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台湾映画への想い

初めて台湾に来たのは2015年9月だったかな。高校の修学旅行で台北へ3泊4日。あの頃は台湾など未知の領域で、小汚い東アジアはこのようなものなのか、という印象しかなかった。路地は生臭いし、並ぶアパートも黒ずみが目立ち、当時17歳の私にとってはあまり好めるような雰囲気ではなかったらしい。早く日本に帰りたがっていた。

台湾映画と出会ったのは、それから1年経った後だった。2017年1月。大学受験を終えて、オタ活に必死だった当時、旧作品揃えの良いTSUTAYAを徘徊しては週に13本弱の作品を鑑賞していた。
そして見つけた一本。エドワードヤンの「ヤンヤン夏の思い出」。パッケージに大きく映る少年の顔に一瞬で魅了されてしまった。
当時は世界中のあらゆる年代物を物色していたのに、台湾映画はそれが初めてだったらしい。
とても不思議な感覚だった。映画の中の台湾は実際に見たことのある台湾と、全く違って見えた。とっても美しくて、ノスタルジーしか感じられない全てのシーン。
長回しのカメラでさらに美しく見える真夏の風景。
それからエドワードヤンの作品をいくつも観て、侯孝賢の「恋恋風塵」と「冬冬の夏休み」で私の台湾に対するイメージは完全に美化されてしまった。
もう一度台湾に行きたい。
美しい台湾映画に出会うたびに、その気持ちは募っていくばかりだった。

Filmarksのハッシュタグには魅惑の台湾と名付けたタグに鑑賞した作品を並べてある
お気に入りのタグの中にはいくつもの台湾作品が目に入る。ドイツやフランス作品にも並ぶほど好きになった。


そんな私がいつの間にか台湾で暮らし始めてから、2年以上が経過している。
あの頃は台湾にもう一度行く機会があると思っていなかったし、ましてや暮らしの場になるなど想像すらしてなかった。
実際に台湾で生活している中で、映画の中で見ていた台湾と同じ風景に出会える事は正直言って多くはない。それでも台北に行ったり、田舎の景色を見ると、本物の台湾をまだ知らない頃に憧れていた台湾の姿を感じることができるのは私にとって結構大きな幸せかもしれない。

いつまでも美化されすぎた台湾の世界に生きていたい。

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