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認知症に寄り添う|[1]水分補給

母が認知症と診断されてから、4年が経ちました。その間、年々日本は暑くなり、夏の心配事が増える一方です。


心配事|水分補給


認知症になる前から、水分摂取量が少なかった母。認知症になってから、その傾向は一層顕著になり、猛暑でも『水分を摂らなくても平気な体質なの』と呟きます。

かかりつけ医やケアマネジャーから水分のこまめな摂取を促されれば、『意識して摂っています』とすました顔でスルー。

母に悪気はありません。認知症ゆえです。

当然ながら、私は心中穏やかではいられません。熱中症のリスクもあり、命に関わります。

なぜ摂りたがらないのか

理由1|億劫


80代の母は、元々自分の流儀、作法に拘りがありました。飲水も、水道水を沸騰させた後、湯冷ましを作り、さらに浄水器で濾過していました。

認知症で手間のかかる作業が億劫になり、湯冷ましを作らなくなりました。作れなくなったと言ったほうが正しいでしょう。

理由2|習慣にない


『ペットボトルにすればいい』と誰でも思うはずです。
認知症になると新しい習慣は身につきません。過去の習慣に拘ります。
昨今は、ペットボトルの水を買って飲むことが当たり前ですが、80代の母にその習慣はありません。何度となく用意したペットボトルは、開封されぬまま鎮座していました。

理由3|もったいない精神


水に代わり、お茶のペットボトルを用意しました。元気に外出していた頃は、口にしていたので馴染みがあるはずです。
ところが、冷蔵庫に入れたボトルはほぼ手つかず。稀に封が空いていても、半分以上残っていました。いつ開封したか分からないボトルを捨てる日々が続きました。

『なんで飲まないの』
『そんなに飲めないわ』
この繰り返し。
『余すのがもったいないから手をつけない』と気付くまで、時間を要しました。

背景を読み解く

一般的な500mlや350mlのボトルではなく、今は『195ml』のお茶のペットボトルを通販で購入しています。細身で手のひらサイズのフォルムが気に入り、『飲み干せる』と思えるようです。躊躇わずに手が伸びています。

冷蔵庫に常時ストックし、減った分だけ補充します。策が功を奏していることを確認して、ほくそ笑んでいます。

母は水分補給に限らず、非合理だったり、不可思議だったりする言動が沢山あります。都度、母の性格や習慣、嗜好などから行動の背景を読み解き、母なりの理由や理屈を探る日々です。

認知症が進行し、読み解きすら要さない日が来るでしょう。その時に懐かしく思い返せるよう、この母との駆け引きを楽しみたいと思います。


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