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ジュウ・ショのサブカルマンガマガジン

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マンガについてサブカルチャー的な視点から紹介・解説。 学術書とか解説本みたいに小難しくなく、 極めてやさしく、おもしろく、深ーく書きまーす。
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#絵

人間がヲタクになり推し活を終えるまでを4ステップで解読してみた

私は主にアート、マンガ、音楽、小説といった分野でライティングをしている。これらの創作物は、広義で「文化(カルチャー)」という枠でくくられる。 ただ、カルチャーは決してエンタメだけに特化した言葉じゃない。カップ焼きそばUFOのパッケージとか、無印良品のオーガニック食材とか、そういうものもひっくるめて文化だ。決して一過性のブームではない。何人かのヲタがソレを推して歴史を作ったもの。それが文化となる。 カルチャーについては以下の記事で紹介していますので、暇すぎてもう飲料の原材料

「綺麗な顔してるだろ。」あのタッチの名シーンは、なぜマンガ史に名を刻んだのか

「綺麗な顔してるだろ。うそみたいだろ。死んでるんだぜ。それで……」 もうこれは日本マンガ史に残る名ゼリフだ。「クリリンのことかー!」とか「諦めたらそこで試合終了ですよ」とかに並ぶほどのモンスター級の名シーンである。 もちろん言わずもがな、あだち充のマンガ『タッチ』のいち場面である。初出は1981年。私は完全に世代じゃない。 ただ、タッチは少年時代にCATVかレンタルDVDかのアニメで観ていた記憶がある。南が暗い病室に入っていく場面では「え……」と思った。「嘘やん、カッち

丸尾末広とは|経歴から「美しさ」と「エログロ」の源泉を探してみる

江戸川乱歩が好きな人は、おそらく夢野久作が好きだろう。そして夢野久作が好きな人は、ほぼ100%丸尾末広にハマる。「芋虫」と「瓶詰めの地獄」が並ぶ本棚には「少女椿」もあるはずだ。 きゃりーぱみゅぱみゅが5年ほど前に、お目目モチーフのアクセサリーを流行らせた。のを見て「眼球はかわいいよね〜(にっこり)」とプラスチックのおもちゃじゃ我慢できなくなる系の人種が、この方程式に当てはまる。ポップなエログロより本物のエログロのほうが好きなのだからしょうがない。 平成〜令和の今観ると、彼

佐々木マキとは|手塚に狂人と、村上に天才と呼ばれた前衛漫画家

20歳のころ、旅行先の岡山・倉敷市で古本屋に入った。そこで手に取ったのが佐々木マキ作品の集成「うみべのまち」だった。「なんかどっかで見たことある絵やな」と思って、手に取ったのを覚えている。後から「あ〜村上春樹の『羊男のクリスマス』だわ」と気づいたんですが、当時は思い出せなかったんです。 なかを読んで、あまりの衝撃にひっくり返った。開脚後転2回かました後に華麗にロンダートを決めました。まさに「マンガ」に対する概念が変わった瞬間で「あ、こういうマンガがあってもいいんだ」と思った

サブカルとアングラの違いとは|ヤバい世界について本気で考えてみる

「アングラとサブカルの違い」は一般のメインカルチャーで生きている人には理解し難いものがある。「いやいや、どっちも絡みにくいでしょ」とまとめてしまいがちだ。 しかし気をつけてほしい。アングラ畑で"毒"を撒布している人と、サブカル畑で"無駄"を耕している人は違う生き物だ。当人からすると「一緒にしないでくれ」と思っているパターンは結構ある。 アングラの人に「お前、ほんっとにサブカルだな」と安易に声をかけるのはマズい。「ちげぇよ。俺はアングラだよ」と血走った眼で返されるだろう。な

24年組とは|少女マンガの歴史を塗り替えた天才女性漫画家たち

少女マンガが、長年にわたって日本の少女たちの人生観、恋愛観に大きな影響を与えているのは間違いない。ちゃお、りぼん、なかよしに育てられ、なんとなく大人の世界に触れて成長していく。うっかりそのまんま大人になって、いつの間にか黒歴史にまみれた人もいるだろう。我々はあのキラッキラで巨大なお目目から大人の世界を学び、憧れを抱いてきた。 そんな少女向けのストーリーコミックは1953年、手塚治虫の「リボンの騎士」から始まる。それからトキワ荘の紅一点、水野英子が、現代少女マンガに通ずる、ロ

