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武道の極意・秘伝集5

「気の扱い」起倒流伝書より
気は体の満つるところである。気が起こるのを陽といい、気が納まることを陰という。当流はもっぱら気の扱いを教えて技をなし得る、と言うけれど、気は目に見えるものではない。体の備えが悪ければ、気も同様に、たるんでしまい効能を発揮できない。平生安坐した形は、理気満々として安体無事である。
そうであるのに、所作をして、動き働きをすると、その技に連れて、左右にかたより、平生の気を損じてしまう。こういうことがあるので、当流が秘して教えるのは、自分が方寸(胸(心臓)の中)の元気を養い、ものに心を留めず、その基となるところを堅固に守れば、技を掛けようとして色々動いても、根本の元気は立ち座って、正しいがために、用いる気は自由自在になり、左に力を入れても、右の力が抜けることはなく、右を使っても、左がおろそかになることはない。前後も同じである。起居動静とも常遍の平気(気が穏やかで、おちついている)となる。これがすなわち、天之巻でいうところの不動智である。負けないための備えがあれば、勝つべきはかりごとある。また、聖言に克己ともいう。己に勝って体が正しいときは、千万人にも勝ちの理があるのである。

補足説明:起倒流には、「本體」「天之巻」「地之巻」「人之巻」の順をへて「性之巻」が授与されます。本項は「地之巻」の気体之事の引用です。同巻では不動智や無拍子の心得について説かれています。
なお、起倒流については、「極意秘伝のはなし17~20」に記事があります、参考にしてください。


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