見出し画像

結婚式会場の下見で目の当たりにした『影響力の武器』高額契約を勝ち取る交渉術

私事だが、最近は結婚式2次会会場の下見をして回っている。そこで衝撃的なのが、1次会会場を下見したときとのギャップだ。第一に時間が非常に短い。1次会会場の下見では来賓扱いでお茶を出され、長いアンケートを記入させられ、馴れ初めから根掘り葉掘り聞かれ、簡単な試食をし、ゆうに2~3時間を要した。一方、2次会会場の下見では、簡単な会場の下見とプランの説明で2~30分で終わる。2次会会場を見学したときにやっと気がついた。結婚式といえど、大雑把に考えればパーティーの一種であり、何もあんなに長い時間を下見に費やす必要は無かったのだ。大体、1次会と2次会で知らなければいけない内容に大きな違いはない。会場の広さと料理メニュー、音響など設備の程度がわかればおおよそ十分である。結婚式場だって、そんなに多くの時間をかけたはないはずである。
それなのになぜ、時間をかけるのか?それがずっと謎だった。しかし、『影響力の武器』を読むことでスッキリした。

この本では、人が説得されるときの状況を6つの法則を使って説明している。6つの法則とは

1. 返報性
2. コミットメントと一貫性
3. 社会的証明
4. 好意
5. 権威
6. 希少性

だ。

僕と妻が、結婚式場(1次会)の下見で体験した、『影響力の武器』をここで共有したい。

1. 返報性

相手に何かたとえ小さなことでも良くしてもらったら、普通の人はそのお返しをしないと気持ち悪くなる。その心理を利用し、結婚式会場は積極的に味見をさせてくれる。僕たちが探したのはレストランウェディングの会場だった。洋風のレストランならパスタやピザなど、和風レストランなら自慢の豆腐など味見として提供された。コース料理とまでは行かないが、一品自慢の物をぶつけてきてはこだわりを説いてくる。「なんて親切な式場なんだろうか」と思わせ、返報性を引き出すのが狙いである。

2. コミットメントと一貫性

また、人は常に言動や行動に一貫性を保ちたいものである。なぜなら、一貫性をもった人は成熟した大人とみなされ、逆に一貫性のない人は幼稚に思われるからである。誰だって大人に見られ信頼されたいものだ。結婚式会場下見ではウェディングプランナーにどんな結婚式にしたいか色々と聞かれる。例えば、アットホームな感じにしたいといえば、この会場では高砂を作らないことでゲストと同じ目線に立てるとか、料理にこだわりたいといえば、自慢の料理人の紹介をしてくる。こうして条件を一つ一つ満たされていくと、契約せざるをえなくなる。なぜならば、そうしないと一貫性が保てないからだ。

3. 社会的証明

人の判断とは実に周囲に影響されるものである。特に他の人がどう思っているかで物事に対する印象が全く異なる。自分がさほど良くないと思っていても周囲の大勢が良いといえば良いものだと感じ始める。本の中では、テレビ番組に人工的につけられた笑い声を例にあげていた。テレビ局は大しておもしろくない場面でも編集で笑い声を足すことでおもしろく見せている。
結婚式場なら写真集を必ず見せられる。その中で皆幸せそうな写真をしている人達を見るとその会場がとても素敵に思えてくる。こんな素敵な人達(写真集に乗っているモデルは大体美男美女である)がやっているのだから、自分たちも素敵な式をあげられるのではないかと錯覚させられるのである。

4. 好意

これは親しい人の要求は断りにくいという法則だ。結婚式会場の下見に5~6会場ほど行ったが、どこのウェディングプランナーもみんな笑顔で愛想がよく、好印象だ。そして、話が上手で人と親しくなるのが上手い。

5. 権威

権威というのは意思決定に関して厄介だ。本の中では、医者が明らかな間違いを含んだ指示を看護師にだしても、看護師の多くは疑うこと無くその指示を遂行するという例が挙げられていた。つまり、権威あるものの意見には皆、盲目的に従う。
正直、結婚式の会場選びではあまり権威は感じなかった。2次会会場選びと比較した場合に、1次会会場の案内する人のほうがきっちりとした制服を着てウェディングプランナーと名乗っていた程度だ。一方、2次会会場はレストランを選んだこともあったが、オープン前のスタッフが私服でざっくばらんに応対してくれた。1次会会場のウェディングプランナーという肩書と堂々とした振る舞いに権威を感じる人もいるのかもしれない。

6. 希少性

人は誰しも希少性のあるものに弱い傾向がある。期間限定と言われたら買ってしまう人は少なくないだろう。普通に走っていた電車が、ラストランとなると、鉄道ファンたちはこぞって写真を撮りに行く。
結婚式場もその原理を上手く使っている。結婚式場下見の最終段階で候補日を聞かれる。◯月の土日で友引は避けたいなどというと、「では、予約の空きを確認してまいります」と言い残し、ノートパソコンを閉じて奥のスタッフルームへ行く。そして急ぎ足で戻ってきて、この日とこの日ならまだ予約取れます!と教えてくれるわけだ。しかし、僕のようなIT技術者で仕事のほとんどをパソコンを使ってやる人間は、「なぜノートパソコンを閉じた?その場でクラウドにアクセスして、空き状況を見ればいいじゃないか?」と思う。ウェディング会社の内部事情は知らないが、予約状況をどこからでもすぐにオンラインで確認できるようなシステムは技術的には余裕でできるはずだ。専用のシステムを構築しなくてもGoogleカレンダーの共有機能を使えば無料で実現できる。では、なぜ客の目の前で予約の空き状況を確認しないのか?それは希少性を感じさせるためである。わざわざ事務室に戻って候補日を確認してくることで、やっと見つかりましたという雰囲気を出し、希少性を演出しているのだ。


なんだか結婚式場を悪くいうような論調になってしまって恐縮だが、そういうつもりはない。実際、ウェディングプランナーの方には契約後もすごくよい仕事をしてもらっている。ただ、契約を勝ち取るためによくできたシステムが結婚式場に有るということを紹介したかった。交渉事の控えている人にはぜひ『影響力の武器』を一読することをおすすめしたい。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

この記事は #コンテンツ会議 に勝手に参加しています。

コンテンツ会議は弊社代表加藤とコルクの佐渡島さんが二人でPVを競い合っているマガジンで、出版業界を中心に多くの方に読まれています。敏腕編集者の二人が、コンテンツ(本、舞台、ドラマなどなど)について独自の視点から語っています。毎週水曜日更新です。

僕の記事の更新情報はtwitterアカウント @justin999_ から。是非フォローしてください。

この記事が参加している募集

#コンテンツ会議

30,785件

よろしければサポートをお願いします。いただいたサポートは今後のスキルアップに使います。