見出し画像

武術の稽古の秘密(上)

冷暖房完備の恵まれた環境の道場はうらやましい限りです。そのような環境でない場合、特に、夏は汗だくになり疲れ、冬は厚着しないと耐えられない、そうでなくとも極め技が痛いなど文句の種は尽きませんが、稽古はやめない。月謝がもったいないから、先生が怖いから、やめないのではなく、楽しいから続けられる、ということでしょう。楽しいことは、大きな価値があると思います。

さて、武術を含む芸道の稽古には、楽しさ・面白さを手に入れる仕組みが内包されています。その仕組みに乗っかることができると「ハマった」というのでしょう。

武術は負けないこと、勝つことを追求する技術ですが、強さが最大になると、逆に面白さは最小になってしまいます。逆説的ではありますが、武術はヒトと人のコミュニケーションの一手段だからだと思います。まず、ヒト同士の共通認識が根底にあり、相手の技術の完成度を自分の経験と想像から推測し評価する。ただ、低い位置から、目の前にある2棟の高いビルを仰ぎ見ても、どちらのビルがより高いのかはなかなか見分けられません。初心者がどの先生につけばいいのか、わからないということですね。

こうして、評価され淘汰され残ったものが「形」として伝承されてきたのです。ただ、目に見える形(動き)は、伝承(コピー)可能ですが、本来「形」とセットであった体の感覚は抽象的なもので、属人的なものです、
この意味で「形」の伝承は困難なことから「武芸は一代」ともいわれるのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?