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ジュウ・ショのサブカルアニメマガジン

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アニメについてサブカルチャー的な視点から紹介・解説。 学術書とか解説本みたいに小難しくなく、極めてやさしく、おもしろく、深ーく書きまーす。
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#漫画

「フランダースの犬」でルーベンスのキリスト画が描かれた理由とは

『フランダースの犬』と『火垂るの墓』は、ちょっとマジで発禁にしてほしい。いや子どものころは「なにこれ、かわいそう……」って、そんだけだった。しかし大人になってから観ると、救いがなすぎてバウンスビートくらい動悸がしてオロオロ泣く。18才以上禁止とかにしてほしい。O-18。オーバー18歳だこんな作品は、やめろ。観せるなもう(泣)。 そんなフランダースの犬といえば、やっぱり最終回。主人公のネロと愛犬のパトラッシュが寄り添ってルーベンスの「キリスト昇架」と「キリスト降架」を観て「な

なぜ「スポ根漫画」は滅びた? 1960年代〜70年代の価値観の変化を紐とく

マンガは世につれ、世はマンガにつれ……。マンガというのは、それぞれの時代で特有のブームが起こる。で、マンガのおもしろいのは、小説や映画といったエンタメ創作物に比べて「社会トレンド」とリンクしやすいのである。めちゃくちゃタイムリーなメディアなのだ。 なぜか。シンプルに「1本の話を作る時間が短いから」だ。例えば映画、長編小説、音楽、演劇といった総合芸術は、一作をつくるのに早くても数カ月、長いと数年かかる。最近は技術の発達、ナレッジの蓄積もあって、高速化している気がするが、それで

【青春の1ページ】「シュール系CGアニメ」の思い出を語らせてくれ

2000年代初頭に中高生時代を過ごした人たちにとって「シュール系CGアニメ」にハマった人は多かろう。あの、ビレバンの店内で絶えず流れているやつだ。 そのころはまだYouTubeも盛んではなくて、みんなDVDを買って観ていた。クラス中がテレビのバラエティ番組の話で持ちきりだったころだった。 まだサブカル界隈でしか認知されていなかったDVDを観ていたのは、変な優越感があったのを覚えていますね。そして仲間内だけで話が通ずるのが楽しくて仕方なかった。そんなサブカルクソ野郎の時期は

果たして宮崎駿は本当にロリコンなのだろうか

「ジブリのアニメーションはやはり別格だ」。放映されるたびにそう思う。 特に深夜アニメをはじめ、作画枚数を押さえた「リミテッド・アニメ」がスタンダードになってからは「フル・アニメ」ならではの滑らかな映像美に魅せられます。「ハウルの動く城」を観て改めて思った。色彩もデザインもストーリーも、ちょっと別格だった。何回見ても感動します。 こんなに有名なのに「ジブリの批判をする人」は、超少ないですよね。猛烈なアンチっていないと思うんです。しかし宮崎駿もいきなりスターダムにのし上がった

【ザ・今さら】「えんとつ町のプペル」について思ったことをそのまま書いてみる

ちょっと前に読者の方から、メールで質問をいただきました。いつも読んでくださって、ありがとうございます。しかしメール質問への回答へのメール質問とはおもしろい。 おでこの冷汗を拭いながら震える指で書きますが、私は「えんとつ町のプペル」を観ていません。でも岡田斗司夫さんの動画は見ました。正直いうとけっこう共感して「あー、それそれ」と思った。 要するに彼はプペルを見ない理由について、以下の3点を挙げている。うん。分かるぞ。非常に分かる。 ・感動ポルノだから ・二次創作がない(心

エヴァンゲリオンが流行った理由とは|時代性・革新性・キャラ設定などから徹底分析

「『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の初日興行収入8億らしいぞ」と聞いたとき、正直「え?」とびっくりした。感動すら覚えた。コロナ下の月曜だったのに……まだこんなに愛されているのがすごいと心底尊敬したわけです。 前作から9年ぶりということもあるが、まだまだ日本でのエヴァ人気は高い。もはやオタクとかサブカルとか、そんな話ではなく、立派なメインストリームだ。アニメ放送が1995年、社会現象化したのが1997年。新劇場版までの間が10年間あったにしても、もう25年くらいずっと愛

今敏について|46年の生涯、パプリカ・パーフェクトブルーなどの作品解説

今敏(こん さとし)の作品は、アニメ史のなかでも明らかに異質なものだ。ジャパニメーションブームが去った後に颯爽と現れて、海外に日本アニメの価値を再認識させたのは、今敏の功績が大きいでしょう。 このメディアでも何度か記事を書いてきました。 そんな今敏の作品には、いまだに熱狂的なファンが多いんです。サブカルオタクのなかで勝手に神格化され、崇め奉られているんですね。「パプリカしか観ていない」けど「今敏はすごい」と言いたくなるサブカル諸君もいるだろう。アレは「NEVER MIND

