どくはく9「試験前、文が読めなくなった私」

私は高校の3年生夏、鬱がひどくなり、抗不安剤と睡眠薬を飲み始めた。
そのため、夏8月から冬11月末頃まで、まったく勉強をしていない、大学受験があるにも関わらず、である。
ここまで来ると浪人したり大学進学を諦めたりするのが(今考えてみると)体に優しい選択だと思うが、まあ当時の私は進学しか選択肢として考えられなかったのと、進学校という環境のせいか、大学に行くこと、受験をすることが当たり前だと思い込んでいた。
まぁ「とりあえずセンター受けて駄目そうだったら辞めればいいよ」と言われていたので、受けないという選択肢はなかったのだ。

進学校だったため、9月ごろから約2週間ごとに繰り返されていた模試。
私の結果はさんざんで、進学校の生徒にあるまじきような点数を取っていた(センター模試だと半分もとれてなかったのではないだろうか)
かといって、勉強も復習も手に着かない。
ただ毎日しにたくて、つらくて、苦しくて。
それでも「出来ない」と打ちのめされて。
毎日が地獄だった。

その中で、一番勉強をしていて辛かったのは、
「文が読めなくなった」ことだった。

国語の問題文を、何度読んでも同じところを繰り返さないと意味がわからない。ぐるぐると繰り返してしまう。
数学の数字がまとまりになって捉えられない。
英文なんてもってのほか。
問題を解く、以前の問題である。

なんだこれは。
なんだこの状態は。
こんなの、無理に決まっている。

絶望に染まった。
どうしよう、こんなの、無理だ。

どうしたらいいかわからず、親に打ち明けた。

「字が読めない」
「問題が解けない」
「大学に行けない」

すると、親はこういった。

「え? 字が読めないって学習障害?」
「トム・クルーズかと思った笑」
「なんだ集中力が落ちてるだけでしょwwww 大丈夫よwww」

え?
耳を疑った。
なんで、笑われたんだろう。

当たり前のように、なにも気にせずに母親は料理の準備を始め、父親はなにも聞かなかったように顔を背けた。
びっくりした。
何が駄目だったんだろう、なんで笑ったんだろう、どうして辛かったのにそんなふうに扱われたんだろう。

どうしてか、わからない。

毎日のコーヒー代に。