ペットの死に向き合う
先日ある方から相談を受けました。その方は12歳のダックスフントを亡くされたばかりでした。獣医師として何を申し上げてよいかわかりません。特に自分が診療にかかわっていない場合、不用意な発言は相手を混乱させるだけです。
死を体験した時に、起こる感情
いろいろなグリーフケアのサイトで書かれていることですが、まず起こる感情は喪失感です。無意識に死んだ犬や猫を探します。毎日一緒にいたのですから、当然のことです。
探す⇒いないことがわかる⇒事実に向き合う⇒落胆する
毎日これが繰り返されます。
同時に起きることは、「怒り」です。高齢や病気で死んだ場合も、どこかにこの感情を向けたくて、怒りの対象を模索します。獣医師がターゲットになる場合も少なくありません。
私も子犬がワクチンの後で死んだとき、「お前が殺した」と言われたことがあります。事態の収集には院長の対応をお願いするしかありませんでした。この飼主も通常であればこうしたことは言わなかったでしょう。生き死にというのは本当に難しいものです。
その後の経緯
こうした状況がどのくらい続くのでしょうか?
世の中に四十九日という言葉があります。7週間、気持ちの整理をするには良い期間です。飼い主の中には、この期間に大急ぎで次の犬や猫を探す人がいます。果たしてそれは正しいのでしょうか?そのような行動を取った飼い主からよく聞く言葉、それは「前の子と違う」
というものです。同じである訳がありません。気持ちの上で死んだ子とちゃんとお別れしないで、次を飼うのは可哀そうだと思います。
また、「もう何も飼いません」という方もあります。こうした方は、次の縁があるまで待てる方です。それも大切だと思います。思いがけず庭に迷い込んだ猫を飼われるのは、こうした方です。
ペットロスにならない事前対策
いろいろな飼い主を観察していて、気づいたことは
もう1頭(あるいは2頭)いると、落胆が少ない
ということです。高齢犬(猫)の飼い主に、冗談めかして、「もう一頭飼っておくといいかもしれないですね」と言いますが、実は意味のないことではないのです。犬も猫も飼い主の気持ちをよく判っていますので、同僚(犬?猫?)が死んだときは飼い主を慰めてくれます。
いずれにせよ、「ドッグイヤー」という言葉がある通り、ペットは人より早く死ぬのです。亀など飼うといいのかもしれませんが、今度は自分の死後どうするか?が次の課題になってきます。
似内惠子(獣医師・似内産業動物診療所院長))
(この原稿の著作権は筆者に帰属します。無断転載を禁じます。)
似内のプロフィール
https://editor.note.com/notes/n1278cf05c52d/publish/
ブログ「獣医学の視点から」
オールアバウト「動物病院」コラム
https://allabout.co.jp/gm/gt/3049/
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