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気をつけよう、植物の誤採集・誤食

先日山羊の診療に伺った際、スイセンを間違って食べて…という話を伺いました。誤採集のトップはきのこ類ですが、身近な植物でもよくあることなので、何点か注意喚起も含めて紹介したいと思います。

1 スイセンとニラの誤食

スイセンもニラも庭に植えられることの多い植物です。隣接して植えたりすると、間違えて取ってしまうこともあるようです。スイセンの有毒成分はリコリンでアルカロイドでです。スイセンは全草が有毒ですが、鱗茎で特に高濃度となっており、ヨーロッパなどの海外ではラッパスイセンの鱗茎による中毒が多いようです。また、スイセンにはシュウ酸カルシウムという有毒成分も含まれており、接触性皮膚炎を起こします。
中毒の症状は、悪心、嘔吐、下痢、流涎、発汗、頭痛、昏睡,低体温など
 
中毒事例1:茨城県阿見町の10歳未満~40代の男性3人がスイセンの球根を誤って食べて腹痛やのどの痛みを訴え、食中毒と断定した、と発表した。 県生活衛生課によると、家族のうち1人が、知人から観賞用としてスイセンの球根を譲り受けたが、その情報を共有していなかった。18日午後0時45分ごろ、別の1人がタマネギと間違えてカレーの具材として調理し、家族4人で食べたという。午後1時ごろに3人が腹痛やのどの痛みを発症。保健所が残ったカレーや球根を調べたところ、有毒成分リコリンが検出された。3人の症状はいずれも軽症で、既に回復しているという。(朝日新聞)
中毒事例2: 石川県珠洲市で3月、農産物の直売所でスイセンがニラと間違えて販売され、買って食べた家族4人が頭痛や嘔吐(おうと)などの症状を訴えた。スイセンは、豚キムチの具材として使われていた。同県食品安全対策室によると、スイセンに含まれる毒性成分が原因の食中毒で、幸い全員が軽症だった。同室によると、出荷した生産者がニラを栽培していた畑の近くでスイセンを育てており、「似ていたので間違えた」と話しているという。
と、よく見ると間違うはずのない植物ですが、時としてこうしたことは置きます。
再度違いが判るように画像を掲載します。

2 ギョウジャニンニクとイヌサフランの間違い

ギョウジャニンニク(ユリ科)は北海道、本州中部以北の林下に生える多年草です。7月頃、葉の間から花茎を出し、茎の頂上に白い小さな花を多数付けます。自生地では山菜として食用にされ、名前も深山で修行中の「行者」が食用にすることに由来するそうです。
イヌサフラン(ユリ科)はヨーロッパや北アフリカ原産の多年草で、9月頃、地中から長い花筒を出してピンクの花を咲かせます。花が美しく、コルチカムの名で観賞用に栽培されることがあります。アルカロイドのコルヒチン( colchicine )が、種子には 0.2 ~ 0.6 %、鱗茎には 0.08 ~ 0.2 %含まれます。中毒症状嘔吐、下痢、皮膚の知覚減退、呼吸困難。
重症の場合は死亡することもあります。
スズラン・バイケイソウも間違えやすい植物です。

ギョウジャニンニク

イヌサフラン

中毒事例1:海道帯広保健所は23日、管内の80代女性が有毒なイヌサフランの球根を煮物にして食べ、死亡したと発表した。ジャガイモやタマネギと似ていることから、誤って食べた可能性があるという。同保健所によると、女性は12日に自宅の庭に植えたイヌサフランを食べ、嘔吐や下痢などの症状を訴えた。13日に病院に搬送されたが、14日に死亡した。

 警察の司法解剖で、体内からイヌサフランの有毒成分「コルヒチン」が検出され、保健所が食中毒と断定した。イヌサフランは観賞用の植物として知られるが、他の食用植物と似ていることから誤って食べるケースが相次いでいる。4月にも道内の空知地方に住む70代男性がギョウジャニンニクと誤って食べて食中毒を起こし、死亡した。
中毒事例2:群馬県において、知人から受け取った野草(イヌサフラン)をギョウジャニンニクと思って食べたことにより、食中毒が発生しました。2人が食べ、2人とも発症し、うち1人が死亡しました。また、6月には秋田県において、自宅敷地内に生えていたイヌサフランをウルイと間違えて採取して食べたことにより、食中毒が発生しました。1人が食べ、発症し、死亡しました。
ギョウジャニンニクの芽生えには特有のニンニク臭がありますが、イヌサフランの芽生えには臭いはありません。ギョウジャニンニクの芽は、葉が1〜2枚ですが、イヌサフランの芽は、葉が多数重なり合っています。

3 取らない・食べない・人にあげない

中毒事例にあるように、人からもらって食べ、中毒が発生することもあります。いくら山菜や野草に自信があっても、区別の難しいものは食べない・取らない、人にあげないのが大切です。

4 山羊や羊を草取りに貸し出す際も注意


また、放牧の家畜の草の管理にも気をつけていただきたいところです。特に山羊・羊は「掃除をしてくれるからいい」と貸し出しを依頼されたりすることが多いと思いますが、先方の草地は囲われているのか、単一の草が生えているだけなのか、そのあたりもよく確認しましょう。心配なら課さないという選択もあります。放牧は一見健康的ですが、いろいろな危険を含んでいることも考慮してください。

似内惠子(獣医師・似内産業動物診療所院長))
(この原稿の著作権は筆者に帰属します。無断転載を禁じます。)
似内のプロフィール
https://editor.note.com/notes/n1278cf05c52d/publish/
ブログ「獣医学の視点から」

オールアバウト「動物病院」コラム
https://allabout.co.jp/gm/gt/3049/







 


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