見出し画像

日本の障害者福祉予算は高いのか1/2(制度の歴史)#17

どうも、ゆうちゃんです。2年前に高気密高断熱住宅を新築で建て、現在2児の子育てをしながら仕事をしています。私のnoteでは趣味のコーヒーに関すること、育児と仕事を両立させていることなどについて、住宅というキーワードと重ね合わせて発信しております。これから住宅取得を考えたい方や、人生の質を高めていきたいと考えている方に一つでもプラスになるものがあればと思い、実体験も含めた発信を心がけています。
詳しくは#1で自己紹介しておりますので、ぜひお読みください。

私が勤めているのは障害福祉サービスを運営する団体です。社内には、目的の異なる福祉サービス事業がいくつもあり、そのうちの一つの事業を担当しています。主な提供サービスは以下の通りです。

  • 共同生活援助(グループホーム)

  • 生活介護

  • 生活訓練

  • (宿泊型)自立生活訓練

  • 就労継続支援A型・B型

  • 障害者生活支援センター(行政から受託)

  • 地域活動支援センターⅠ型

この事業は、障害者総合支援法という法律が根拠法となっております。前身は、2006年に施行された障害者自立支援法です。名前は変わっていますが、内容は大きくは変わっておりません。
ここでざっくりと制度の変遷を。


〇障害者総合支援法のはじまりへ

まず、2004に厚生労働省から今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)が出されます。(それまで日本の障害者施策は措置制度によって全額公費で運用)もしご関心のある方がいらっしゃれば資料をご覧ください。飛ばしてもOK。

これは既に施行されていた介護保険制度(2000年~)などの公的保険制度とは異なり、国の歳出が多く、もっと持続可能なものにしていく必要があると検討されて保険化も視野に入れていこうというもの。さらに、必要な人が必要な分だけ利用できるものにしていくために、障害程度区分という評価軸を設けて利用できるサービスや量を定めて適正化を図ることも盛り込まれました。利用者負担についても介護保険制度同様にしていく流れがありました。
この改革のグランドデザイン案の内容が大いに反映されて作られたのが障害者自立支援法です。前述のとおり、利用料負担、障害程度区分などが盛り込まれ、利用者と福祉事業所側との利用契約によって支援を受けられるようになります。自立支援法というくらいですから、障害者の自立に向けた支援をすることが目的です。つまり、支援によって障害状態を軽減させてサービス利用量を減らし、公費負担を少なくしていくことが一つあります。

しかし、多くの障害当事者や障害者団体からの猛反発により、国を相手にした訴訟では原告側の勝訴。国側と基本合意書を交わし、自立支援法の廃止と障害者の自己負担をなくすことや新法の制定などが約束されました。その後、障害者制度改革推進会議総合福祉部会が立ち上がり、障害当事者が参画して障害者自立支援法に代わる法律の制定に向けて動き出しました。部会によって新法制定に向けた骨格提言が作られ、その骨子をベースに新制度となるはずでしたが、実際には廃止となるはずだった障害者自立支援法の内容はほとんど変わらずに名称変更(障害者自立支援法)のみ行われました。

↓こちらマニアックですが、よかったら見てみてください。

あまり表に出てきませんが、措置制度から障害者自立支援法ができるまでの間に支援費制度というものがありました。2003~2006年までの3年間のみでしたが、利用者と施設側の契約によってサービス提供することが試行的に行われていました。

支援費制度の構図

〇格差は広がる一方

日本の障害者施策は歴史的にはまだ浅く、第二次世界大戦以後につくられた身体障害者福祉法がはじまりです。精神障害者はさらに歴史が浅く、身体・知的障害と比べて制度の発展が遅かったため、障害者手帳も1995年の精神保健福祉法への改正と合わせて持つことができるようになったばかり。そもそも1950年までは医療の対象ですらなく、私宅監置といって自宅内に檻を作って家族が監視することが合法化されていました。他の先進国から比べても日本の精神保健に関する施策の発展はとても遅く、精神病院を減らしていく流れにある中で日本は増やしていった時期もありました。そのため、現在も日本の精神病床数は世界トップを走り続けています。