今敏について|46年の生涯、パプリカ・パーフェクトブルーなどの作品解説

今敏(こん さとし)の作品は、アニメ史のなかでも明らかに異質なものだ。ジャパニメーションブームが去った後に颯爽と現れて、海外に日本アニメの価値を再認識させたのは、今敏の功績が大きいでしょう。 このメディアでも何度か記事を書いてきました。 そんな今敏の作品には、いまだに熱狂的なファンが多いんです。サブカルオタクのなかで勝手に神格化され、崇め奉られているんですね。「パプリカしか観ていない」けど「今敏はすごい」と言いたくなるサブカル諸君もいるだろう。アレは「NEVER MIND

カリカチュアとは|日本漫画の原点となった「いじり」の芸術

旅行先で似顔絵を描いてもらったことがある方は多いだろう。そして「できました〜♪」と化け物のような絵を手渡された人もいるでしょう。「おいできたじゃねえよ」と怒っちゃった方もいるかもしれない。 似顔絵屋は基本的に写実では描かない。デッサンではなくエンタメである。なので忠実に似せる気なんてさらさらなく、超笑わせる気でふざけて描くのが彼らの仕事だ。 こうした表現を「カリカチュア」という。つまり対象の容姿の特徴や性格などを、これでもかと誇張して描いた表現のことだ。 カリカチュアは

トキワ荘とは|天才漫画家が一緒に暮らした伝説のアパートについて

日本マンガの基盤は、東京都豊島区椎名町のあるアパートで作られた。それがトキワ荘だ。手塚治虫が居住を始めてから、藤子不二雄、赤塚不二夫、石ノ森章太郎、水野英子、寺田ヒロオなど、とんでもないメンツが手塚に憧れて入居。切磋琢磨しながら、作品を作っていた。 トキワ荘はまさに「マンガ家の梁山泊」としていち時代を築いた聖地中の聖地である。 日本のマンガカルチャーはまさにこの場所で生まれた。こんなスターたちが、この一箇所に集まってマンガを描いていたのは信じられない。レアル・マドリードば

ファム・ファタールとは|起源や言葉の意味、キャラクター紹介など

ファム・ファタール……それは美術、マンガ、アニメなどの世界で「男を惑わせる魅惑の女性」を指す言葉だ。本来の意味は「赤い糸で結ばれた運命の女性」となる。 「赤い糸」と書くとロマンチックに聞こえるが、いやいや、そんなに良いものでもない。もっと妖しくてキケンな存在であり、男はいつだってファム・ファタールの虜になって破滅してしまうものだ。 ではファム・ファタールとは具体的にどんな女性を指すのか。そしてなぜ長い間、クリエイターから愛され続けているテーマとなったのだろうか。 今回は

つげ義春をまとめ|ねじ式などの作品紹介・波乱に満ちた人生など

以前、好きな漫画ベスト5を書いた。 このときにパッと出てきたのが、つげ義春の「ねじ式」。パッと出てくる理由は「ねじ式」を読んだときの衝撃を今でも覚えているからだ。「メメクラゲ」に腕を噛まれて治療したいけど目医者しかなく、最終的に産婦人科医に嘘みたいな治療をされる、みたいな話だった。おもろすぎる。 完全にツボなのである。珍しいかもしれないが、個人的にこの話は涙出るくらい笑える。どんな思考をしてたら、このわっけわかんない話を描けるのだろうと、あれこれ想像した。つげ義春ってどん

アニメ・美少女戦士セーラームーンはここがすごい! 幻の原作や変身シーンなどを解説

「月に代わってお仕置きよ!」 1990年代当時を生きた方はもちろん、現代に至るまであらゆる女の子を魅了してきた決め台詞だ。 「月に代わって」ってヤバいですよね。月の仕事を代行してるわけだ。とんでもないスケール感のお仕置きである。私が敵だったら「まず死は免れない」と悟る。スライディング土下座決めて詫びる。 このセリフで有名な作品はもちろん「美少女戦士セーラームーン」だ。日本国民なら誰もが知っている超名作だろう。 「セーラームーン」は、まさにアニメの歴史を塗り替えた作品と

諸星大二郎について|経歴・暗黒神話・妖怪ハンターなどおすすめ作品・2021年新作レビュー

「諸星大二郎が好き」 もう、この言葉は私の周りでは100%言われるものだ。「100%」ってなかなか書けないよ? 超ハイリスクな言葉だが、いやでも本当に100%なのだから、胸を張って書ける。 「いくえみ綾のデリケートな人間関係が好き」という友人や「コナンの巧妙すぎるトリックが好き」という、まったく趣味の違う友人におすすめしても「すげえ面白かった」と興奮気味に感想を教えてくれて自発的に2冊目を買っていたりする。 もしかしたら「ワンピースの仲間観ってはんぱねぇよな!」とZIM