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ラカと私の馬場日記 ~社宅生活最後の一斉掃除の日に~   2024.9.21

 「社宅」という名の集合住宅に住んで、かれこれ32年。小倉、花小金井、黒髪、大島、南千里、西新宿、そして馬場。ここが7つ目で、最後の社宅となる。子供たちはそれぞれ違う社宅で生まれた。4人の中では最短で家を出た三女も18年間は社宅で暮らしたから、みんな立派な「社宅生まれ、社宅育ち」だ。

 社宅は安い家賃で住める代わり、地域の自治会活動に参加したり、様々な寮長業務、会計、防災、ゴミ出し、掃除など各種の当番、社宅によって異なりはするが、「生活」にまつわる雑多な仕事は住人がやることになっている。もちろん寮長も当番制で回す。

 ということで、今日は社宅生活最後の一斉掃除の日だった。最後の締めくくりは私が、という気持ちもあって迷ったものの、前回は私が出たので今回はラカが行ってくれ、と頼んでおいた。冷蔵庫のカレンダーにもオレンジのマーカーで印をつけ、「社宅掃除 ラスト!!」と大きく書いた。
 午前10時半。先に気づいたのは、いつもよりさらに寝坊して起きたラカだった。「あ、掃除!」 はい、見事に忘れてました~二人とも。有終の美を飾るつもりでいたのに、あろうことか完全にサボってしまった。掃除は8時からだ。とっくに終わってる…
 寮長にお詫びの電話を入れるの、ラカに頼んだ。ラカは大学生に間違われる。親世代である私が電話するより、子世代であるラカが謝った方がサボった罪が軽くなるような気がしたからだ。あちらにしてみれば、どうでもいいことだろうけど。

 ここは、1か月ごとに、奇数月は低層階・偶数月は高層階と交互に集まって一斉掃除を行う。共用スペースはかなり広く、敷地の外周も長いけれど、戸数が多いので、わりと短時間で終わる。こことは対照的に14戸しかなかった前の社宅では、掃除は年末の一度だけだった。
 上の階から順に、各家庭の蛇口から長いホースを使って水を流し、共有の階段や踊り場、エントランス、駐輪場、と一年間の汚れを落としていく。さすがに大きい子たちは出てこないが、小さい子たちは半分水遊び気分で雑巾や箒を持って参加、みんな長靴を履いて、まさに「年末大掃除」。普段から住人同士のお付き合いもあったし、楽しいイベントだった。

 「階段」で思い出したが、体育祭の練習で疲れて帰ってきた次女が階段を上りながら、吹き抜けから見える星空を「きれいだな~」と眺めていて、次に気がついたのは帰宅する自分の父親に起こされた時だったという事件があったのもあそこ。次女は、あろうことか階段で寝落ちしてしまったのだ。社宅でよかったね!

 その次女で言えば中1から高2までの、ちょうど5年間を過ごした西新宿の社宅は、わりと大きな通りに面し、周りを高い建物に囲まれた4階建てで、初めて見た時には、あの有名な絵本「ちいさいおうち」のようだと思った。でも、あのお話と違って、小さい社宅は、老朽化と会社の方針により取り壊されてしまった。土地も売却され、今はモダンな高層マンションになっている。住人たちは、あちこちバラバラに引越していってしまった。

 あの社宅の最後の大掃除の日には、最後の寮長さんがとても素敵な挨拶をして感動した。当時、住人の子供たちの年齢層は幼児から大学生と幅広かったけど、こじんまりとした社宅ゆえの心地よい繋がりがあって、離れ離れになってしまうのが本当に残念だった。
 あ、そういえば、寮長さんは「共益費の余剰金は、僕がどんなことをしても皆さんに必ず返金します」って言ってたっけ。あれから7年… 会計報告も返金も、まだない(笑)

 お詫び電話のついでに、ラカには退去のことも伝えてもらった。本来は次期寮長の仕事なのに、今の寮長さんは親切に対応してくれた。ありがとうございます。
 あとは、退去届を寮長経由で管理会社に提出、社宅備品が引越し荷物に紛れ込まないよう注意して、最後出ていく前に退去検査をしてもらうだけ。
 さようなら、社宅。最後の最後に、掃除サボってごめんなさい。

  退去日まで、あと37日。

※写真の階段は次女が寝落ちした階段とは関係がありません。念のため。


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