日本の病床数より

少し逸れましたが話を戻します。現行の制度は、年々国の歳出額が増えており右肩上がり。3年に一度報酬改定が実施されますが、大きな方向性としては歳出額を抑えることにかなり力を注いできています。所管庁は厚生労働省ですが、グイグイきていてグーの根もでないのが財務省です。後編で触れていきたいと思いますが、適正化という名の予算カットですね。
こうしたことが積み重なってきて行く先はどうなるかというと、資産がある方はバリエーションのあるサービスから選ぶことができ、経済的貧困状態にある方が最低限利用できるサービスがどんどん減っていってしまってぎりぎりのところで生活を強いられるようになるでしょう。措置制度から契約制度に変わった流れで、福祉事業に民間企業が参入してくることが可能となりました。民間企業は福祉サービスの運用にうま味がない(収益性がない)と分かればとっとと撤退してしまいますので、利用者(顧客)の対象化や高価格サービスの提供によって収益を上げていく流れになるのだと。

私としては、高価格帯の質の高いサービス提供と利用者の満足度が=(イコール)であるならば、選択肢の一つとして広がっていくことは良いと思います。その施設で働くスタッフの処遇も良くなっていくでしょうし、高価格帯のサービスを受けている方々との接点を持つことができて、その後の可能性が広がるかもしれません。#下心丸出し

心配なのは、最低基準がどんどん引き下げられていってしまうことです。度重なる歳出抑制や報酬改定によって、財政的な持続性がどんどん失われていきます。それによって、利用できるサービスが限定されてしまい特別なニーズがある方はこぼれ落ちてしまうことが起こりかねません。また、利用料負担によって利用抑制が起こってくるでしょう。(実際に2006年の自立支援法時に起こりました)
このように持つ者と持たざる者とで受けられる支援の質と量に大きなギャップが生まれてしまうことになります。

〇本当に必要な人が受けられる社会保障の構築

では、日本の社会保障のスタンスはどこにあるのでしょうか。社会保障はざっくり分けて医療・年金・福祉(介護含む)の3本柱です。現状は、医療と年金が予算の大半を占めている状況。高齢者の数を中心にその予備軍も含めて右肩上がりに増えています。それに準ずるように年々自然増分があって、歳出額も増え続けています。なので現役世代の私たちからの徴収額がどんどんどんどん増えているのですが。。。これでは社会保障制度の持続性が担保できません。
今後しばらくは社会保障費(社会保障給付費と関係費)の歳出部分の適正化が図られていくでしょう。日本の社会保障のスタンスは本当に必要な人が受けられるようにすることなので、その世界戦で戦っていくことになります。まずはマイナンバーで資産を補足し、所得ベースではなく所得+資産(金融が精一杯?)で給付の必要性を判断していくこと。同時に現役世代の税負担の軽減を図っていくのではないかと思います(期待も込めて)。

〇まとめ

一つの記事にまとめようと思ったら長くなってしまいそうでしたので、前後編にまとめさせていただきます。社会保険料については昨今話題になっており、料率上げすぎ問題が取り沙汰されています。しかし、障害分野に関してはほとんど語られずに、ほぼ誰も知らない状態にあると思いましたので、次回お伝えしていきます。
(後編はこちら⇓)

私たちはいつ何がきっかけで障害状態になるか分かりません。その時に、誰に相談すればよいのか、どのような支援を受けることができるのかなど知っておくことができれば、深刻になる前に対処できますし、知っているということがいざというときの精神的安定につながるはずです。そのためにも、まずは大枠ですが捉えていけたらいいと思いましたので、また次回よろしくお願いします。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。ゆうちゃんでした!

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートは発信者としての学びのために使わせていただきます!