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社会人のための獣医学科(獣医学部)受験講座1

私のところに「社会人だが、獣医学科(または獣医学部)を受験したい。」という質問をたくさんいただきます。
質問が共通しているので、こちらで掲載し、お返事の代わりとしたいと思います。
受験の事情や、資金調達などは個人それぞれですが、基本的なことを書いておきますので何かのお役に立てば幸いです。
ただし、漠然と「勉強していたらいつかは獣医師になれるかも」という方には毒になりますので、そういう方はご覧にならない方がいいかもしれません。

1 はじめに


最初に言っておきますが、獣医師はさほど儲からない職業です。
というより、儲ける人とそうでない人の差が大きいのです。
だから、あなたが学費を1200万投資して、医師や弁護士ほどのリターンが保証できません。
場合によっては薬剤師の方が収入か確実かもしれないのです。
いわば「ハイリスク・ハイリターン」の投資です。
「同じ学力を使うなら、確実にリターンの見込める職種の方がよいかもしれない」ということをよく検討してください。
検討にあたっては、一人でこっそりこんなサイトを探さず、家族や親しい友人、そして仕事がある程度うまくいっている人に聞いてください。
責任のない人ほど、甘いことを言いますので要注意です。
大切な人生、そしてお金を長期にわたって投資するのです。
自分への投資だから、よく考えて進路を決めてください。
女性の場合、隣にいて「結婚しよう」と言ってくれる彼を選択する方が効率のよい人生かもしれません。
まして、これほどいろいろなことが厳しくなっている昨今です。
「なぜ再受験なのか?」
「なぜ医学部や薬学部でなく、獣医学部なのか?」

そこを検討していただきたいのです。

2 まず情報を集めよう

1でお伝えしたように、ご自分の学力の評価・手持ち資金・家族の協力をすべてテーブルの上に出して、その上でどうするかをご検討ください。確かに何とか資格を取るところまでいけば、就職はいろいろ見つかる職種ですが、「どこで」「どんな風に」「給与はいくらで」働くかは人それぞれです。その将来の姿もテーブルに載せなければなりません。その上で動き始めても遅くないと思います。予備校の模試を受けたうえで相談にいくのも良い方法です。
え、この年齢で18とか19歳の子と机を並べるの?と仰る方は再受験に向きません。合格しても同じ状況です。「おじさん」「おばさん」と綽名がつくことだってあります。そこもひとつのハードルなのではないかと思います。

何度も繰り返しますが、数字の上での客観的評価、これがまず第一です。

3 それでもやってみたいという方へ


これは「心構え編」です。
人は精神が揺らがなければ、何でもできるのです。
ということで、テーマは
「受験に向かっていく自分を評価し、その過程を楽しもう」
ということです。
あなたが「獣医学科を受験しよう!」と思い立つ。
もしあなたに介護が必要な親御さんがあれば、それは不可能です。また、債務などがあっても、返済でそれどころではありません。
仮にも、もうひとつ別の人生をやろうということが「考えられる」。
この「考えられる」が凄いのです。
あなたの周囲の100人中85人くらいは「考えられない」ほうに入っています。
使命感がないとか、勉強がきらい、とかそれ以前に、不可能なのです。
だから、まず、こうしたことを少しでも検討できた自分の環境に感謝する。
感謝なしに、長い受験勉強は続きません。
自宅でやむを得ず学習するにしても、予備校に行くにしても、感謝なしにはできないのです。
そして、それができたら、次は、
目標に向かって進んでいる」ことを楽しむ。

勉強している過程が楽しくなかったら、何年も無駄なことをやっていることになるのです。
それならそのお金で旅行でもしたほうがずっといいのです。
だから、もしこれを読んでいるあなたが受験勉強をしているなら、受験勉強が苦痛であってはいけないと思います。
過程そのものが楽しくないと、続かないし、身につかないのです。
だって、嫌なことは身につきません。
だから、勉強を始めているなら、参考書を開くたびに、
「こうして今の環境に甘んじないで、未来を自分で選べる自分はなんて幸せなんだろう!」
と思うことを強くおすすめします。そこで一つの選択がかかるのです。
「俺より頭が悪いくせに医学部に親のカネで行ったヤツを見返そう。」
とか
「毎日上司が偉そうでうざいから、早くこんなところ脱出してやろう。」
とか、そういう人は合格しません。学習するエネルギーの源があまり幸せでないところにあるのです。
幸せな人は幸せを寄せます。きっと合格も。
って、なんだか教祖様のような話になりましたが、これは真理です。獣医師は一生勉強が続きます。そのスタンスは今から身につけていただきたいと思います。
【参考サイト】
続編を書いています。こちらもご覧ください。


社会人のための獣医学科(獣医学部)受験講座3

似内惠子(獣医師・似内産業動物診療所院長))
(この原稿の著作権は筆者に帰属します。無断転載を禁じます。)
似内のプロフィール
https://editor.note.com/notes/n1278cf05c52d/publish/
ブログ「獣医学の視点から」

オールアバウト「動物病院」コラム
https://allabout.co.jp/gm/gt/3049/



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