AKIRAとは|漫画・アニメ映画の両方について「何がすごいのか」を徹底解説

「ジャパン・カルチャー」といえば、今やフジヤマ、サムライ、スモウレスラーよりも先に「アニメ」「マンガ」がくる。 しかしもともとは、アニメもマンガも海外で生まれたメディアである。以下の記事でアニメやマンガの起こりを書いています。 ただ、今やマンガ・アニメといえば日本を代表するカルチャーであり、最近は「日本アニメを楽しむ海外オタク」の動画をYouTubeで観ることも増えた。 では、なぜ日本のアニメ文化がこんなにも海外でヒットしたのか……。その立役者は間違いなく「AKIRA」

ファム・ファタールとは|起源や言葉の意味、キャラクター紹介など

ファム・ファタール……それは美術、マンガ、アニメなどの世界で「男を惑わせる魅惑の女性」を指す言葉だ。本来の意味は「赤い糸で結ばれた運命の女性」となる。 「赤い糸」と書くとロマンチックに聞こえるが、いやいや、そんなに良いものでもない。もっと妖しくてキケンな存在であり、男はいつだってファム・ファタールの虜になって破滅してしまうものだ。 ではファム・ファタールとは具体的にどんな女性を指すのか。そしてなぜ長い間、クリエイターから愛され続けているテーマとなったのだろうか。 今回は

チャージマン研!という日本史上最高に「雑」なサブカルアニメを語らせてくれ

「チャージ!ゴーゴーケン!ゴーゴーケン!その名も〜僕らの〜チャージマーンー♪」という声が聞こえてきたら画面の前に集合だ。最高で最低な10分アニメが始まるぞ。 もう言わずとも分かるだろう……そのアニメとは「チャージマン研!」だ。1974年に制作されたこのアニメは、その圧倒的な質の低さから、2000年代後半からサブカル界隈にて有名になった。 とにかくバンクの使いまわし、そして明らかな尺稼ぎ、鳴らないSE、合わない口の動きなど、とにかく観れば観るほど低クオリティ。その結果、ちょ

アニメ・美少女戦士セーラームーンはここがすごい! 幻の原作や変身シーンなどを解説

「月に代わってお仕置きよ!」 1990年代当時を生きた方はもちろん、現代に至るまであらゆる女の子を魅了してきた決め台詞だ。 「月に代わって」ってヤバいですよね。月の仕事を代行してるわけだ。とんでもないスケール感のお仕置きである。私が敵だったら「まず死は免れない」と悟る。スライディング土下座決めて詫びる。 このセリフで有名な作品はもちろん「美少女戦士セーラームーン」だ。日本国民なら誰もが知っている超名作だろう。 「セーラームーン」は、まさにアニメの歴史を塗り替えた作品と

サブカル界の奇祭・アニメ最萌トーナメントを振り返る【歴代優勝者一覧】

2ちゃんの祭りかつ、メディア学の重要資料なのが「アニメ最萌トーナメント」である。電車男などで2chとヲタク文化が浸透した2000年代においてアニメにどっぷり浸かっていた方々なら、懐かしい祭りなのではないか。 このトーナメントこそ、2000年代のいわゆる萌えアニメ全盛期のアニメカルチャーの盛り上がりを代表するようなイベントだ。 「ま〜た2chの酔狂か」と思われがちだが、実はこの祭りにはサブカル研究の大学教授なども注目している。当時の2chのスレは、今から15年前くらいのサブ

ディズニーアニメ・白雪姫は長編アニメの原点であり至高だ

現在、日本国内で作られるアニメの数は332本(2018年現在、日本動画協会調べ)。2000年が109本であり、この20年での増え方はまったく異常だ。「日本といえばアニメ!」みたいな文化が根付き始めたのも、ここ10年だろう。 しかしもちろん世界で最初にアニメを作ったのは日本人ではない。1892年にフランス出身のピエール・レイノーが作った「哀れなピエロ」という約15分の作品だ。最初のアニメ作品のタイトルが「哀れなピエロ」という謎のメッセージ性に笑う。 この作品の作画枚数は50

サブカルチャーとは? 日本と海外の意味の違いを事例で簡単に解説【アニメ・マンガなど】

前回の記事で「カルチャーとは」について「メインカルチャー・サブカルチャー・ハイカルチャー・カウンターカルチャー」に分かれまっせ!」ということを、そこそこちゃんと説明した。 しかし、実はすごく大事なことが抜け落ちているんです。土下寝しつつ白状します。この4つのカルチャーのなかでも「サブカルチャー」に関してはちょっとややこしいのだ。 この部分はそもそも人種的な背景もあるし、日本で使う際は少し違う意味になったりする。ちなみに私のマガジンは「日本でいうサブカル」ですので悪しからず