【Jドラマ】「やっぱり猫が好き」に<フェミニズム>の気配を感じた。
「やっぱり猫が好き」は社会風刺のドラマ
『土佐日記』(紀貫之)を借りて、「女もすなるふぇみにずむといふものを、男もしてみむとて、するなり。」――などと、「やっぱり猫が好き」と<フェミニズム>について、ここしばらくのあいだ考えこんでしまった。
どうして、YouTube版「やっぱり猫が好き」を観て<フェミニズム>を連想したのか。
それは、「やっぱり猫が好き」の恩田三姉妹の長女(もたいまさこ)が帰宅するなり、妹たち(室井滋、小林聡美)にぶちまけた「(会社の)部長にガツンと言ってやったのよ」というセリフと、次女(室井滋)の「会社は男社会よ」というリアクションがキモだったからだ。
(「やっぱり猫が好き」から「かや乃の悪いクセ」の巻より)
「やっぱり猫が好き」が放送されたのはバブル真っ盛りのころ(1986年12月~1991年2月)だが、当時の女性たちには「会社」あるいは「社会」は男たちが牛耳り、女性はそれに従うしかない、という諦めがあったように、ドラマを観る限り思う。
だからこそ、長女(もたいまさこ)が、<男社会>の身近な存在である部長に「ガツンと言ってやった」というのは、明らかに<男社会>に対する<抗議>であり、たった一人ではあるけれど、それだけに勇気ある<行動>だったように思う。
ただ、この<行動>が<フェミニズム>とイコールなのかどうか。
ためしにネットを検索してみると、村井真子さん(社会保険労務士・キャリアコンサルタント)が、<フェミニズム>を次のように定義していた。
また、村井真子さんの論考の「フェミニズムの四つの波」によれば、1980年代のバブル期は、<第2波>の<ウーマン・リブ運動の広まりからブラック・フェミニズム運動の台頭へ>の最後のほうにあたる。
「やっぱり猫が好き」の長女(もたいまさこ)は、<ジェンダー論>が活発になる<第3波>(1992年~2000年代)とのちょうど端境期を生き、「性差別をなくし、性差別的な搾取や抑圧をなくす」ため、<男社会>にたった一人で格闘していたとも受け取れる。
恩田三姉妹はバブルの恩恵を受けていた
一方で、バブルというのは、いま思うと、教科書で習った『方丈記』(鴨長明)の有名な冒頭の文章ではないけれど、「うたかた」(水面に浮かぶ泡)そのものだったような気がする。
バブルのころ、都心の勤め先周辺は、札束をかざした<銀行と地上げ屋>によって、地域に愛された商店が次々と立ち退きを迫られ、その結果、空き地が虫食い状態のように広がり、その狭い坪地を有効活用するため、あちこちにペンシル型のビルが次々と建ち、街はわずか数年で様変わりしてしまった。
そのいずれ来る荒廃を知らず、どの会社も給料は右肩上がり、海外旅行熱はヒートするいっぽうで、パチンコ屋やスナックでは光GENJIの「パラダイス銀河」や長渕剛の「乾杯」といったヒット曲が有線放送でガンガン流れ、今思えばあぶく銭(バブル)に目がくらんだニッポン狂騒狂乱の時代だった。
「やっぱり猫が好き」の恩田三姉妹もバブル景気の恩恵に浴していたはずだ。
現に、ディズニーランド近くに開発された高価なマンションに姉妹は暮らしていた。
ネットの<LIFULLサイト>の<間取り探偵>さんが、次のようにリアルに活写しているのがおもしろい。
(1) 恩田三姉妹が最初に住んでいたのは千葉県浦安市の1LDKマンション。
1LDKといっても、第5次マンションブームのさなか、狭い間取りでもマンション価格は高騰していた。
(2) 次に、恩田姉妹は浦安から引っ越し、千葉県幕張の3LDKマンションに移った。
(3) 最後は、なんと東京・渋谷のメゾネットタイプの4LDKマンション。
<間取り探偵>さんの推定では、当時、中古だとしても1憶円はくだらない物件とか。
https://www.homes.co.jp/cont/living/living_00314/
経済的な自立は<フェミニズム>の基盤
こうしたバブルの恩恵――マンションの資産価値の上昇は、果たして恩田三姉妹の幸福に結びついたのだろうか。
もちろんフィクションだから、想像するしかないにしても、一つだけは言える。
恩田三姉妹は、可処分資産を得て、自分たちの判断でどのように生きるかという人生の<選択の自由>の幅を広げることができたはずだ。
女性の社会進出による、経済的な豊かさは精神的な自立へのインフラであるのはもちろん、女性の<フェミニズム>の基盤になったと思う。
「ガラスの天井」は男と一緒に打ち破る!
<男性支配社会>の象徴である「ガラスの天井」(※ヒラリー・クリントンがトランプとの大統領選で演説に用い、いちやくポピュラーになった言葉)を打ち壊す手立てとして、元TVキャスターの安藤優子さんはこう言っている。
これを男性に依存した発言であると思うかどうかはさまざまな意見があるだろうが、文学・ドラマ・映画の表現ジャンルで<フェミニズム>先進国である韓国においては、すでに男女共闘である。
――次回は、「ブラッシュアップライフ」に、1960年代の<ウーマン・リブ運動>の影響があったのかどうか、それを考えてみたい。
(つづく)
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