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踊りのためのノート2:Letter to Sing

鏡と森。
彩度の低い、みずみずしさ。

伝統への反発が、18世紀後半に悪魔や妖精が自在に登場する幻想的な舞台舞踏を生んだ。
資本主義革命が現代にも続くバレエの潮流の基礎を作った。
軽やかな動きは、それまでの時代の前提となる「地」に足をつけることへの拒絶ともいえる。


だが全てを投げうって現実に争う選択は
果たして人生で何度、許されているのだろう。

これは祈りの歌だ。

祈りの歌であるにもかかわらず、
怒りにも満ちている。

怒りのエネルギーが、曲の源泉となることがある。
耐えがたい苦痛こそが、慈雨を降らせるように。

根を深くはった大木に反逆するためには
重心が低くなければならない。

すべてのやさしさの中心は、鉛だ。
かつて鉛を飲み込んだ人だけが、やさしくあることができる。

鉛を含んだ身体を持って、曲の最中に生きることができたなら、
どんな気分だろう。

はじめて聴いた歌に、思わず心が揺さぶられる瞬間。
目の前の色に、初めて気づいたようにハッとする瞬間。
何の前触れもなく訪れる「瞬間」に、私たちは生かされている。

怖がる必要はない、と、
ある音楽家が歌を重ねてくれたことで、この曲は希望を孕んだ。


「いい曲」と共に在ることはまるで、

あたかもその曲の演奏が開始された時点で"初めて演奏する身体が生成された"かのように、わたしたちに"生き直す"許可を与えてくれるような。
入力と出力が同時に生成するその地点にそっと、曲のコアがあり、自身の身体と楽器という"器"を通じてそこにアクセスすることが許容されるような。
こちらが圧倒的にunreadyなコンディションである時でさえ、0から1が生まれる、ダイナミックな変容のような。
座り込んでいた踊り手が、立ち上がり新しい方角を示すような。

しんとして、calmである。
かたいからこそやわらかな。
でもこれは祈りと決意の歌である。

______
I'm afraid to write that I can't change
I can't change all of my own color for you

I'm afraid to write that I'm not sure
I'm not sure if I can wait until morning

You've never taught me
How should I stand tall through the day and the night?

I'm afraid to write that I can't change
I can't change all of my own color for you

I’ve written down three words
And made a prayerful decision to wait

こう書くのも申し訳ないけれど、わたしは変われない
あなたのためにわたしの色を全て塗り替えることはできない
残念だけど、自信がない
朝まで待っていられるかどうかはわからない

あなたは教えてはくれなかった
わたしはどうやってこの1日を、この夜を生き抜くべきなのか?

三つの言葉を書き留めて
祈りのような決断を下して
ここであなたを待ちます

Letter to Sing
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