への切り替え時の連動が生まれにくく簡単にファーストラインを突破されてしまうことだ。前線の選手はボールを取られた後すぐに相手のビルドアップを突破させまいと前からプレスをかけるも各選手の距離が遠く、ここが遅れてしまうため、セカンドラインの選手も出るのが遅れ、連動が出来ないという負の連鎖が守備にも出ている。これらが今までの6試合全てで見られるように感じる。

次にこれらの課題を改善するための方法はあるのか考えてみる。

3センターの3-5-2システムにし、ウイングバックとして初瀬、酒井を立たせるのはどうだろうか。最初からウイングバックとして高い位置で幅を取れることでサイドで深さを取り、周りの選手を引き出す時間が作れる。また、3バックとGK、アンカーの5枚でビルドアップができることで後ろでの数的優位を作れ、攻守における安定感を持たせることも期待ができる。また、試合を通して裏を取るランニング、ダイアゴナルに走る動きが少ない。こうした動きは崩しや深い位置で時間を作るには必要だ。今こうした動き出し、呼応してパスを出せる選手がいないのだ。その中で光となっているのが小田だ。広島戦、鹿島戦とリンコンとのコンビネーションで自慢のドリブル突破や斜めへの裏取りのランニングでポールを引き出す場面が多く見られた。こうした小田のような動きに後ろの選手が連動してコンビネーションを取れるようになるとヴィッセルの攻撃にリズムと迫力が生まれることが期待できる。このように立ち位置の変更と前線の動き出しの質の向上に改善の余地があるように感じる。

選手の特性、試合における課題が浮き彫りとなった神戸だが、小田やリンコン、佐々木など昨年は中々試合に絡めなかった選手達が躍動しようとする新たなチームの形を模索している途中であると期待して課題を解決しながらより良い方向へチームを持っていくことを期待したい。